人と人との距離が変わり行く今 BARTと組織絵図 /松井宏次

最速の梅雨入りの関西。その後にけっこう現れる晴れの日々。この調子で、いつ梅雨明けだろうとつい思ってしまいます。ちなみに、梅雨前線が北上して太平洋高気圧が張り出して来ると梅雨明けとはいうものの、定義があるわけではないらしいです。

花菖蒲 睡蓮 紫陽花 この梅雨の時期を彩る花々は、どこか強そうにも見えます。

 

2020年の春以降のリモート環境の広がり。国内のデータ通信量でみると、COVID-19の感染拡大の前と後では、社会経済活動のデジタル化(テレワーク、オンライン授業、動画視聴の拡大等)による通信量は、約5割増加しているとのことです。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000753646.pdf

 

企業活動のなかでテレワークやオンライン会議が常態化して来たなかで、「情報」については、伝達、移動範囲が広範化して行ったいっぽうで、密度が薄くなったとされています。二面性のある事象ですので、どれだけ長所になる面を伸ばせるかが留意点になりそうです。

 

密度の薄さとは、人の密度が物理的に低くなったこととのつながりで言われているようです。実際には、それぞれの組織のありかたや性質によって、リモート化が、交換される情報の疎密さに及ぼす影響は、違っていたはずです。皆さんの周囲でも実感されていることかと思います。

 

組織についての話を進めます。組織を見立てるツールBARTについてです。

BARTは、boundary境界、authority権限・権威、role 役割、task課題・職務の頭文字です。

boundary  境界

包む容器  始まりと終り 領地 縄張り などにも例えられる概念です。ふだんは意識されていないものの、空間そのものや影響が及ぶ領域として、時間の枠として、地理や物理として、それぞれのboundaryが考えられます。

 

authority 権限 権威

日本語で言う権限と権威の両方です。権限は、公式に委任、また、移譲された力。遂行のために付与された力、遂行する権利です。

権威は、その人なりの力。自発的に従わせる力のことです。

 

role    役割

公式formal roleと非公式informal roleがあります。公式の役割とは、職務分掌や職務記述書に示されている仕事の役割や内容。非公式の役割とは、世話役 調整役 敵対役など、また感情の表現役などもあります。

人にはそれぞれ、非公式・無自覚のままに引き受けやすい役割があり、また、特定の役割を引き受ける傾向、役割の誘発性valenceがあります。

 

task      課題・職務

仕事でめざすもの、達成しようとする内容です。ミッションに対応したものと、無意識に持っているものとがあります。

基本課題 primary task と存続課題 survival taskとして捉えることができます。

前者は、その組織が基本的に提供しなければならないもの、組織のミッションに対応するもの。後者は、組織メンバーが無意識に持っている課題意識、組織の存続を願望する気持ちです。

 

組織の構成メンバーは、このBARTという概念ツールを知ることで、それによる視点を持ちながら、自らと自らの組織を見立てることができます。見立てを表現するツールとしては「組織絵図」があります。組織図とは異なるものです。組織絵図は表現のしかたに特別な決まりごとはありません。手書きで、それぞれが、自らの組織を描き表わします。組織絵図を通じて組織の情態が見えてきます。

多くの人にとってはこれまで予想しなかったかたちで、人と人との距離のありかたが大きく変わり、これからも変わります。そうした変化のなかで、組織の情態を知ろうとすることが大切です。

 

 

YouTubeでの組織心理コンサルテーションの講座でBARTの解説を聞くことができます。

KIPPオンライン講座 対人関係と組織の心理学 第9講義 パート1〜5

https://www.youtube.com/watch?v=HZ3KCKJv-Q4

https://www.youtube.com/watch?v=AszjfCj0h7I

https://www.youtube.com/watch?v=Y_npHw4UDiY

https://www.youtube.com/watch?v=-8bBtyFTiZs

https://www.youtube.com/watch?v=KFROB03csUU

 

 

 


■執筆者プロフィール

松井 宏次(まつい ひろつぐ)

ITコーディネータ 中小企業診断士 1級カラーコーディネーター

健康経営アドバイザー

焚き火倶楽部京都 ファウンダー