Afterコロナのビジネスの話をしましょう 2/ 積 高之

Afterコロナのビジネスの話をしましょう。2

 

この稿を書き始めたとき、いわゆる第二派がおさまりかけていた頃だったですが、2021年の念頭から二回目の緊急事態宣言が発出されると言う事態になり、私達はもう少しの間この状況下にいないといけないということがはっきりしてきました。いつかは元に戻ると思いたいのですが、実はいくつかの点で「戻らないもの」「戻さないほうがいいもの」もはっきりしてきています。特にDX(デジタルトランスフォーメーション)の観点ではこれが顕著で、各企業はこれまでのビジネスモデルを変えて行く必要もあります。前回は「アンバンドル」というテーマで飲食店を例にしましたが、もちろんどのような業界でも起きはじめていることなので、ぜひ参考にしてください。

 

2バーチャル

 

今週のテーマは「バーチャル」です。この言葉を聞いて最初に思いつくのはARVRなどの仮想現実でしょう。ビジュアルとしても、VRゴーグルを身につけた姿は近未来をあらわすのにピッタリで、未知の情報と共にイメージしやすいのだろうと思います。今回はその中の世界と、それを二次元のディスプレイ(今皆さんがこのコラムを読んでいるそのデバイスです)上で展開しているビジネスの話をします

 

昨年Epic Games社の「フォートナイト」というゲームがAppストアから削除されたというニュースを目にされた方は多かったと思います。ただ、このニュースがなぜ話題になったかをすぐに理解できた人はさほど多くなかったかも知れません。「フォートナイト」をただのゲームだと思うと間違いで、すでにプラットフォームの機能を持っていることがこの問題の背景です。つまりそのゲームアプリで完結するものなら、AppleならAppストア、AndroidならGoogle Playストアがビジネスの現場になるわけで、ユーザーはそこでアプリなりゲームなりを購入し、そこで課金されればいいわけで、さらに拡大して「ゲーム進行にかかわるアイテム」なら、同じようにそこで課金されて売上の一部をApple社などに支払う事に、ゲームメーカーも同意せざるを得ません。ここまでは、私達がこれまでリアルに経験してきたビジネスモデル同じものでイメージしやすいです。

 

ところが「フォートナイト」の中で購入できるものは「スキン」と呼ばれるコスチュームで、プレヤーはこれを購入することで自分のキャラクターに個性を与えます。これはいくつかのゲームですでに起きている現象で、課金アイテムが「強い剣」や「防御力をあげる鎧」ではく、「見栄えのよい衣装」「声」だったりするのです。衣装と言えば、昨年のゴールデンウィークに行われた「バーチャルマーケット」* で伊勢丹のショップやWeGoTシャツがそれなりの価格で販売され、それはリアルな商品が来るのではなくアバターに使用できるファッションアイテムだったということも印象的でした。(*もちろんこれもオンライン上のマーケット。バーチャルマーケット4GWに話題になり、バーチャルマーケット512月から1/10まで行われていた。)

 

つまり、ゲームはそれ自体が一つのプラットフォームになっていて、「店舗」や「モール」の役割を持つようになってきたわけです。そこでフォートナイトのような大きなフォーマットは、その中での課金の歩合などをAppleなどにコントロールされることをこのまなかったわけです。

 さらにわかりやすい例が任天堂の「あつまれどうぶつの森」ですが、これはグローバルでば「Animal crossing」の名前で展開され、その中では「ジェラートピケ」「マーク・ジェイコブス」「グッチ」「バレンシアガ」など、ハイブランドを含むブランドアイテムが販売されており(もちろんバーチャルアイテム)しかもそこからの商品企画やランウェイで紹介されたファッションが「あつ森」の中で展開されていたります。ここは無料なのですが、各ブランドにとっては世界のユーザーに向けて大きな宣伝になり、プラットフォーマーであるNintendo Switch Online」は課金収益が入ります。

 

このバーチャルアイテムのファッションを、それなりの対価を支払って手に入れるのはなぜか?

実際に利用している学生などに聞いてみたのですが、

1「ファッションアイテムは自分の個性の表現である」

2「暑いから寒いから服を買っているわけではない」

3「人にどう思われたいかという相手は、リアルよりオンラインの中にいる」

という意見に集約されていました。たしかにそうで、3以外は私達も賛成できます。3は実際に彼ら彼女らがそうなのだから否定のしようもありません。

これから、オンラインやVRの世界とリアルな世界の融合はどんどん進んで行くのでしょうか?

 

みなさんご自身のビジネスが「バーチャルでどう実現できるのか」「バーチャルからリアルに引き込むことができるか(そもそもする必要があるか)」外出自粛の夜にでも、考えてみませんか?

 


執筆者プロフィール

 積 高之

 seki@sekioffice.jp

 京都積事務所 代表 株式会社リリク シニアコンサルタント

 経営管理修士(MBA) ・チーフSNSマネージャー・上級ウェブ解析士・上級SNSエキスパート・ITコーディネータ

 

 広告・ブランディングの職務を経験後、コンサルタントとして独立。

 大手子供服SPA,酒販小売業チェーン、保険代理店などの顧問・コンサルタントを歴任。

 現在契約中の顧問先は30社以上。ITだけでなく小売業・広告業の実務経験を通じ、

 リアル ビジネスのマーケティングをベースにしたコンサルティングが好評。

 関西学院大学大学院経営戦略研究科卒。