秋の夜長の年表づくり 再考 / 松井 宏次

秋の夜長の年表づくり 再考 /松井宏次

 

「秋の夜長、ご自身の平成時代の年表をつくってみませんか」と呼びかけたのは、2018年秋のコラムでした。

このとき、私の手元にあったのは、10年ほど前2010年にメモをした年表。

情報化技術に焦点をあてた年表ですが、テクノロジーの深さや斬新さということでもなく、ただ自分自身の感覚でのトピックを拾っています。これを作ったのは、ユビキタスや、Web2.0、ロングテールといった言葉が流行り終えた頃でした。2008年から翌2009年と、世界的な金融・経済危機リーマンショックに見舞われた時期の直後でもありました。

2020年秋の今、年表に書き足すとすると何があるのでしょう。 周囲を見渡すとAIはその候補でしょうか。 第三次AIブームですね。 新しいテクノロジーは、過度な宣伝や期待を呼び起こし、やがて幻滅を招き、その後の回復を経て、本来の広まりかたをするといった考え方があります。 このAIブームが今はどの段階か、識者によって見解は少しずつ違うようです。

 

COVID-19禍で起きたリモートワークに関わるITサービスの急拡大。 参加ユーザー数が激増したZoomに象徴されるような動き。 後年、どう振りかえることになるのでしょう。 ちなみにZoomが誕生したのは2011年。ビデオ会議サービスの先駆けSkypeが、マイクロソフト社の傘下に入った直後のことでした。

 

仕事や暮らしのなかにコンピュータが溶け込み、いつでもどこでも使えるという「ユビキタス」。20年前、言葉が流行ったころは、まだ理想を語る概念のような面がありました。それが、例えば、コンピュータ端末としてのスマートフォンのはたらきを見ても、今や、すっかり現実です。

流行った当時、次世代のWebを示していたWeb2.0は、今では説明ができないほど実現してしまいました。SNSの普及であり、googleやAmazonのサービスの定着であり、Webコンテンツのさまざまに個人による発信だったりです。

 

IT・コンピュータ技術は、それを駆使し成長する世界的な巨大企業群があるとともに、そうした企業がもたらすサービスが、家庭や個人の暮らしを着実に変えています。

いっぽうで、一般的な企業での仕事のやりかたが、個人の暮らしかたよりも、取り残され遅れてもいます。企業は、本来、家庭や個人以上に能率的であるはずですが、人々の、組織の変化を好まない水面下の心性が、そうした遅れを容認してしまいます。

個人では、スマートフォンひとつで済ますことを、職場では従来通りの手間をかけていないか。例えば、そう問い直してみると、心当たりは少なくは無いはずです。

 

21世紀。経済の停滞などが言われ続けるなか、家庭や個人に、着実にIT・コンピュータ技術は溶け込んでいます。中小企業の経営者や企業人の皆さんが、職場を離れてあらためて近頃のIT機器やWebサービスに触れてみる。そうしたことが役に立つ時期に思えます。たとえばGoogleアシスタントやAmazonのAlexaを搭載した、AI スマートスピーカー。その使い勝手は、けっこう予想以上だったりするはずです。

あるいは、実店舗とウェブとがひとつのコンテンツとしてまとまっていることの気持ち良さなども、垣間見ることができるかも知れません。 新しいテクノロージーを使うときに必要となる「確からしい信頼感」「無害らしい安心感」「グルーヴ感」をつかんでみる場がそこにあります。

 

そういえば、昔々は、信頼感のハードルが低い「おもちゃ」が、新しいテクノロジーをテストする場でしたね。

 


■執筆者プロフィール

 

松井 宏次(まつい ひろつぐ)

ITコーディネータ 中小企業診断士 1級カラーコーディネーター

健康経営アドバイザー

焚き火倶楽部京都 ファウンダー