Afterコロナの社内コミュニケーション / 小笠原 知広

(1) 目次

1. 社内コミュニケーションの変化

2. 社内コミュニケーションでのデジタル活用

3. Afterコロナの社内コミュニケーションのあり方

 

(2) 内容

1. 社内コミュニケーションの変化

コロナ禍で、テレワークや、zoomやskypeを使ったオンライン会議を経験された方が多くいらっしゃるかと思います。他にもビジネスチャットや、中にはGoogle Spreadsheetのように複数人が同時編集できるデジタルツールを使いはじめた方もいるかも知れません。

 

社内のコミュニケーションであれば、今まで社内報、メール、内線(電話)、対面型会議、社内研修、ランチなどでの雑談や相談が主流だったのが、今後はビジネスチャットやオンライン会議、オンライン勉強会に切り替わっていくことが想像されます。また実際に切り替わっている場面を多々見ています。

またオンライン会議のあり方も、今までのオンライン会議の常識とは変わってきているように感じます。

私は、以前からオンライン会議は利用していましたが、当時(1-2年前)まではオンライン会議を予定として入れて、時間通りに会議を始めること、通常の会議をオンラインで行う場面が多く見受けられました。ただコロナ禍で、ビジネスチャットとオンライン会議の併用がはじまり、オンライン会議のあり方も少し変わってきたように感じています。チャットを送り、さっと必要最低限の人数でオンライン会議を開き、その中で資料のレビューをしてもらう、または決定できる人や意見を持っている人を集めて、決定・判断をするという動き方も当たり前になってきています。つまり、今までは予定として実施していたオンライン会議が、日常業務の中のオンライン会議(わざわざ予定を入れない会議)へと切り替わっています。

 

2. 社内コミュニケーションでのデジタル活用

社内コミュニケーション(雑談や会議体など)は、コロナの影響もあり、デジタルツールの活用が一層進んできています。

デジタルツールと言っても、オンライン会議であれば、「zoom」「Microsoft teams」「Cisco Webex」「Google meets」「Facebook のMessenger rooms」などがあり、ビジネスチャットであれば、「Microsoft Teams」「Cisco Jabber」「Google chat」「Chatwork」「slack」などがあります。

ただこれらのツールは使い方が特段難しいわけではありません。直感的に操作ができるように、アイコンも設計されていますので、比較的容易にツールを使うことができます。

 

問題は、企業が自社にあったデジタルツールを導入し、活用できるか、ということです。

まず導入という観点で言えば、コストやセキュリティの心配以前に、管理職や経営層の意識が問題となっています。私の知っている会社でも、役員がデジタルツールの利用が不得手なため、いろいろな理由をつけて導入を反対している、という話をいくつも聞いています。(中には社長の息子(次期、社長となる方)が、コロナの影響下で、従業員に出社をさせることは許さないとし、デジタルツールの導入を推し進めているケースもありました)

また、活用という観点で言えば、マニュアルを整理しよう、ルールを決めようといった動きをとる企業があります。部分的には必要なルールもありますが、過度なルールはデジタルツールの利用を委縮させてしまうため、逆効果になります。今まで雑談や会議をするのにマニュアルやルールがあったかと言えば、マニュアルもルールも存在していなかったはずです。一部企業では、会議を開催するにあたって、ムダな会議を減らすように会議に費やすコストの見える化を行っていましたが、それでも会議の開催基準までは設定していませんでした。ビジネスチャットやオンライン会議も当たり前になっていけば、マニュアルやルール自体が不要という結論にたどり着くのでは、と考えています。

 

デジタルツールを活用するのが当たり前となると、新しい問題も出てきます。前述のように、デジタルツールの利用が不得手な人、会議や仕事で価値を発揮できない人は、少しずつ閑職に追いやられてしまう事態も起こるでしょう。

デジタルツールの利用が不得手で、順応できない人は、ニューノーマルな働き方・企業文化になじめないどころか、チャットでも声を掛けられず、打ち合わせにも呼ばれず、情報弱者になるリスクがあります。また、Yesマンで、特段自身の意見を持たず、周囲に合わせていた人も同様に、情報弱者になるリスクがあります。今まで、物理的に同じ空間にいれば、声を掛けてもらえていたものが、声を掛けられなくなりますので、情報弱者を生まないようにする工夫・仕掛けというのが必要になります。

  

3. Afterコロナの社内コミュニケーションのあり方

今までの話を踏まえると、今後の社内コミュニケーションのあり方のキーワードは、3つあると考えています。

「付加価値化」「適応性」「即時性・双方向性」です。

まずは「付加価値化」です。これはAfterコロナ如何に関わらず重要なことで、また従前からも言われていたことです。仕事での貢献度を高めて、周囲からも必要な人と思ってもらえるように付加価値をあげていくことが必要です。

二つ目に「適応性」です。新しいデジタルツールを使いはじめると、まずはそのデジタルツールに適応していくことが必要です。例えばビジネスチャットのように、徒然と会話が続き、当初の会話の意図とは異なる話に進むことも多々あります。また、TeamsやSlackのように、チャンネル/スレッド(特定のテーマで議論したり、ファイルを共有したりする場)をいくつも設定できますが、使われないチャンネル/スレッドも多々あります。チャンネル/スレッド設定の問題もありますが、自由闊達にコミュニケーションをとれる設計である以上、最初から「使われない可能性がある」という前提でとらえていく必要があります。(私見では、使われないチャンネル/スレッドが多い会社は、コミュニケーションロスやコミュニケーション委縮を生むので、問題だと思っています。)

三つ目が「即時性・双方向性」です。メールであれば、メールを読み、このメールの内容であれば返信を後回しにしよう、ということができました。ただ、今後はビジネスチャットで相談がくるようになります。それも、チャットという制約上、文字数も少なく、説明が簡潔、かつ文章に誤植があったり、「てにをは」が間違えていたりします。その中でも、チャットに返信をし、相手からの相談事項に応えていかないといけません。「質」よりもスピードや反応と言った「即時性」が重視され、それが常に「双方向」でのコミュニケーションが求められるようになりました。

 

Afterコロナの社内コミュニケーションと言っても、実は「付加価値化」「適応性」「即時性・双方向性」は昔から言われていることです。ただ、デジタルツールの上にコミュニケーションが成り立つようになるため、その3つの要素がより顕著になってくるのが、Afterコロナだと考えています。


■執筆者プロフィール

小笠原 知広(おがさわら ともひろ)

e-mail:t.ogasawara1101@gmail.com

中小企業診断士、ITコーディネーター、PMP(Project Management Professional)、TAM(ターンアラウンドマネージャー)。

大学卒業後、公益財団法人での事業統括、コンサルティング会社でのシステム導入の定着化支援、業務可視化、コストマネジメントの仕組み構築、業務改革等のBPRプロジェクトに従事。