4月7日に緊急事態宣言が発出されてからようやく5月21日に大阪、京都、兵庫の関西2府1県が解除されました。解除されなかった首都圏の1都3県と北海道も5月31日の期間満了を待たずに5月25日に全国で緊急事態宣言が解除されました。全国的にターミナル駅、オフィス街や商店街への人出が戻りつつあり、多くの人が外出している光景をテレビ等で見る機会が増えました。しかしながら、経済活動は新型コロナウィルス拡大前の状態に戻っていないため、中小企業は持続化給付金の申請や日本政策金融公庫などの金融機関への資金繰りの相談、雇用助成金の手続き等を行い、事業存続のために懸命な努力を続けています。非常に危機的な状況が続いている中でも、現状を打開するための営業努力、新たな有望分野に取り組もうとする中小企業の姿が見えてきました。
・日本人はコロナ対策の成果に自信を持つべき
世界最大の感染者数と死亡者数となった米国や、それに次ぐ被害地域となったヨーロッパ諸国から、日本の対応は「非常に弱い」という厳しい見方が多くありました。最近は見方が変わり、「日本のコロナ対策”奇妙な成功”、「新型コロナでの成功は“ミステリー”だ」といった日本に対する評価の声が増えてきました。あらたな見方の共通点として、日本人の衛生観念の発達、握手をしない・キスやハグなどが一般的ではないといった習慣が挙げられています。まだ予断は許しませんが、海外からの評価では、私達日本人が持つ習慣や文化自体が、新型コロナウィルスを克服する源と感じました。過去に経験したことのない厳しい環境に立ち向かうためには、自信を持つことが一番の力になります。
・公的支援の活用、IT武装化で攻める中小企業
人の移動の制限、巣ごもり消費、大企業を中心としたテレワーク、行動の自粛により、中小企業は戦後で最も厳しい経済状態に直面しています。飲食、宿泊、理美容など多くのサービス業は、テイクアウト販売、ネット販売等を取り入れ、コロナ環境下の消費行動の変化に対応する必要が生じています。販促目的であれば、小規模事業者に対してネットショップ開設による販路拡大や新規取引先の販路開拓等の取り組みに対して3分の2を補助する小規模事業者持続化補助金をお勧めしています。専門家による支援も補助対象のため、緊急事態時においてはオーナー1人で悩まずに専門家に相談して突破口が開ける可能性もあります。テレワークを導入し、従業員の安全を確保する場合は、テレワーク助成金が通信機器やテレワーク用ソフトウェアの導入費用の4分の5を助成する支援をしています。バックオフィス等の日常オペレーションの業務効率を上げるために、IT導入補助金を利用すると2分の1の負担でシステム導入をすることが可能です。今年度は、コロナ対策のために通年を通して公募される予定であるため、中小企業はこれらの施策を是非活用するべきです。自社で申請ができない場合は、士業に依頼する等、対応を進めましょう。
・ネット販売を行う場合は、関係法令に気を付ける
ネット販売への取組みや飲食店におけるネット販売、持ち帰り販売を開始される事業者も増えていると思います。その場合は許認可及び関係法令に注意して対応します。
特定商取引法:事業者の氏名、住所、電話番号等の表示、誇大広告などの禁止等、ネット通信販売のルールを定めています。
個人情報保護法:個人情報を取り扱うすべての事業者は、個人情報を安全に関す る義務があります。
景品表示法:景品類の「総額」や「最高額」を規制しています。
他に、中古品、食料品、医薬品・化粧品、酒類、輸入商品の販売は、古物営業法、食品衛生法、薬事法、酒税法、一般般酒類小売業などの規制対象となり、許可・届出が必要となりますので、事前に確認しておきましょう。
・仕事の時間の使い方が変わり、コミュニケーションがより重要になる
3密を避けるために、中小企業においても在宅勤務を取り入れる動きがあります。朝9時から17時半までという固定的な時間に縛られた働き方も変化していくでしょう。サービス業においてもオンラインを活用した取り組みが始まっており、デリバリー、オンラインでサービス提供を行い、場所に縛られない仕事のやり方を試行しています。在宅勤務は、家族と過ごす時間が増えるため、仕事のスピードをアップし、効率化を図る必要があります。仕事の同僚と同じ場所にいないため、ITツールを活用しWeb会議やチャット等で円滑なコミュニケーション作りがこれまで以上に重要となってきます。回りくどいメールは時代遅れになるでしょう。今の状態が短期で変わることはないため、中小企業においてもITの活用やペーパーレスによる業務の無駄を省く取り組みは避けられそうにありません。人との接触を避けるために、個々の1人1人が自己管理の徹底と成果を意識した働き方をする必要があります。
■執筆者プロフィール
松山 考志
上級ウェブ解析士/上級文書情報管理士/行政書士
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