■最近言われる、with コロナ
新型コロナウイルスが猛威を振るっています。日本の場合、まだピークに達したとはいえず、まだまだ先が見えません。多くの企業が休業を迫られ、資金繰りに窮し、倒産するところも出てくるでしょう。職を失う人も今後おびただしい数に上るかもしれません。
そうした中で、4月に入ってから明らかに世の中の論調が変わってきているように感じます。それまでは、コロナを早く終わらせよう、早期に抑え込もう、抑え込みさえすれば経済は元の状態に戻る、といった感じで言われてきました。しかし、このところよく見かけるのが、アフターコロナ、ポストコロナ、そしてwith コロナ、です。
■コロナとの共存
どういうことか。もはや私たちは新型コロナウイルスと共存していかなければならない、そういうニュアンスなのです。2,3か月で終息するなどとはもう誰も思っていないでしょう。1年か、2年か、3年か。よく100年前のスペイン風邪が引き合に出されます。このときはようやく流行が下火になったと思ったら、第2波が来て、さらに第3波も来た。しかも、第2波のときが一番死者が多く、結局収束するまで3年かかった。100年前です。いまよりグローバルな行き来がはるかに少なかったでしょう。それでもこの状態。現在の状況であればどうなるのでしょう。
■新たな未知のウイルスの可能性
さらに、今回の新型コロナウイルスが一定おさまったとしても、また新たなウイルスがやってくる可能性が言われています。1つには自然破壊によりこれまでなかった動物と人間の接触が生まれ、そこから未知のウイルスが人間界に入ってくるというパターン。もう1つ言われているのが、温暖化で極地の氷が解け、その中に潜む未知のウイルスが人間世界に入ってくるというパターン。その他漢方薬の原材料が原因であるとする説(動物を使うので)などもあるようですが、いずれにせよ未知のウイルスが襲来する可能性は否定できないのです。
■強烈なパンデミックの記憶
もっと言うと、未知のウイルスが来る来ないは置いておくとしても、今回人類はパンデミックの恐ろしさを骨の髄まで味わったことの影響がとても大きい。いったんパンデミックになると医療体制も、経済も、ここまで惨憺たる状況になってしまうのかと、初めて思い知ったのです。この記憶は強烈に残るでしょう。この深い記憶により、未知のウイルスが来る可能性が何パーセントであろうと、もはやパンデミックを前提に社会と経済を構築する以外なくなるのではないでしょうか。
■コロナ状況下での企業活動の継続
では、この状況の中で企業活動はどうすればいいのか? 1、2か月自粛しよう、ではもはやすみません。(1、2か月でも倒産に追い込まれるところもあるでしょうが)。新型コロナだけ取っても1年~3年を前提に考えなければならない。ましてやその後のパンデミックの可能性を考えると、パンデミックを前提に企業活動を組み立てるしかないということになります。コロナ状況下で企業活動をともかく続けていくにはどうすればいいか。もちろん、従来のやり方で続けていくことはできません。そこはさまざまに創意工夫をする必要があります。
たとえば、飲食であれば、席を離したり、テーブルを広くしたりして、客同士が2m以上の離れるように、インテリアデザインを根本から変えるとか、1時間といった時間制限を設けて回転を速める(万一ウイルス保持者がいた場合のため、および席数の減少を補うため)とか、ウイルスを短時間で排気したり不活性化する空調設備を導入する(ダイキンなどはこうした設備を開発する必要があります)とか、そうした工夫をすることによって、一定は営業が続けられるようにする必要があるでしょう。要するに、コロナ状況下での事業継続性を確立していくことが不可欠になるのです。
■ビジネスチャンスとしてのコロナ状況
それだけではありません。いまの例からも、実はコロナ状況がビジネスチャンスであることがわかると思います。今後、飲食などの店舗デザインは根本的に変わる可能性があります。そうなれば内装やリフォーム関係には大きなチャンスでしょう。また、ウイルスの強制排気や不活性化に的を絞った空調や空気清浄機なども関連製造業にとってはビジネスチャンスになる可能性があります。
いずれにせよ、社会は大きく変わるでしょう。いま急激に増えている在宅勤務やオンライン会議も、現在の新型コロナが収まってくればある程度元に戻るかもしれませんが、たぶん完全には元に戻りません。通勤時間がゼロになることの効率性やオンライン会議でのポイントを絞った議論の生産性に目覚めた人々はそのまま続けようとするでしょう。こうして、コロナ前には考えられなかったほど在宅勤務やオンライン会議が定着した形になるでしょう。こうした変化がさまざまな分野で起こってきて、社会を大きく変えることになると思われます。ビジネスにとって変化は常にチャンスです。コロナ状況はビジネスチャンスなのです。
■事業の継続性を確立し、ビジネスチャンスをつかむ
結論を言えば、コロナ状況下において企業はまず事業の継続性を確立していく必要があります。そして、それを前提として、大きく変わる社会の中でビジネスチャンスをつかみ、社会に貢献していくことが重要だと思います。単に不安がっているだけではどうしようもありません。すべてをチャンスに変えていく。それこそがコロナ状況下での企業活動の目指すべきことではないでしょうか。
■執筆者プロフィール
清水 多津雄
ITコーディネータ
ITコーディネータ京都理事
同志社大学大学院修士課程修了 哲学専攻
企業において二十数年間情報システムに携わり、ITマネジメント、特にIT戦略立案、IT企画、システム設計、プロジェクトマネジメントに従事。その中で仕組み化の方法を構築、さらに新しい仕組みの創造に関心を持ち、それが現在のイノベーション研究・実践の基礎となっている。
他方、現在もシステム理論を中心に哲学研究を続け、特に偶発性(contingency)と創発(emergence)に注目し、それをイノベーションの基礎理論として理解する試みを行っている。
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