外部専門家活用のススメ マンション管理組合 (3) / 丸山 幸宏

◆まえがき

 昨年11月に京都で「住民主導の賢い大規模修繕を考える」という日経新聞主催のシンポジウムがあり、これまでの管理組合活動を検証したいなという気持ちが背中を押して、参加してきました。実はこのネタ2年ぶりではありますが、当事者の視点で感じたこと触れたいと思います。

 

◆論点:自立する組合とは

 組合が主体的に考え・動き・学んで成熟することが重要だということ。「組合の・組合による・組合のために活動する」ってのは何となく感じてはいましたが、そこにある「なぜ」について改めて考えることで、いろんなことの文脈が揃ってくることに気づく事ができました。

 

◆シンポジウム概要:住民主導の賢い大規模修繕を考える

 管理費だけを支払い管理会社に依頼して進めることの多い、マンションの大規模修繕。しかし、マンション管理組合が主体的に修繕を進め、自分たちの資産を自分たちで守る姿勢が大切。

 安全安心で満足できる大規模修繕のために必要な情報を提供し、日常的な予防管理の重要性や、パートナー企業を選ぶポイントなどを紹介。

 優秀な工事業者と連携すれば予防管理を導入でき、修繕の周期を延ばすことでコストを削減することも可能に。

 主なセッションは以下4つで、1つ目を中心に触れます。

 「自立する管理組合の大規模修繕」

 「管理組合との共同による設備改修工事」

 「人生100年時代、これからのマンション大規模修繕」

 「生きのびるマンションとは」

 

◆基調講演:自立する管理組合の大規模修繕

 大規模修繕は管理組合にとって最大の支出を伴う最大の事業で、それをうまく行うためには、事業主体である管理組合がそれにふさわしい力量を持っていること。すなわち管理組合が十分に機能している事が条件。

 自立できていない管理組合とは、自分たちのマンションの管理・運営に関することを自分たちで判断・決定する事ができない。管理会社に・専門家に頼り過ぎている状態。

 

1. 自立する管理組合の条件

(1) 継続性

 国交省の調査によると、役員任期は1年が57%・2年が37%で、改選は全員同時期が62%・半数ごとは26%で、選任方法は輪番制が75%とのこと。1~2年の役員任期では継続性の担保は難しい。引継書で理屈は伝わっても、引き継ぐ側に経験が伴っていないため、物事の実行に必要な適切な発想が生まれにくい。経験を共有していくというプロセスが加わらないと、適切な判断・発想は生まれてこない。

 なるほど、“経験を共有する機会”が大事っぽい。

 

(2) 専門性

 専門的知識が必要な時の対応とは、例えば建物の劣化や不具合、規約等の法的解釈などを扱うことで、管理会社や過去担当した理事に聞くことになるが、実際彼らが必要な専門的知識や経験を有しているとは限らない。

 そもそも、管理組合で必要な専門的知識とは、一般的に言われる専門的知識ではなく、そのマンションの管理や運営に必要となる専門的知識である。建築士や弁護士のような、建築や法律のことについて広く知識を要求されるわけではなく、自分たちのマンションという限られた対象に関して、多くの情報と深い専門的知識が要求される。

 なるほど、外部専門家を含めて“特定物件での具体的な専門性にチームで対応”ってのが大事っぽい。

 

(3) 責任性

 最低限の責任は説明責任を果たせること。管理組合が行う事業の責任は、もちろん管理組合が負う。そのためには、行うことをきちんと理解していなければならない。

 なるほど、1~2年任期の総入れ替え輪番制みたいな集まりだと、何をやるにもネガティブに萎縮側に働いちゃうから、管理会社に強く依存せざるを得なくなる。

 

2. 自立するための方策

(1) 体制

 管理組合のような住民自治に基づく事業組織を、住民の利益にかなうように運営していくためには、継続性・専門性・責任性を担保できる体制が不可欠となる。

 1つ目は、「常任理事制の導入」で、輪番理事の他に常任理事を任命するなどの工夫が必要だろう。常任理事と輪番理事を組み合わせる理由は、人材の供給と育成である。

 2つ目は、「専門委員会の常設」で、従来は大規模修繕時の修繕委員会、規約改正時の規約委員会など、対象となる事業の時期に合わせて臨時に設けられるのが普通でした。ところが、継続性・専門性が強く求められるようになると、これら専門委員会も臨時ではなく、常設にしておかないと、その役割を十分に発揮できない。

 なるほど、東京の組合では「常任+輪番制」に移行し、関西の組合では総入れ替えを「半数ごと」に移行して「委員会常設」を模索中なので心強い。

 

(2) 動機付け

 平均的な輪番制による理事会体制に加えて、常任理事制や常設委員会など、これまでより負担が重くなるため、動機付けは難しくなる。優秀な管理組合には一つの共通点があって、それらの組合では長くやっている理由として「楽しいから」という点をあげていた。

 なるほど、共感の輪を広げる工夫がまだまだ足りてないなと反省、収穫でした。

 

(3) 任期が長期になることによる弊害への対処

 限られた人が長期に役員を務めることによる、偏った非民主的な運営の危険性があり、その役を担う者自身が誰よりも強くそのことを意識することが必要で、理事会や委員会が常にオープンである事が必要十分条件。

 オープンに運営していくためには管理組合が今、何を目指して活動しているのかが、常に住民にわかるようにしておく事が重要で、そのために住民共通の目標

として自分たちのマンション将来像を「未来構想」として住民全員に示すことも一つの方法。

 なるほど、目指していることの共有・共感があって、「なぜ」その施策を今やるのかの説明責任につながるということですね、収穫でした。そう言えば、東京の組合で、たまたま年次総会に出席された非居住の外部オーナーさんが居て、これまで「住んでいる区分所有者」寄りの運営になりがちだったので、とても貴重な機会でした。さらに、役員に誘ったら引き受けて下さって大きな収穫でした。

 

3. 自立する管理組合と大規模修繕

 大規模修繕はあくまでもマンション管理の一環として行われる。したがって、根拠となる法律は、建築基準法ではなく「区分所有法」である。故に、大規模修繕の主体は管理組合と考えるのが自然。

・区分所有法第3条:

「区分所有者は、全員で建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置く事ができる。(以下略)」

 大事なことは、工事方式の選択と管理組合の主体性・自立度合いで、「実質お任せ方式」となる建築士による設計監理方式における悪質コンサルや、責任施工方式における共依存管理会社がはびこる最大の原因は、組合が外部の専門家などに任せっきりにして、主体的に関わろうとしない姿勢にある。(続く)

 

 この後も大規模修繕との向き合い方の話が続くのですが、続きは次回以降で。

 

◆あとがき

 これまでの自身の組合活動を肯定してもらえる点も多かったのですが、改めてシンポジウムを振り返ると、果たして自主・自立・自治にどれだけ根差した活動ができていたか・いるかは、考えさせられることも多く、とてもいい機会でした。

合掌。

 

(参考:過去のメルマガ)

・その1

 https://www.itc-kyoto.jp/2017/08/28/外部専門家活用のススメ-マンション管理組合-1-丸山-幸宏/

・その2

 https://www.itc-kyoto.jp/2018/01/29/外部専門家活用のススメ-マンション管理組合-2-丸山-幸宏/

 


■執筆者プロフィール

 Principal Consultant

  Yukihiro MARUYAMA(丸山 幸宏)

 ITC(0015202003C), IT-CMF(Tier3)

 Business Design TSUMUGi LLC

  変わりたい気持ちに向き合い・寄り添う。

  ボスはお客さま。夢は外から地球を眺めること。

 得意分野は、

  グローバルなソーシングやガバナンス

  エンタープライズでのBPMやEAM

  サービスデザインによるDXの推進

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