今、中小企業では高齢化が進んでいます。
データ帝国データバンクによる「中小企業の成長と投資行動に関するアンケート調査」によると、経営者の引退年齢は平均すると67歳から70歳です。今後5年で多くの中小企業が事業承継のタイミングを迎えると予想されています。1995年では平均47歳であったものが2015年には20歳以上上昇しています。
事業承継において後継者が引き継ぐ資産、経営スタイルと資産と知的資産の3つがあります。
経営スタイルは、経営権や後継者の選定や育成、後継者教育などがあります。これは5年から10年ほどかかると言われており、後継者と現在の経営者との対話が重要です。
資産は、株式や事業上の設備や不動産、運転資金や借入金等、及び会社が持つ許認可等があります。この資産は経営者の個人資産と会社所有が混在する傾向があり、会社と個人の関係を整理する必要があります。
知的資産は、経営理念や経営者の信用力、取引先との関係性、従業員を含めた人財、技術やノウハウ、顧客情報などがあります。
初めに挙げた経営スタイルについては、現在の経営者のやり方を後継者が引き継ぐことが難しい場合があります。それはトップの強力なリーダーシップによるトップダウン型経営を行っている場合です。
そしてリーダーシップだけでなく、企業内のリソースや外部との連携、取引先や顧客の拡大は、経営者の経験から導かれる勘で判断してきました。
この経験による勘が経営者の頭の中にあるため、見えないノウハウとなり後継者に引き継ぐのは難しいのです。
この他、財務管理や業績管理についても、経営者は感覚的に数字を捉えていることが多く、現在作成している管理資料は何故必要かといったことを言葉では説明しづらいのです。
これらを後継者が引き継ぐ上では、なぜそのような管理手法をとっているのかなどを言語化していく必要があります。さらに言語化させた上で、ITを使って管理資料をリアルタイム確認できるようにするべきと考えます。
IT活用の面では、営業手法の差が大きくなっていきます。
対面や電話による対応がほとんどであった現在の営業手法は、メールやSNSなどを使った方法に変わりつつあります。
さらにホームページ上の写真や動画などを活用したビジュアル面の強化が必要になってきます。
特に商品を販売する卸売業や小売業等の場合、ビジュアル面を強化してホームページやInstagramなどで発信することが重要になります。
これは時代とともに営業方法が変化しているだけではありません。
多くの企業の仕入れ担当者の若返りにより、仕入れ先を探す場合にホームページやSNS Instagram等により探すという手段が変わってきているためです。
極論を書けば商品の中身よりも、まず見た目と商品説明の分かりやすさにより、仕入先の選択が変わってくるのです。
そこに気がついている後継者は、ホームページの活用やSNSの情報発信の強化を行っていますが、現在の経営者が否定的である場合、情報発信力が遅れていきます。
このような現在の経営者の状況を理解しながら、後継者の情報発信やIT活用を促す支援を行うのは、ITコーディネータの役割です。
■執筆者プロフィール
株式会社 エムティブレイン http://mt-brain.jp
山口 透(とおる)yama@mt-brain.jp
経営戦略策定、業務改善やIoTを活用した新しいサービスを中心として、大企業から中小企業までの「経営とITと人材育成」のコンサルティング業を行っている。
中小企業診断士、ITコーディネータ、システムアナリスト
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