新年、明けましておめでとうございます.
謹んで皆様の益々のご発展とご多幸を祈念申し上げます。
さて、2020年はオリンピックイヤーをはじめ何かと話題が豊富な一年になりそうです。そして、いよいよ中小企業をはじめ全ての企業にデジタルの波が一気に押し寄せてくる予感がします。下記にその予兆を書かせていただきます。
◆デジタルファーストが始まる
昨年は、働き方改革やデジタルトランスフォーメーションの話題をよく聞きましたが、今年は「デジタルファースト」という言葉をよく聞くようになると思います。数年前から米国、英国、エストニア、シンガポールなどの事例が紹介されていましたが、我が国においては、2018年1月「デジタル・ガバメント実行計画(DG実行計画)」を閣議決定し、各府省での電子政府実現へ向けた中長期計画策定が始まりました。この時定められた実行計画3原則は次の通りです。
・デジタルファースト(手続き・サービスをデジタルで完結)
・ワンスオンリー(提出済み書類やデータの再提出を求めない)
・コネクテッド・ワンストップ(民間サービスを含めた手続き・サービスの一元的な提供)
◆行政手続きの100%オンライン化を目指す
昨年5月に成立した通称「デジタルファースト手続法」は、行政手続きのオンライン化を原則とすることを定めています。これに伴い電子署名や電子納付等で本人確認や手数料納付をオンライン化します。行政手続きで役所に提出する添付書類を撤廃し、行政機関間の情報連携等によって入手・参照できる情報に係る添付書類については添付を不要とします。現時点では登記事項証明書や本人確認書類が不要になる予定です。登記事項証明書は、2020年度から情報連携が開始される予定で、本人確認書類は電子署名による代替が想定されています。
◆税務申告のオンライン義務は大規模法人からスタート
令和2年度より、資本金1億円を超える法人から法人税、消費税などの納税申告の電子申告が義務付けられます。これには申告書だけではなく、添付書類の全てが対象です。電子に代えて、書面提出した場合は、申告自体が無効で、無申告加算税の対象となるという厳しい内容です。また、年末調整手続も、大規模法人を対象に電子化が義務化されます。従業員が、保険会社等から控除証明書等を電子データで受領し、年末調整申告書データに利用が可能になります。10月からはマイナポータルを通じて、従業員は複数の控除証明書等を一度の処理で取得することができるようになる予定です。デジタルファーストが目指す民間サービスを含めた手続き・サービスの一元的な提供(コネクテッド・ワンストップ)の実現を目指していると言えます。
◆補助金の電子申請システム「Jグランツ」
Jグランツは、経済産業省が公募から事業完了後の手続までをオンラインで完結可能にすることを目的に開発した補助金申請システムです。昨年12月23日から運用が開始されました。運用開始時点では経済産業省の27 補助金が対象ですが、他省庁や自治体の補助金申請に随時拡大されていきます。Jグランツの特徴は、デジタルファーストの施策に基づき、GビズIDを取得すれば、1つのアカウントで複数の行政サービスにアクセスでき、申請者の基本情報が自動入力されるなど、何度も同じ入力をすることがなくなります(ワンスオンリー)。また、紙でのやり取りがなくなるため、書類の押印が不要になります。利用者は、ブラウザ(Edge、Chrome、Firefox、Safari)でアクセスし、PC、スマートフォン、タブレットで閲覧操作が可能です。小規模事業者持続化補助金やものづくり補助金などが対象となっており、補助金申請時に複数部数申請書を用意するという大変な作業が軽減されるため、申請時に負担は大きく軽減されると期待します。
◆一定条件を満たした経費精算の領収書が保存不要に
2020年の税制改正大綱で、税務申告のために保存が義務化されている領収書のペーパーレス化が明らかになりました。現状、経費で使用した領収書は書面で保存することが原則で、電子帳簿保存法の一定の条件を満たした場合はスマホで撮影した画像データ、スキャニングしたPDFが書面に代えて原本として認められています。電子帳簿保存法はこれまでも改正を重ねて制度の利用を促進しようとしてきましたが、企業の大多数は領収書を書面の状態で保存しているのが実情です。これが、本年度から経費精算を対象に一定条件を満たす場合には、領収書の保存が不要になります。クレジットカードやICカード等でキャッシュレス決済された経費精算について、決済データを領収書と同じように扱えるようになる見込みです。詳細ははっきりしていませんが、電子決済事業者などの決済データを領収書の代わりとして保存することが認められようになります。このため、データを改変できないようなクラウドサービスで保存するなど一定の条件を満たす必要があります。また、それらのデータをクラウド型の経費精算システムと連携させることで、精算申請時に支払情報の手入力を無くすことができる見通しです。
◆電子化の流れはますます中小企業に波及
これまで紹介したデジタルファーストを始めとする電子化の動きは、大企業のみ義務化されているものがありますが仕組みは共通であるため、いつでも中小企業に適用することができる状態です。このため、中小企業においても、こうした電子化への取り組みに関心を示す企業が増えつつあるものの、まだまだ本格化はしていません。しかしながら、政府の動きがはっきりしているため、中小企業とはいえ、デジタルファーストへの準備を進めていくことをお勧めします。
■執筆者プロフィール
松山 考志
上級ウェブ解析士/上級文書情報管理士/行政書士
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