いつになれば寒くなるかと思うような日々もあったこの秋ですが、順調に冬が訪れたようです。これからの季節、時として空は強い青の色を見せてくれます。寒さのなか見上げる冬の空。おすすめです。
■さて、年末、年始といえば宴会シーズン。最近は、幹事のかたが「食事タイム」を呼びかけることも珍しく無くなりました。始まりを辿ると、最初2011年の松本市での呼びかけからのことだそうです。「30・10運動」。
宴会が始まってからの30分、お開き前の10分を料理を自分の席で楽しみましょうという呼びかけです。
もちろん、せっかくの料理をなおざりにして席を巡るようなお酌文化そのものがどうかという意見も、もっともなこと。それでも、この30・10は、実状に沿った呼びかけだとは言えそうです。
■もう少し「食」について考えてみます。
宴会に限らず、食べ物がムダにされる場面は数多くあります。食品の製造工程での不要となった食材の廃棄や、小売での消費期限切れなどでの廃棄。家庭でも、食材を使い尽くすことはなかなかできていないでしょう。
食品の廃棄については、農林水産省と環境省が示す数値がよく知られています。
平成28年度推計では、食品廃棄物の量は2千760万トン、そのうち640万トンが「食品ロス」、つまり、「まだ食べられるのに捨ててしまわれる食べ物」 です。 半分が、食関連の産業のなかで、後の半分は家庭のなかでのロスとされています。
そして、溢れかえる「食」のなかで様々にロスを生み、かつ、また一方で、個人や家庭において食についての理解が乏しいといったことが、一般的な実状だと思われます。食事の適切な量やバランス、日本の食文化、地域の産物や旬の素材の大切さなど、また、規則正しい食事といったごく基本的なこと、それらをあらためて学ぶ必要が、私たちにはあるようです。
■人々の食についての関心が変わり、食への感謝の思いが希薄になって行く、そんなことが懸念され始めてからもずいぶんと経ちました。ファーストフード、レトルト、多様な外食産業の進出のなかでのそうした懸念に対し、「食育」が必要だとされ「食育基本法」も施行されました。 平成17年のことです。この基本法では、主に、家庭における食育の推進や、学校、保育所等における食育の推進などが示され、主に子供たちにむけての施策が想定されています。
さて、食を知る必要があるのは果たして子供だ けかというと、もちろんそんなことはありません。食について良く知り、食材きちんと使い切ったり、その旬ごとの食材 を自然ととりいれりといった食生活をおくる。大人がそうした暮らしかたをすることが、大切です。
■企業としての食への関わりかたも重要です。経営者が行う従業員に対する取り組みです。
このコラムで何度か取り上げている「健康経営」においても、食生活の改善は、健康診断や運動機会の増進、メンタルヘルス対策などとともに、具体的な取り組みのひとつです。
-取り組みの例-
・健康に配慮した仕出し弁当の利用促進や社員食堂における健康メニュー の提供
・社員食堂における栄養素やカロリー情報の提示
・自動販売機の飲料や内容を低糖・低カロリーのもの、もしくはすべてお茶 や水に変更
・朝食をとらない従業員への朝食の提供
・栄養士や保健師などによる食生活指導の機会の提供
従業員自ら正しい食事を選べるような情報提供などを行うことが、まず大切です。 基本となる情報は、食生活指針(農林水産省)でのまとめなどが参考になります。
http://www.maff.go.jp/j/syokuiku/shishinn.html
このような取り組みを経営者が行うことは、企業のなかに、食への関心を醸成します。それは従業員だけでなくその家族にも伝わります。そして企業の良質な伸長につながります。
やもすると無駄に食べ過ぎがちにもなるこの時節。「食」について考えてみる良い機会にして戴けることでしょう。
<参考>
京都市の食品ロス低減の社会実験
1) 加工食品の販売期限の延長による食品ロス 削減効果の検証
一部の加工食品の販売期限をおおむね賞味期限・ 消費期限の日まで延長し、廃棄数量の変化を調査。
前年同時期と比べ、対象品目全体(15品目)の廃棄数量が減少し、約10%の廃棄抑制効果を確認。
2) 賞味期限・消費期限が迫った見切り商品の購入を 促す啓発による食品ロス削減 効果の検証
「値引き商品を買って頂くと、食品ロスが減るんです。」や「すぐ食べるならお得な商品でもう一品!」と書かれた啓発資材で、見切り商品の購入を促進。前年同時期と比べ、青果、惣菜、パンの3部門とも廃棄率、廃棄個数が改善し、3部門合計での来店者1,000人当たりの廃棄個数は約6割減少。
参考文献:健康経営アドバイザーテキスト2018
■執筆者プロフィール
松井 宏次(まつい ひろつぐ)
ITコーディネータ 中小企業診断士 1級カラーコーディネーター
健康経営アドバイザー
焚き火倶楽部京都 ファウンダー
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