なぜデジタルトランスフォーメーションが話題になっているのか
海外出張していろいろなカンファレンスに出ると、どこでも必ずデジタルトランスフォーメーション(長いので以降DXと記します)が話題になっています。
デジタル化という大きなうねりの中で如何に生き残っていくのか、どの企業も必死になって模索しています。
これに対し、日本での取り組みははっきりと言って遅れていますし、認識が間違っています。
最近、MITのSloanスクールというところから出た本に日本にとっては非常に耳の痛いことが書いてありました。以下要約です。
「世の中は急速にデジタル化が進んでいる。これまでの情報システムは企業活動の効率化のために構築されてきた。デジタル技術は効率化のために利用することはもちろん可能である。しかし、それではDXに対応していることにはならない。」
最後の一文が特に皆さんに意識して頂きたいところです。我々はこれまでITを効率化のために使ってきて、相応の成果を上げてきました。しかしながら、新たな時代になって、この過去の成功体験が邪魔をして、効率化以外のIT活用の発想がなかなかできないのです。
その代表例がIoTです。いろいろな適用事例が出てきていますが、そのほとんどが見える化、効率化に留まってしまっています。
経営者の中にはまだまだIT導入を起案した際、そのコストどうやって回収するのかという質問をされる方が多いです。それでは、これからのデジタルの時代、企業は生き残っていくことができません。
では、本当のDXとはどういうアプローチをするべきなのでしょうか。その答えは一致しています。デジタル技術を駆使して新たな顧客価値を提供することです。
勘の良い経営者の方であれば、AIやIoTを使って、何か面白いサービスができるのではないかと考えた筈です。その発想が非常に大事で、それがDXの第一歩になります。
ただ、そこから先が難しく、今までとは異なるアプローチが必要です。これまでは新しいサービスを考えたら金融機関から融資を得れるように入念な事業目論見書を作成していたかと思いますが、そのアプローチは使えません。
顧客サイドもどんどんデジタル化が進み、スマホで何でもできるようになってきている状況が当たり前になってきている現在、このサービスや製品は顧客に受けると思っても、ほぼ100%、最初のバージョンはヒットしません。
有名なUberもAirbnbも初期バージョンと現在の内容とは大きく異なったものになっています。
実はユーザー側も何であればお金を払おうという気になるのか明確なものがあるわけではなく、新しいサービスや製品に接して初めて、支持するかどうかが分かります。したがって、事業目論見書を作成することができないのです。
実施すべきは、小さなパイロットシステムをリリースして、顧客の反応を見ながら改変を繰り返していくTry & Learnのアプローチです。
このため、クラウド環境でのサービス/製品開発が必須となってきますし、継続的な改変を続けていく覚悟も必要です。
大企業がこのようなアプローチを採用するのはかなり難しいですが、中小企業であれば、経営者の皆さんの覚悟次第です。
ぜひ、早急に Try & Learn のアプローチを開始してください。
■執筆者プロフィール
氏名:宗平 順己(むねひら としみ)
所属:ITコーディネータ京都 副理事長
Kyotoビジネスデザインラボ 代表社員
資格:ITコーディネータ、公認システム監査人
専門分野
・デジタルトランスフォーメーション
・サービスデザイン(UX)
・クラウド
・BSC(Balanced Scorecard)
・IT投資マネジメント
・ビジネスモデリング
・エンタープライズ・アーキテクチャ などなど
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