◆まえがき:
今年のお盆休みに、ダイニングチェアの分解清掃をやって感じたことから、第3回を構成してみました。
我が家のダイニングチェアは、キャンプ用のものを使っています。そろそろ5年目を迎えて、座面には拭いてもこすっても取れない汚れが目立っていましたので、分解して清掃することにしました。
◆論点:経済合理性の悪魔との付き合い方
例えば多くの電子機器が、バッテリー劣化や処理性能ギャップを引き金に“買い替え”を促すこと、悪魔のささやきのごとき厄介なものであります。確かに、経験価値の中核である“使い心地”が目減りしてきた機に乗じて新しい機種へと誘う。「いいものを長く使うことをよしとする」そんな天使のささやきとの間で揺れる自分の日常を、眺めてみました。ここでの“ささやき”は、結局どちらも物欲への誘いです。
(1) ダイニングチェア:座面の劣化と向き合う
以前使っていたダイニングチェアは、前の拠点でまだ現役(25歳)ですが、合成皮革の座面がすり減ってきたため座布団でカバーして使っていました。なかなかこういうクッションの張り替えは、自分では難しいですね。
そもそも、ダイニングテーブルセットとして家具屋さんで買って、家具屋さんのアフターサービスで「座面張り替え」ってメニュー見たことないし(ブランド家具ならあるはず)、かといって近所のショッピングモールに入っている衣類の直し屋さんに椅子を4脚持ち込んで張り替えるってのも、フレームを分解しないといけないし、座面板とは裏側で業務用のでっかいホッチキスで固定されているから、衣類系の直し屋さんでは手に余るね。木工品のリペアでもないしなー、みんなどうしているのかなぁ。そういうものと割り切ったら、買い換えどきなのでしょうね。ソファだったら本皮革を選んで、“長く心地よく使う”ことに備えるけれども、ダイニングチェアに本皮革張の座面って、スゲー高そうだ。
ということで、我が家では「座布団でカバーする」が手頃な解決策でした。
(2) ダイニングチェア:座面布が洗えるってイイね
そんなこともあって、今住んでいる拠点のダイニングには、丈夫な帆布が使われたキャンプ用のチェアをアレンジしました。キャンプ道具でお気に入りのスノーピークのもので、保証書がないことで知られていて、生涯修理を引き受けてくれるという、“愛着を育む時間”みたいな経験価値を共創しているメーカーさんです。
今回初めて分解して・洗ってみました。まず、ネジは2箇所だけで、外すと背もたれ部分が取れます。次に、肘掛部分はマジックテープで帆布が巻いてあるだけなので、すぐ取れます。最後に座面は、ちょっとコツがいりますが、横向けに立てて脚のパイプをX字に少し開いて、一方の下側を足で踏んで・もう片方を手で引き上げて少し歪めると、座面帆布の輪っかに通っているパイプのジョイントが外れて、座面をスルスルっと引き出せます。
1回目は、バケツでお湯・中性洗剤・もみ洗いで頑張ったのですが、なかなか手強い汚れで全部は落ちてくれません。帆布なんだしと思い直して、酸素系漂白剤と歯ブラシで予備洗いをしてから洗濯機でネット・液体洗剤多目で、なんと全部キレイになっちゃいました ! 歯ブラシは、押して毛先が繊維に入る様にすると、帆布の繊維に入り込んでいる汚れもジワジワと薄まり、後は洗濯機に任せました。
仕上がり具合は、新品みたいです。フレームもぜーんぶキレイに拭き上げしておいて、洗濯した帆布はヨレることもなく、フレームの組み付けもコツがわかるとどうってこともなくって。ふと、どうしてこの手順が、メーカーのウェブとかにないんだろう?って疑問が湧きましたが、“愛着の育み方はそれぞれに”って思想なんじゃないかなって思いました。だって、ちょっとした創意工夫で新品みたいにできたことって、全然大したことではないのはわかってはいるんですけども、素敵な時間だったんですね、夏休みのオヤジには。さっすがスノーピークさんだ。(多少色落ちするので留意)
(3) キャンプ用チェア:ついでに洗っちゃえ
ダイニング用で随分と気を良くした私は、15年近く使っているキャンプ用の随分と汚れた(愛着のある)チェアも分解しました。ただ、このタイプは帆布ではなく化繊のチャック式では無い閉じたカバーで、中にクッション材が入っています。肘掛部分のクッションカバーも、先ほどのマジックテープで巻いたものでは無く、縫って閉じたカバーが巻いてあるタイプです。メンテナンス性の進歩ですね。外した背もたれ部分と座面部分を歯ブラシで予備洗いしてから、ネットに入れて洗濯機の手洗いモードで洗いました。予想通り、クッション材が偏りますが、一箇所角で摘んで何度か振ると、遠心力でうまく四隅に広がってくれました。
仕上がり具合は、めっちゃリフレッシュされました。流石に外で使っているためフレームにはたくさんのキズがありますので、新品には見えませんが。肘掛部は、これまで通りに中性洗剤を染み込ませた布で叩いてキレイになります。縫い目を解いて外して洗濯したくはなりましたが、「誰が元どおりに縫うの?」という問いへの答えを持たない私は、賢明な選択として・洗濯をあきらめました。
言い換えると、4R+1の、Repairですね。無理やりITのアーキテクチャの話に置き換えると、Reformかな。続きはまた次回以降にて。
<あとがき>
子供が生まれた頃から、キャンプ道具を揃え始めたので、古いチェアは15年弱・新しい方が5年とどちらも使用年数はまだ若いんですね。この新旧定番チェアは、フレームとかの構造はほぼ同じですが、恐らく製造装置の違いで、アルミパイプの曲げ加工の仕方が微妙に違うんですね、だけど曲げの曲率とか接合部のジョイント金具の合わせ目とか、寸法に関わるスペックはぴったし同じでした。これはリペア部品が新旧共用できるということで、“生涯修理してもらえる”安心でもって、“愛着を育む時間”をユーザーとメーカーで共体験できる価値って、めっちゃ素敵だと改めて感じました。部品のないパイプは、曲げから作って修理してくれるらしくって、持っている古い方のチェアの“曲げ”の仕上がり、新しい方と触って比べたら、手仕事のようで感動します。
合掌。
(参考:過去のメルマガ)
・寿命タイマー・経済合理性の悪魔 その二
https://www.itc-kyoto.jp/2017/04/03/寿命タイマー-経済合理性の悪魔-その2-丸山-幸宏/
・寿命タイマー 経済合理性の悪魔
https://www.itc-kyoto.jp/2015/11/02/寿命タイマー-経済合理性の悪魔-丸山-幸宏/
■執筆者プロフィール
Principal Consultant
Yukihiro MARUYAMA(丸山 幸宏)
ITC(0015202003C), IT-CMF(Tier3)
Business Design TSUMUGi LLC
変わりたい気持ちに向き合い・寄り添う。
ボスはお客さま。夢は外から地球を眺めること。
得意分野は、グローバルなソーシングやガバナンス、エンタープライズでのBPMやEAMと、サービスデザインによるDXの推進。
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