過日、しがぎんSDGsビジネス・マッチングフェア2019にITコーディネータ京都として出展しました。100社を超える出展各社製品がエネルギーや生産・消費をはじめとしたSDGsの各分野に位置付けられ、私どもは、イノベーション分野での出展でした。これを機にSDGsをいかに企業の経営戦略取り組めば良いかを考えてみたいと思います。
■今さら聞けないSDGs
SDGs(持続可能な開発目標)とは 2015年9月の国連サミットで採択された「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現のため,国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた目標です。社会、環境、経済の課題を解決した“未来像”を描いたもので、健康、教育、エネルギーなど分野別に17のゴール・169のターゲットから構成されています。
17のゴールは以下の通りで、
・貧困、飢餓、保健、教育、ジェンダー
・水・衛生、エネルギー、成長・雇用、イノベーション、不平等
・都市、生産・消費、気候変動、海洋資源、陸上資源
・平和、実施手段
からなり、各目標の実現には世界中の企業や個人の取り組みが必要とされます。
例えば、海洋資源には「海の豊かさを守ろう」との目標が設定されていますが、スーパーやコンビニに買い物に行ったときにプラスチックの袋を受け取らない、といった一人ひとりの生活の中での取り組みが、ゴールの実現につながるという考え方が必要になります。
2015年に始まった取り組みですが、日本での認知度は低く、SDGsの取り組みについて知っている人はいまのところ、5人に1人にも満たない状況です。
その様な中で小学校・中学校・高等学校の新学習指導要領にはSDGsが言及され理科や社会の教科書にも盛り込まれるようになっています。
一方、経団連では、「Society 5.0 for SDGs」の推進を一層強化すべく、2018年7月にSDGs特設サイトを開設しました。SDGsは大手企業を中心に産業界に徐々に浸透し、目標達成に貢献すると宣言したり、経営に採り入れたりする企業が増えています。さらに政府は中小企業への普及を“主戦場”と位置付け、産業界全体への浸透を推進し、SDGsが新しいステージに入っています。
■SDGsカードゲームでの体感
日本生まれのカードゲーム「2030 SDGs(ニイゼロサンゼロ エスディージーズ)」はSDGsの17の目標を達成するために、現在から2030年までの道のりを体験するゲームで、国連でも紹介されて全世界に広がりを見せつつあります。
私も過日ワークショップに参加し「なぜSDGsが私たちの世界に必要なのか、それによってどんな変化や可能性があるのか」などゲームを通じて体感しました。
ルールは、与えられたお金と時間を使って、参加者個人がプロジェクト活動を行うことで、最終的にゴールを達成するというものです。参加者にどのような価値観を持った人か、渡されたカードにゴール条件が記入されています。例えば、お金が一番大事という人や時間が沢山あるのが幸せだという人、貧困をなくしたいという人そして環境を守りたいという人などと複数の目標があり、現実の世界と同様に様々な異なる価値観をもった人達がいることが設定されています。
プロジェクトは全部で80もあるようですが、もう一つのポイントとしてプロジェクトを実行する時に、参加者全員がホワイトボードに張り付けられたマグネットを共有します。これは参加者全員で創り出す世界の状況を表していて、青は経済、緑は環境、黄は社会を意味しています。
例えばその中のプロジェクトの1つに「交通インフラの整備」があり、それを実行するために、与えられたお金と時間を使ってプロジェクト活動を実行すると経済が循環し移動時間が短縮されるので、新たなお金と時間がもらえます。それと同時に次のプロジェクトカードと意思カードがもらえます。ここで言う意思とは、やりがいだったり情熱だったり無形のものを表します。これは現実社会と同じでお金や時間よりも、やりがいを大切にしている人がいるということです。プロジェクトが終わる度に経済が+1で環境が-1などとマグネットの数が変化します。自らのゴールを達成しようとすると世界の経済は伸びても環境や社会が悪化したりするため、皆と協調して全体最適がいかに大切かを体感します。つまりどのプロジェクトを行うかで世界の状況が刻々と変わっていき、参加者全員が行うプロジェクトの結果、2030年の世界が表れていく、という風にゲームが進んでいきます。
最後に振り返りを行い、ゲーム体験と現実世界とを紐づけながら双方向の対話を使って振り返ることで様々な気づきがおこります。2~3.5時間のゲームですがとても有意義な時間を皆と共有します。
■SDGsを企業経営に取り込もう !
2006年に国連事務総長が「企業がCSR(企業の社会的責任)を重視して、地球の長生きに貢献していこうとしているのに、投資家が短期的な投機目的で活動してしまったら地球の長生きが達成できないのではないか。投資家はESG(Environment[環境]、Social[社会]、Governance[ガバナンス])を意識した投資をしましょう」と宣言したことでESGという言葉が生まれ、この宣言に同意した投資家は責任投資原則(RPI:Principles for Responsible Investment)に署名することでESG投資家と呼ばれ、2018年末に世界で2,232機関となり、そのうち日本は68機関で世界10位となっています。
そこで今、SDGsを経営に取り込むことでESG投資を呼び込もうという動きが世界中で起こっています。財務情報だけでなく、非財務情報(無形資産)が企業価値に影響を与える時代になり、SDGsをいかに企業経営に実装するかが重要課題となっています。
環境省が中小企業の目線から編集した「SDGs活用ガイド」は、企業活動に四つのメリットがあると解説しています。
一つ目が「企業イメージの向上」で、経営理念や事業目標を設定するのにSDGsを使って発信すると、社会に貢献する企業として評価が高まります。
二つ目はSDGsを意識した「新たな事業機会の創出」。
三つ目のメリットが「社会の課題への対応」。CSR活動で社会貢献しているだけではなく、ビジネスそのものを通じて社会課題を解決することが求められるようになってきました。
四つ目は「生存戦略になる」。SDGsを使って企業価値を発信すると社会的評価を高め、顧客や人材の獲得機会が広がります。
最近、大企業のトップの講演を聞いていると、その会社の事業・技術・製品がSDGsのどの分野を目指しているか、17の分野に総花的ではなく、重点的にどこに合致した目標設定をしているかを分かり易く説明されています。SDGsが取引条件にもなりつつありますが、お客様や取引先に安心感を与えるものだと感じました。また、これからは漠然とした戦略立案でなく、SDGsという「モノサシ」があるだけで分かり易く戦略立案が出来ます。ぜひ、まだSDGs目標を未設定の企業におかれてはチャレンジしてみては如何でしょうか。
(参考文献)
・EGS/SDGs入門 大森 充 著 2019.6.10発行
・SDGs経営 Vol.2 2019 2019.6.1発行 季刊環境ビジネス別冊
・一般社団法人イマココラボ
Webサイト URL https://imacocollabo.or.jp/
・環境省
Webサイト URL http://www.env.go.jp/policy/sdgs/index.html
■執筆者プロフィール
ヒーリング テクノロジー ラボ 代表 下村 敏和
ITコーディネータ&インストラクター
電話番号:075-200-2701
e-mail:t-shimomura@zeus.eonet.ne.jp
コメントをお書きください