消費税増税に伴う知っておきたい実務対応 / 間宮 達二

 衆参同日選挙の実施と消費税増税の延期の話題も少なくなり、予定通り消費税増税が実施されるのではないでしょうか。そこで、消費税増税に伴い知っておきたいことを以下の通りにまとめました。一度確認してみて下さい。

 

(1) 税率の引き上げ時期

・消費税の税率が2019年10月1日から、8%から10%に引き上げられます。

 

(2) 軽減税率(8%)の対象品目は ?

・飲食料品…対象となる飲食料品とは、食品表示法に規定する食品をいい、外食やケータリング等は対象となりませんので注意が必要です。

 個々の飲食料品について軽減税率の対象となるかならないのか、疑問が多く出ると思いますので、詳しく知りたい方は、国税庁HP「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)」を覗いてみて下さい。

 

・新聞…定期購読契約が締結され、週2回以上発行される新聞で、政治や経済などの一般社会的事実を掲載しているものです。従い、この要件を満たしていれば、スポーツ新聞や業界紙、日本語以外の新聞等も軽減率の対象となりますが、例えばスポーツ新聞をコンビニで購入した場合は定期購読契約ではないので、軽減税率の対象となりません。

 

(3) 「区分記載請求書等保存方式」に変更されます !

 請求書、納品書など取引の事実を証明する書類(以下「請求書等」という)に記載する金額は税率ごとに区分し、複数税率に対応した請求書等(区分記載請求書等)の交付・保存が必要となります。

 

<区分記載請求書等の具体的な記載例>

請求書

 ◯◯御中           ××年11月30日

日付  品名         金額

11/1  米  ※ *1     5,400円

11/1  牛肉 ※       10,800円

11/2  キッチンペーパー   2,200円

    合計         18,400円

 10%対象 *2       2,200円

  8%対象 *2       16,200円

※軽減税率対象 *3

 

*1 対象品目には「※」などを記載

*2 税率ごとに合計額(税込)を記載

*3 「※」が対象品目であることを記載

 

 区分記載請求書等に記載すべき事項は、軽減対象資産の譲渡等であることが客観的に明らかであるといえる程度の表示がされていればよいとされています。具体的な記載方法として、国税庁では3つ例示しています。

 

・請求書において、軽減税率の対象となる商品に、「※」といった記号・番号等を表示し、かつ、これらの記号・番号等が「軽減対象」などと欄外等に表示する方法

(上図のとおり)

・同一の請求書内において、軽減税率の対象となる商品とそれ以外の商品とに区分し、軽減税率の対象となる商品として区分されたものについて軽減税率の対象であることを表示する方法

・軽減税率の対象となる商品に係る請求書とそれ以外の商品に係る請求書ごとに分けて作成し、軽減税率の対象となる商品に係る請求書において、記載内容が軽減税率の対象であることを表示する方法

 

(4) 帳簿の区分経理・記載事項について

 消費税の仕入税額控除の適用を受けるためには、帳簿の区分経理と区分記載請求書等の保存が必要となります。

 

総勘定元帳

仕入                   (税込経理)

2019年 相手勘定 摘要            金額

11 30   現金   ◯◯  雑貨(11月分)   88,000円

11 30   現金   ◯◯  ※食料品(11月分) 43,200円

※(軽減税率対象品目)

 

 帳簿への記載事項は現行の記載事項に加え、軽減税率の対象品目である旨の記載が必要です。その際、軽減税率の対象品目には「※」などの記号を付すなどして上図のように区分経理を行うことになります。

 

(5) 事前準備として

 2019年度の消費税法改正では、単に消費税率が引き上げとなるだけではなく、前述のように実務面での取り扱いも変更されます。10月に向けスムーズな対応をするため、事前に確認・準備を行いましょう。

 

・複数税率に対応しているレジへの入替・販売管理システムの改修をご検討ください。入替・改修に係る経費の一部を補助する「軽減税率対策補助金」の制度もあります。

・消費税軽減税率制度の導入により貴社に影響する取引を整理し、経理担当者への教育の徹底が必要です。

・免税事業者についても、取引先から区分経理に対応した請求書を求められることがありますので、対応したひな形の準備が必要です。

 

 システム変更が伴うことが多くあると思いますが、税率変更対応だけでなく、自動釣銭機など自動化を伴う機械導入の検討も合わせて考える機会としてみてはいかがでしょうか。働き方改革に伴うバックヤードの時間の短縮も大きな会社の課題であると考えますので。

 

<参考>

国税庁HP「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)」:

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/qa_03.htm

 


■執筆者プロフィール

 氏名:間宮 達二(まみや たつじ)

 所属:ひかりアドバイザーグループ(ひかり戦略会計株式会社)

 資格:ITコーディネータ

 e-mail:mamiya@hikari-advisor.com 

 URL:http://www.hikari-advisor.com

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