私の連載では「デジタルトランスフォーメーション(デジタル革命)」というテーマでお話をしてきました。
今回は、デジタルトランスフォーメーションで使われているシステムの特性から考えてみたいと思います。
皆さんもよく知っているamazonのECサイトですが、1年間に何回システム更新をしているかご存知ですか?
なんと
「5000万回」
です.......
読者の皆さんの大多数のところでは多くて年に数回というところだと思います。いまだに購入したあるいは開発してもらったシステムの機能不足で、システムとEXCELを人間がつないでいるといった状態に何年も苦しんでいるところも多いと思います。
その一番の理由は、開発したシステムの構造が1970年代の機械化の時代の発想から脱却していない、すなわち、全体のシステムを一枚岩(モノリシック)で開発してきたことに起因します。
このため、例えばデータベースの項目を追加するだけのことなのに、それを利用している画面や帳票、ロジックなど多方面を修正しなければならず、期間と費用が見合わず、問題点が解決されないままになっているわけです。
これに対して、Amazonや動画配信で有名なNetflixのシステムは、システムを独立して動くたくさんの部品(サービスと呼びます)から構成して構築するようにしています。このサービスは独立した環境で動いているため、サービス単位で修正や機能追加が簡単にできるのです。またこのような環境はクラウドであって初めて可能になったものです。
かつてはamazonのECの画面も一つの画面で記述されていました。しかしながら利用者からの様々な要求に応えるため、一枚岩を早々と捨て、複数のパーツから構成されるように基本的な構造を変更したのです。このような構造を「マイクロサービス」と呼びます。
デジタル化時代のアプリケーションの特徴は、amazonの例にありますように、リリースした時点から変更がスタートすることころにあります。
デジタルトランスフォーメーションの目的な「新たな顧客経験」を提供することにあると、以前の回でご紹介しました。この経営課題の難しいところは、効率化やコスト削減の試みとは異なって、何が顧客に支持されるかわからない、すなわち、仮説検証的なアプローチをとらざるを得ないことです。
そのため、提供されるアプリケーション(製品や顧客サービス)も、顧客の反応を見て迅速に変更できるものにしておかないと、顧客からは無視されてしまいます。
加えて、新たな経験というものも顧客は一度経験しまうと、すぐに次の「新たな」を求めるという性質があります。先のamazonのシステム変更の回数は、このことに極めて迅速に対応した結果です。
このように、デジタル化が進む中で、システム開発の方法もマイクロサービスベースのものへと抜本的な変更をしなくてはならないのです。
もちろん、コスト削減や効率化などの「守り」のシステムは従来方法で良いのですが、生き残りをかけたシステムについては、そのベンダーに依頼してよいのかどうか、しっかりと見極めて頂きたいと思います・
■執筆者プロフィール
氏名:宗平 順己(むねひら としみ)
所属:ITコーディネータ京都 副理事長
Kyotoビジネスデザインラボ 代表社員
資格:ITコーディネータ、公認システム監査人
専門分野
・サービスデザイン(UX)
・クラウド
・BSC(Balanced Scorecard)
・IT投資マネジメント
・ビジネスモデリング
・エンタープライズ・アーキテクチャ などなど
コメントをお書きください