■ はじめに
我が国のノーベル賞受賞者は,2018年現在27名である。ここでは,近年受賞された先生方が,次世代の若者たちに期待する言葉を贈られている。この言葉を咀嚼(そしゃく)し,我が国の次世代を担う若者たちへの期待について述べる。
■ ノーベル賞とは
ダイナマイトの発明者として知られるアルフレッド・ノーベルの遺言に従って1901年から始まった世界的な賞である。物理学,化学,生理学・医学,文学,平和および経済学の「5分野と1分野」で顕著な功績を残した人物に贈られる(出典:ウィキペディア)。ノーベル賞の審査基準は,公開されていないが創造性・独創性などに特に秀でた方々が対象となっている。
■ ノーベル賞受賞の先生方の言葉
我が国の2014年から2018年にノーベル賞を受賞された先生方の言葉はつぎのとおりである。
・2014年ノーベル物理学賞を受賞された3人の先生方
赤崎 勇 先生:
「はやりの研究にとらわれず,自分が本当にやりたいならやりなさい。それが一番だと思う。自分がやりたいことだったら,仮になかなか結果が出なくても続けることができる」
天野 浩 先生:
「信念を持ち,方針さえ間違えなければ必ずできる。あきらめないこと」
中村修二先生:
「米国は,やる気のある,全力で努力する人には最高の場所。若い人はぜひ苦労をいとわず海外に飛び出てほしい」
・2015年ノーベル生理学・医学賞,ノーベル物理学賞を受賞された2人の先生方
大村 智 先生:
「最近感じること。失敗すると沈んでしまう子が多い」
「成功した人は誰よりも失敗した人」
「人まねでは人を超えることは絶対にできない。失敗を恐れるな」
梶田 隆章 先生:
「未知の謎を解く作業に若い人が積極的に参加してほしい」
・2016年ノーベル生理学医学賞を受賞された大隅 良典 先生
「人と違うことを恐れずに自分らしく生きてほしい。日本の若者はそれがとっても苦手だ。疑問や興味を大事に育て,急いで結果を求めず,基礎的な考え方を身につけてほしい」
・2018年ノーベル生理学医学賞を受賞された本庶 佑 先生
「何か知りたいと思う不思議だなと思う心を大切にすること」
「教科書に書いてあることを信じないこと」
「本当はどうなっているんだという心を大切にすること」
■先生方の言葉からの教訓
先生方の次世代の若者たちへの期待は,つぎのような教訓として纏められる。
・本当にやりたいことを見つける努力をすること
・失敗を恐れず挑戦すること
・あきらめないこと
・人と違うことを素晴らしいと思うこと
・世界を訪ね多くの経験をすること
これらの教訓は,次世代の若者たちのみならず,現役世代の方々にも大いに役立つものであろう。
何れの1つを十分に実践・成就しても成功に繋がるはずである。
■おわりに
我が国は,国土が狭く天然資源も恵まれていない。しかし,20世紀には加工貿易を中心に自動車・電気製品などの工業製品を中心に輸出をおこない高度経済成長を遂げてきた。一方,20世紀の終わりから21世紀の初めまで「失われた20年」といわれるように経済成長が鈍化した時期があった。
この鈍化を回復させ良い意味での経済の活性化と国力・国益の向上のためには,次世代の若者たちがこの教訓を糧に思う存分の活躍を期待したい。また,現役世代の方々などは,多様な知見と経験を伝承し,次世代の若者たちが大いに育ち羽ばたく環境を提供されることを期待したい。
■執筆者プロフィール
柏原 秀明 (Hideaki KASHIHARA)
京都情報大学院大学教授,柏原コンサルティングオフィス代表
NPO法人ITC京都 理事,一般社団法人 日本生産管理学会関西支部 副支部長・理事博士(工学),ITコーディネータ,技術士(情報工学・総合技術監理部門),EMF国際エンジニア,APECエンジニア
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