海外での現地体験を満喫できるITサービス / 馬塲 孝夫

●皆様、明けましておめでとうございます。

年が明けて元旦の新聞を見ていると、海外のパッケージツアーの広告が大々的に紙面を飾っている事に気が付きます。それだけ需要が多いのでしょう。筆者も、これまで海外は仕事が中心でしたが、最近は夫婦でのプライベート旅行で、このような商品を利用する事が多くなりました。

 

●その際、現地でオプショナルツアーに参加するには、事前にパッケージ旅行社に申し込んでの出発となることが通例です。現地で時間が空いて何かしたいと思っても、旅行社を通すと、選択できるツアーが少なく、また参加するにしても何時いつまでに申し込んでくれ、現地で申し込む際には参加費を現金で渡してくれなど、不便な事が多く、参加を見合わせる事が多くありました。

 

●ところが、最近、パッケージ旅行社に頼らずとも、簡単に現地のオプショナルツアーに参加する方法を見つけました。現地でスマホを使ってある予約サイトで現地発のツアーを検索し、空きのあるツアーにその場で申し込み、クレジットで決済。バウチャーをメールで発行してもらいツアー集合地点に直接行き、それを見せて参加するというものです。

 

●そのサイトというのは www.veltra.com/jp。日本のベルトラ株式会社が運営しているサイトです。

実はこの会社、昨年12月25日に、東証マザーズに上場を果たしました。国内外の現地体験ツアー専門のオンライン予約サイト運営に特化した、ベンチャー企業なのです。2017年12月期の営業収益は、前期比22%増の約28億円、今期の予想は、約33億円としている成長株です。

 

●同社の特長は、国内外145か国、約5,000社もの催行会社と契約し、13,000以上の現地体験ツアー商品を取り扱うという豊富な商品ラインナップがあること、商品企画、提供、顧客管理等にITを活用していること、更に、旅行関連企業に自社製のB2Cのビジネスインフラを提供していること、などです。

旅行の予約をネットでできるサービスは、各種ありますが、同社は、旅行先での小旅行やレストランでの食事、コンサートその他、現地発の体験サービスに特化した商品予約を専門にしているところが他社との差別化ポイントと思われます。確かに、海外旅行者にリピータが多くなった現在、旅行者にとっては何処の国の都市に行くかより、行って、何をするかという「体験」をますます重視するようになっており、その利便性を提供する事に着目したことは、今風のビジネスモデルと言えましょう。

 

●同社の競争優位性は、「豊富で利便性の高い現地体験ツアー予約サービスの提供」と思われますが、その裏には技術的コアコンピタンスとして、オリジナルの「ベルトラ旅行会社向けプログラム」を開発していることがあります。

同社は、このプログラムを契約旅行会社1,000社以上に導入してもらい、旅行会社が同社の提供する世界の現地発着ツアー約13,000種類を直接顧客に販売できるようにしているので、筆者のように現地で、簡単にツアーの予約ができるわけです。また、ITを活用し、顧客の体験談等のフィードバックをもとに、ニーズを分析し、よりオリジナリティの高い商品企画を現地催行会社と共同開発したり、各社の提供するツアーの空き情報をリアルタイムに確認できる仕組みを構築しています。このようなITインフラを持ち活用する事が、同社の本質的な競争優位性と考えられます。

 

●現在、インターネットやスマホの普及により、「モノ」の商品から、体験による満足感をプロデュースするという「コト」の商品を扱うビジネスが重要になってきたと言われています。

ベルトラ社はその流れにうまく載ったビジネスモデルを構築したわけです。そのサービスの利便性を支えるのが、最新のIT技術の活用です。同社のサービスを利用した筆者の経験から言えば、今後、このようなネットを活用した「コト」サービスビジネスがますます普及・発展していくと思います。しかしながら同時に競争も厳しくなると予想されるため、進展し続けるITの技術革新を積極的に導入し、自社のコアコンピタンスをいかに維持進化させていくかが、今後の生き残りのキーファクタになるでしょう。

 

 最後に、本コラムは特定の会社を取り上げましたが、筆者は同社と利害関係が全くないことを付記しておきます。

 

参考)

・ベルトラホームページ https://www.veltra.com/jp/

・「ホリスティック企業レポート ベルトラ 7048東証マザーズ」(一社)証券リサーチセンター 2018.12.28

・「ベルトラ旅行会社向けプログラム 導入実績1,000社突破」ベルトラ株式会社ニュースリリース 2016.12.15

 


■執筆者プロフィール

 馬塲 孝夫(ばんば たかお) (MBA)

 ティーベイション株式会社 代表取締役社長(兼)株式会社遠藤照明 取締役

 ◆技術経営(MOT)、産学連携、FAシステム、製造実行システム(MES)、生産産情報システムが専門です。

 e-mail:t-bamba@t-vation.com

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