年末年始は会食の機会も増えて「正月太り」という言葉も良く耳にします。今日は自分の健康、そして企業としての健康経営について少し意識を向けてみたいと思います。皆さんは、正月太りをどのように解消・リセットされていますか? 日頃から、運動習慣がある方、運動不足が気になってはいるけれども運動はちょっと…という方、運動しようとは思うけれども忙しくて時間が取れない方、状況は様々だと思います。
1. はじめに、身体活動・運動に関する厚生労働省の記載をご紹介します。
https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b2.html
「身体活動量が多い者や、運動をよく行っている者は、総死亡、虚血性心疾患、高血圧、糖尿病、肥満、骨粗鬆症、結腸がんなどの罹患率や死亡率が低いこと、また、身体活動や運動が、メンタルヘルスや生活の質の改善に効果をもたらすことが認められている。・・・
生活習慣病の予防などの効果は、身体活動量(「身体活動の強さ」×「行った時間」の合計)の増加に従って上昇する。長期的には10分程度の歩行を1日に数回行なう程度でも健康上の効果が期待できる。家事、庭仕事、通勤のための歩行などの日常生活活動、余暇に行う趣味・レジャー活動や運動・スポーツなど、全ての身体活動が健康に欠かせないものと考えられるようになっている。」とあります。
正月太りの話からいきなり死亡率や生活習慣病の話になりましたが、ここで言う、「身体活動」と「運動」についてもう少し説明しておきたいと思います。「身体活動」とはエネルギー消費の増加を伴う全ての活動で、「運動」とは目的をもって計画的に行われる活動、トレーニングやフィットネスなどを言います。
2. 次に「健康づくりのための身体活動基準2013概要(厚生労働省)」をご紹介します。
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002xple-att/2r9852000002xppb.pdf
「18~64歳の身体活動の基準は、3メッツ以上の強度の身体活動を毎日60分(=23メッツ・時/週)。運動の基準は、3メッツ以上の強度の運動を毎週 60分(=4メッツ・時/週)。65歳以上の身体活動の基準は、強度を問わず、身体活動を毎40分(=10メッツ・時/週)、運動の基準はなし」です。メッツとはMetabolic equivalentsの略で、活動・運動を行った時に安静状態の何倍の代謝(カロリー消費)をしているかを表しています。
みなさん、この基準とご自身の状況を照らし合わせてみていかがでしょうか? ちなみに、WHOのガイドラインでは、「3メッツ以上の強度の身体活動を150分以上(≒7.5~15メッツ・時/週)」と日本の基準の約半分です。日本は海外に比べて推奨基準が高いわけですが、日本のガイドラインは(ここでは詳細データは省きますが)、通勤等も含めて1日平均7000歩程度の歩行をしているという調査データを元に考えられています。毎日60分の身体活動を歩数に換算すると約8000歩~10000歩ですので、毎日60分は十分に実現可能であるということでしょう。ちなみに、アメリカでは1日平均5000歩程度ということで日本よりもゆるめのガイドラインになっているようです。日本ではさらに「アクティブガイド」があり、「プラステン +10」いまより10分多めに活動することを推奨しています。
http://www.nibiohn.go.jp/eiken/programs/pdf/active2013.pdf
現状を知り、理想の状態を知り、そのギャップを認識し、どのようにしてギャップを埋めていくのか・・・この機会に意識を向けてみませんか? 平日は忙しいので毎日60分は無理だけど土日にまとめてトレーニングしているという「Weekend Warrior 週末戦士」スタイルでも大丈夫、毎日毎日の頻度ではなく総量が大事です。ガイドライン通りにできなくても日頃から意識して、できることから始めることが大事です。60分の活動は5分、10分のこまめな活動の積み上げでも大丈夫です。毎朝歯を磨くかのように、「運動」と構えずに、身体活動として日常生活の中に取り込み習慣化できればなおいいですね。
3. 具体的な活動手段「スロージョギング」のご紹介
福岡大学では、ウォーキングと同程度のゆっくりしたスピードでジョギングする方法を「スロージョギング」と定義し提唱しています。1分スロージョギングし30秒歩くの繰り返しのリズムがポイントです。これまでは歩いていた時間をスロージョギングに置き換えるだけでエネルギー消費量は約2倍です。直線ではなく8の字を描くようにターンすることで畳1畳分程度のスペース(室内など)でも可能です。体力がない人でも簡便に実行でき、疲れないので長く続けられる点が特徴です。様々な研究データに基づき、ダイエットや体力アップに加え、生活習慣病(高血圧、糖尿病)の改善にもよいことが分かっており、心臓病患者のリハビリテーションなどで利用されています。運動は免疫機能や脳機能を活性化させるため、認知症の予防効果も期待されています。身体活動ガイドライン策定委員の先生方もスロージョギングを実践され評価されています。忙しい毎日での健康維持にスロージョギングを取り入れてみませんか?
4. 健康経営とは
最後は、「健康経営」についてです。「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することですが、この視点からも、企業様向けにスロージョギングのセミナーを実施する機会が増えてきました。個々人がまず自身の健康に対する意識を高めることはもちろんですが、1日のうちの多くの時間を職場などで過ごす人に対しては、労働環境と健康の関係性も重要です。社員向けにスロージョギングセミナーを実施したり、職場にスロージョギングの習慣を導入した企業、事務デスクの椅子をバランスボールに変えた企業、事務デスクをスタンディングデスクに変えた企業、ユニフォームをサポート機能のある素材に変えた企業など、健康経営のほんの一部の視点ではありますが、具体的な方法論を選択し導入する企業も出てきています。経済産業省では、健康経営に係る各種顕彰制度として、平成26年度から「健康経営銘柄」の選定や、平成28年度から「健康経営優良法人認定制度」が創設されていますので、ご興味のある方は以下をご参照ください。
http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/180710kenkoukeiei-gaiyou.pdf
まとまりのない内容となりましたが、個人、そして企業の健康について考える機会となれば幸いです。良いお正月をお過ごしくださいませ。
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■執筆者プロフィール
中川 普巳重(なかがわ ふみえ)
福岡大学 産学官連携センター 産学官連携コーディネーター 客員教授
中小企業診断士、ITコーディネータ、(財)生涯学習開発団体認定コーチ
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