IT業界ではシステムエンジニアやプログラマーといった技術担当が、営業担当と一緒にお客様を訪問することがあります。
また、技術担当者が営業担当者の不足や環境変化によって、営業現場に出ていくことが多くなりました。つまり、技術のことは技術者に話をさせようということが増えてきたのです。
これは、ITコーディネータのようなシステムを提案する場合だけでなく、機械設備や部品、金型といった分野でも同様です。その製品の設計や製造方法について、お客様の言うことだけではなく、こうした方がよりお客様のためになるという提案の機会があります。
この時に必要となってくるのが提案営業です。
提案営業は自社の強みや技術などを使って、お客様のお困りごとを解決することです。したがって自社のエンジニアや設計者が、お客様の企業に訪問し提案するというのは非常に良いことです。自社の技術をよく知っていればいるほど、お客様に対して自社の技術で解決策を提案できるというのが本来の姿です。ただ、お客様の現場に行ったことない技術者や、営業は難しいと考えている技術者にとってお客様の前で話をするというのは非常に敷居が高いものです。
私は技術者が少しの工夫で優秀な提案営業ができると考えています。
今回は簡単に三つのポイントを解説します。
「1.お客様に心を開いてもらい信頼関係を築く」
信頼関係を結ぼうとするのであれば、お客様が話しやすい関係になる必要があります。
そのためには自社の商品や自社の紹介だけでなく、自分自身のことや自分の周りのことなど少しパーソナルな雑談を行います。共通の話題や自分が取り組んでいることなど、仕事と関係ない話を織り交ぜて、お客様が話をしてもらいやすい状況にします。
共通の話題は、天気の話やスポーツの話などが一般的ですが、昨今、老若男女に共通の話題にできるのが「スマートフォンの使い方」です。自分がよく使うアプリや家族とのコミュニケーション方法など、いろいろな話ができます。この時お客様に対してパーソナルなことを無理に聞き出す必要はありません。まずお客様に対して自分のことを話し、それに対してどのような反応があるかということを気にすると、スムーズに行くことが多いようです。
「2.二つ目は、お客様のお困りごとやニーズのイメージを共有する」
お客様のニーズは表面的なものもあれば、解決までに時間がかかりそうなものがあります。また、うまく言葉に出来ない場合や、警戒して答えてくれない場合もあります。
そういうときのためにこちらから話すのではなく、質問を投げかけます。具体的には、「エクセルで帳票を作るときに二重で入力をしていませんか」や「帳票に手書きで業務を進めていませんか」などです。それでも質問を引き出しにくい場合は「他社ではこういう事例がありますが、御社ではこんなことありませんか」という質問も良いでしょう。
このためにも自分の引き出しを増やしておくことが重要です。が、技術者は本来引き出しが多いと思います。
「3.解決方法を提案する」
当たり前なことですが、自社の都合の良い提案だけではなく、お客様のためを思って提案することが大切です。
自社製品がお客様の解決にピタリと適用できるならば良いのですが、できない場合は自社と協業できる会社をイメージして提案するのもひとつの方法です。ポイントは、問題点の共有の後に解決の方向性がお客様と共有できるかと言うことです。そして自社ならこういうことができる、ということを付け加えていきましょう。
ITC京都では、来年1月ごろに提案営業の研修を行う予定です。
メルマガやITC京都のホームページで案内していきます。
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■執筆者プロフィール
株式会社 エムティブレイン http://mt-brain.jp
山口 透(とおる) yama@mt-brain.jp
経営戦略策定、業務改善やIoTを活用した新しいサービスを中心として、大企業から中小企業までの「経営とITと人材育成」のコンサルティング業を行っている。
中小企業診断士、ITコーディネータ、システムアナリスト
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