このシリーズも4回目になりますが、今回はIoTを活かしたモノづくり入門について述べてみたいと思います。なお、ここで取り上げるモノづくりの対象はとは有形物をさし、ソフトウェアのような無形物は含めないことにしておきます。
モノづくりの歴史は、第一次産業革命(蒸気機関による機械化)、第二次産業革命(電力による大量生産)、第三次産業革命(コンピュータによる自動化)を経て今日に至っていますが、近年はIoTやAIによる機械の自律化で第四次産業革命がもたらされると言われています。
国内の産業を見渡しても、必ずと言ってよいほどIoTやAIの文字を目にします。とは言え、IoTの事例や取り組みをあげているのは大手企業が中心であり、国内企業数の99.7%にあたる中小企業ではIoTの利活用はまだまだであり、産業革命と呼ぶにはほど遠いようにさえ感じます。
しかし、産業構造が変わる潮目が来ていることは確かかも知れません。
これまでは、企業が新たな製品・サービス・価値を創造する際、他社に模倣されないように自社だけで(閉ざされた環境で)取り組んできていましたが、近年はオープンイノベーションと呼ばれる組織の枠組みを越えた研究・開発が認知され活発化しています。中小企業(もちろん個人事業主含む)が斬新なアイデアやニッチな製造技術をもっていたとしても、資金力や営業力の差から大手企業の目に留まることはほとんどありませんでした。
しかし、オープンイノベーションにより産学官や異業種との垣根は低くなり活躍の場は開けてきたと思います。
また、これまでは3DプリンタやレーザーカッターなどのIT技術を活用したモノづくりを行おうとしても、その製作機械が高価であり購入のハードルを越えられなかったのですが、ファブラボと言った施設が各地に設立されるようになり(国内で既に20施設)、誰もが簡単に活用できる環境も整ってきています。
そう言った観点では確かに産業構造は変わりつつあるのかも知れませんし、IoTに関わるモノづくりへの挑戦への環境は良くなっていると思います。
では、この変革の潮流に乗るために何から始めれば良いのでしょうか。
勤務先からIoT関連の従事を社命で受けた方以外は、「IoTって言われてもねぇ」と言うのが正直なところかと思います。
私見になりますが、コマーシャルで目にするような大手企業が提供するIoTサービスをイメージするのではなく、先ずは身近なIoTの開発環境に触れてみるのも一つの選択肢だと思います。
最低限の事前環境として、パソコンだけは必要なのですが、インターネットに繋がるパソコンさえあればIoTを活用したモノづくりを体感できます。
厳密に言うと電子工作とC言語に類似したプログラムが必要なのですが、「とりあえず触ってみる。体感してみる」のであれば両方の知識がなくても大丈夫です。
私が実際に使っている(時間がある時に遊んでいる)のは、Arduino:アルディーノと言うマイクロコントローラコンボードとその開発キットです。
【Arduinoをはじめよう 初心者実験 キット 基本部品セット】
なるもので、センサ類だけでも15種類ほど入っていて3,500円程度です。
飲み会1回分の金額で半年は遊べます(笑)
このキットに入っている様々なセンサを付けて実験しています。
実験と言っても、私は、電子工学知識は皆無ですし、プログラムも大昔に汎用機(COBOL)で作成した程度なので、ただ単に本に書かれている通りにセンサを取り付けて(ハンダ付けではなく、ピン形式で取り外し可能です)、インターネット上に公開されているプログラム(スケッチと言います)をそのままマイコンボードに読み込ませているだけです。
LEDを光らせたり、光センサで明るさを調整したり、モーターを動かしたりしているうちに、徐々に実用的なイメージが沸いてきています。最近は少し物足りなくなってきたので通信機能(Wi-Fi)のボードを付加して、IoTチックにスマートフォンでマイコンを操作できるようになりました。このスマートフォンとの連携も、Blynkと言う無料のスマフォアプリで設定するだけであり、もちろん専用の開発なんて必要ありません。このように、興味さえあれば、誰でも簡単にIoTの開発の門をくぐれる時代になりました。
これまでは、即ちArduinoのような安価なマイコンボードが出回るまでは、センサを使ってなにかモノづくりをしようとすると
- 電子回路設計を行い
- 試作品用の基板をメーカーに作ってもらい
- トランジスタや抵抗やダイオードなどをハンダ付けして
動作を確認するのが一般的でした。
制御プログラムも専門家にお願いしなければなりませんでした。
また、モノづくりは試行錯誤して完成していくものですが、ハンダ付けではやり直しがきかず、試行錯誤(プロトタイピング)用に沢山の基板とパーツを用意しなければなりませんでした。
基板の変更が必要になった場合は、あらたにメーカーに作り直して頂かなければならず、コストも時間も大変かかっていました。
しかし、私が体感しているように、Arduinoのような安価なマイコンボードとそのキットの登場により以下のように、プロトタイピング環境は大変大きく変わりました。
- ハンダ付けが不要になり何度でもやり直しができるようになった
⇒ブレッドボードと呼ばれるボードにジャンパー線やセンサを差し込むだけで基盤や回路ができあがる - 設計変更がすぐにできるようになった
⇒ハンダ付けをしないので設計・回路変更が簡単である - パーツが再利用可能になった
⇒ブレッドボードに挿したパーツは抜き挿しできるので全て再利用可能 - 制御プラグラミングが自前で作成できるようになった
⇒インターネット上にサンプルのソースコードが多数公開されており比較的容易に自作できる - インタフェースが標準で搭載された
⇒デジタル入出力端子、アナログ入出力端子、USB端子、SPI、I2Cなど各種入出力端子やインタフェースが標準で搭載されている - 豊富なエディションやシールドが手に入るようになった
⇒Bluetooth、無線LAN、GPSなどを使用したい場合は、それが標準装備されたエディションを選択したり、シールドとして追加実装することができる - 安価で簡単に入手できる
以上です。
読者の皆さんも、プラモデルを作るような間隔でArduinoなどのキットに触れてみてはいかがでしょうか ?
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■執筆者プロフィール
富岡 岳司
ITコーディネータ京都 理事
ITコーディネータ/IoTプロフェッショナルコーディネータ/MCPCシニアモバイルコンサルタント/文書情報管理士/セキュリティプレゼンター/第1種衛生管理者/電気工事士
E-Mail:tomiyan@r9.dion.ne.jp
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