IT/IoTで 新サービスを作るときの注意点 / 山口 透

最近、製造業でIoTを使った新サービス開発をいくつか行っています。

 

IoTの活用は、生産工程の見える化がもっとの多いのですが、次に多いのが新サービスの提供です。

 

新サービスは、コピー機とトナーの関係のように、摩耗や時間により部品が消耗する製品を扱っている製造業でできるサービスです。

少しだけ具体的に言うと、大きな設備の浄水設備とそのフィルターを製造販売している企業で開発しました。

 

ある一定期間か水の使用量に応じてフィルターが消耗します。

利用者は自分の都合でフィルターの交換を、この企業や販売代理店に依頼していました。

 

水の使用量というのは、年間で考えると設備を冷やすために夏季が最も多く冬季は少なくなります。

このためフィルターの交換は、夏前が最も頻繁に行われます。

 

企業側からするとフィルター交換は、年間を通して一定である方が交換要員の稼働率が安定します。

このため、フィルターの交換時期を企業側で知り、「そろそろ交換時期ですよ」という案内を送りたいという要望がありました。

 

この要望を受けて、消耗品が消耗したことをIoTを活用してフィルター交換時期を予め認知するサービスを開発しました。

 

サービスは、ITコーディネーターやシステム開発会社の力を借りて開発することができました。

 

現在、このサービスを展開するために、サービスの販売方法、マーケティングの方法を検討しています。

 

サービス展開時の注意点は、売上単価の決定です。

 

この企業では、これまで製品を製造して販売していたので、コストを積み上げる方法から売上単価を決めて、販売することは難しくはないと思います。

 

しかし、注意するべき点はそのサービスの提供する時のランニングコストです。サービスを提供するためにデータをクラウドに送る通信費用や、収集したデータをクラウドに蓄積して分析するためには、使用料が毎月発生します。

 

これが、ユーザーごとに回収できる金額であれば良いのですが、企業側としては、使用料を想定利用者数で割って、一人当たりまたは1企業あたりの月額サービス料を決めることになります。

 

この時、問題なるのが想定利用者数です。

 

想定利用者数は、優れたサービスであっても最初は当初は少ないことが多いのです。

サービス提供時に、これまで世の中に存在しなかったサービスであればあるほど、利用者はサービスの内容に不安で使うことに躊躇します。

 

このため、利用者も小さく初めて、大きくしていくということを望みます。

 

自社で利用するため、月額利用者数も1ユーザーや数ユーザーから始めると考えます。

 

企業側は想定利用者数は100ユーザーを見込んでにもかかわらず、当初は1ユーザーから初めて試して、徐々に増やしていくので、想定利用者になるまで時間が必要です。

 

仮に、企業側に月額10万円の支払いがある場合は、月額5千円の利用料とすれば、20社集める必要があります。

 

これまで製品を販売していってきた企業にとって、部品や加工品を仕入れて一時的に費用を支払い、販売した時点で売上を回収するというお金の流れでした

 

これがサービス提供の場合は、月額決まった料金を支払い、利用者から月額の決まった金額を回収します。

 

損益分岐となる利用者数に満たない場合は、毎月費用が発生して赤字が続きます。

 

当初は回収できないなくても良いかもしれませんが、何ヶ月かで回収できるかという見込みを立て、我慢できるポイントを見極める必要があります。

 

このような月額利用料のサービスは、モノを販売していた製造業にとっては少しだけ勝手が違うかもしれません。

これらのIT/IoTにまつわるサービスの販売についても、相談を受け付けるITコーディネーターがいますので、お気軽に声をかけてください。

 

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■執筆者プロフィール

 

株式会社 エムティブレイン http://mt-brain.jp

 山口 透(とおる) yama@mt-brain.jp

 

経営戦略策定、業務改善やIoTを活用した新しいサービスを中心として、大企業から中小企業までの「経営とITと人材育成」のコンサルティング業を行っている。

中小企業診断士、ITコーディネータ、システムアナリスト