普段は経営のアドバイザーとして、様々な業種の会社とお付き合いさせていただいています。経営のコンサルティングとは、支援企業の課題を抽出し、その課題解決を支援することです。課題を抽出するために、まず現状を分析しますが、中小零細企業では、企業活動において必要とされる情報が整っていないことがよく見受けられます。経営コンサルの現場でも情報がないことで困るのですが、実際の経営でも現状を把握したうえで、経営の舵取りを行うことは非常に重要です。そのため、中小零細企業であっても、必要な情報について把握できる仕組みが必要です。多くの企業では、粗利までの詳細データは、販売管理システムで、最終利益までは会計システムで把握する形態をとっています。つまり、中小零細企業でも業務をIT化していく必要があると考えています。
そこで今回は、過去の経験から中小零細企業におけるIT導入(会計・販売管理システム)の注意点をまとめました。少しでも参考になれば幸いです。
(1) 社長の必要性への思い
これがなければ、IT導入を進めてもうまくいきません。常に外部の経済環境が変化することに合わせ、企業内部も変化させる必要を感じ常に経営革新を心がけ実践している社長様のリーダーシップが必要です。現場に一時的な、業務負荷が発生するかもしれませんが、社長の旗振りによりIT化導入を成功させます。
(2) 必要な人材が企業内に存在すること
中小零細企業におけるIT導入の一番の問題として、投資資金の問題があります。ですからオリジナルのシステム開発を選択するのではなくパッケージソフトを選択し、どうしても必要な場合にのみカスタマイズを行うことで投資コストを最小限に抑えます。そのためにはパッケージソフトの制約された機能を理解し、最も効率よく運用する方法についてある程度考えることのできる人材が企業内に1人でも存在することが必要です。
そんな人を雇う余裕はないとお考えになる社長様もいらっしゃるかもしれませんが、少人数の会社では専任のIT担当者を置くほど仕事があるわけではありません。営業部門でも経理部門でもパソコンに興味のある方を担当に据えればこと足ります。ただし、業務を理解していることが前提ですので、業務につき理解が乏しければ教育する必要はあります。また、その人のモチベーションが高くなければ、パッケージソフトを業務にマッチさせるための仕組みや仕掛けを考えられるわけがありません。マッチさせるためには業務フローの変更も必要ですので社長のバックアップも必要となります。
(3) 業務に対する評価体制がとれていること(Check&Action)
中小零細企業にありがちなことですが、完了した業務に対して何の評価もしていないことがよくあります。売上が伸びたか減ったかだけに注視し、物販であれば棚卸管理がおろそかになる、またサービス業であれば報酬に対する作業時間の管理(工数管理)ができていないなどです。特に棚卸の問題は重要です。棚卸は企業にとってのリスクの固まりであり、お金と何ら変わりないとの認識が乏しいことがしばしば見受けられます。お金であればきちっと管理するのに、棚卸なら管理しないというのはおかしいのではないでしょうか。
帳票類などの作成についても、時間を掛けて作成しているわりにはその帳票を誰も利用していないことがあります。「何のために作成されているのですか」と質問すると、前の担当者が作っていたからという答えがよく返ってきます。誰もチェックしないムダな帳票作成、いわば未来につながらない作業ほど疲れることはありません。
(4) 専門家のアドバイス
最後に手前味噌になってしまいますが、中小企業にとって決して少なくないIT投資は失敗が許されません。少し経費がかかったとしても、いろいろな導入事例の知識がある専門家の意見を聞くことが成功の秘訣と言えるでしょう。
------------------------------------------------------------------------------------------------------
■執筆者プロフィール
氏 名 間宮 達二(まみや たつじ)
所 属 ひかりアドバイザーグループ(ひかり戦略会計株式会社)
資 格 ITコーディネータ
お問い合わせ mamiya@hikari-advisor.com
HPアドレス http://www.hikari-advisor.com
21世紀に羽ばたく「あるべき姿」の実現に向け、お客様の羅針盤として真の経営改革支援と、事業リスク分野における情報提供、将来に向けての対応策をご提案いたします。
コメントをお書きください