細部の大切さを知りつつバルコニーに立つ / 松井 宏次

皆様 新年おめでとうございます。

2018年も佳き年となりますよう祈念申し上げます。

 

 青い冬空のもとの白い雪景色。そのなかに映える赤い実。その種類は、センリョウ、マンリョウ、ナンテン、クロガネモチ、ピラカンサと数多くあります。寒く乾いた空気のなかで、鮮やかな姿を見せてくれています。

 

 日々の暮らしのなかでも、仕事の場でも、人は、何かを思いつき、何かを決めています。発想や意思決定です。その発想や意思決定に役立つ方法として、数多くのフレームワーク、考え方の枠組みも示されています。

 いっぽうで、枠組みで考える努力とは別に、どこからか浮かびあがったり、舞い降りてきたりする「何か」が、発想を生み出したり、意思を固めさせると感じることもあります。ただし、そうした「何か」もまた、知識の積み重ね、思考の繰り返しの蓄積があったうえで手にすることができると、多くの解説書では述べられています。

 その説明が正しいかどうか別にして、新たな年を迎えた日は、起きてくる感情を大切にして、過ごしてみるというのはいかがでしょう。

 

 さて、今回のテーマは「細部の大切さを知りつつバルコニーに立つ」。仕事や組織に関する話です。

 

■細部の大切さ

 神は細部に宿る。ご存知、全体の構造や構成とともに細部の美しさが重要だと教える言葉です。新しい取り組みの始まりや、ものごとの変わり目では、細かなことより、大局的な捉え方が、まずは大切です。そのうえで、具体的なハードや、ソフトでは、細部、ディティールの品質のつくり込みが欠かせません。

 商品や、店舗、広告物と言った目に見えるもののディティールは、まだ、その品質のありように気づきやすいかも知れません。たったひとつの落ちているゴミ、わずかに曲がって貼られたシール、ひっかかりのある扉、雑に作られた裏板、磨きあげられた床、丁寧に並ぶ商品、ここちよく閉まるドア。そのつもりになれば、いくらでも見つかりそうです。見る目を養えとは、よく教えられたこと。初歩的ですが、少し意識して、クォリティーの高いものを見る機会を増やしていくことを、大切にしたいものです。

 もうひとつ、制度や体制といった目に見えないもののディテールの品質も大切です。理念を共有し、目的を定め、目標を設定して、組織で動く。そのとき、目標に向けての組織の活動を継続させるためには、適切なしくみが整っているかどうかが問われます。例えば、丁寧につくりこまれた勤務の取り決めや評価の制度です。

 

■バルコニーに立つ

 賑わうパーティの喧騒のなか、会場を見下ろすバルコニーに抜け出てみる。

 自分自身の立ち位置を、意識して離れてみるということです。

 組織という集まりのなかでの動きから離れて、全体を見渡して見る。そうすることで、人々がどのように動いているか、また、集まりが外にどう繋がっているかに気づくこと。うまくものごとが運んでいるかどうかに関わらず、バルコニーには、立ってみることが必要です。集団が全体としてどう振る舞っているかも見えてきます。

 組織がかたちづくられるとき、そこには様々な境界があらわれます。バルコニーからは、人の動きや働き方、仕事の流れや滞りを見渡してみるとともに、境界(boundary)を捉えてみようとすることも大切です。

 境界は、縄張りという言葉で表わされることもあれば、役割や責任、影響の及ぶ領域の場合もあります。仕事の始まりから終わりまでという時間の流れもあれば、場所そのものが境界となることも、当然、あります。

 バルコニーからは、定められた組織とは別にグループが作られていたり、部署としての決まりごとを越えて仕事がされている姿も、あらためて見えてきます。

 こうした境界のありかたは、そのまま良し悪しになるわけではありません。ただ、そうした境界があいまいであったり、くいちがっていたりすることが、無用な働き難さを招きがちです。次に向けて進もうとするときにも、良く意識しておきたいことです。

 

 細部を大切にするときも、バルコニーに立ってみるときも、そのときに起きてくる私たち自身の感情に意識を向けることが役に立ちます。美しく感じること、もどかしく感じること、興味深さ、ここちよさ、違和感、安心感。

 感情は、素晴らしいセンサーともなります。 


■執筆者プロフィール

 松井 宏次(まつい ひろつぐ)

 ITコーディネータ 中小企業診断士 1級カラーコーディネーター 焚き火倶楽部京都 ファウンダー

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コメント: 1
  • #1

    坂口幸雄 (水曜日, 03 1月 2018 23:37)

    ナレッジマネジメントとかバランススコアカードのような体系的でコンセプトが明確なものもあるが、視点を変えて、細部を大切にしたり、バルコニーに立ってみる視点も大事だと思う。