まぶしい陽射し、青い空、沸き立つ入道雲。梅雨が空けてしばらくたつものの、まだ、そんな空の景色を見ていない気がします。どちらかと言えば、空がグレーな雲に覆われて蒸されているような街なかの風景。京都の夏はこちらなのかも知れません。
そんなことを言っているうちに、すぐに、五山の送り火、地蔵盆と進み、いつしか秋の気配が漂うように。夏を楽しむにも、少しばかり気合いがいるのかも知れません。
「地域を考えるヒント 拾い集め 1」と題したコラムを書いたのは、2年前の夏。
拾い集めた話のひとつは、「エコノミックガーデニング」でした。もう少し流行り言葉のようになるかと思っていたのですが、今なお、知る人ぞ知る用語に留まっているようです。
それでも、地方が、それぞれの地方としての伸長を目指すこと、大企業誘致型の地域振興とは異なる取り組みを進めることは、いっそう大切になっています。
今回は、少し横から見ての「地域を考えるヒント 拾い集め2」。キーワードは、多拠点居住、社会貢献と事業、クラウドファンディングです。
■多拠点居住
暮らす人や、訪れる人が増えること。地方が伸長していく基本的な条件に違いありません。
そうしたなかで、注目されているひとつが、多拠点居住です。
しばらく前までは、Uターン、Iターンといった移住、定住だけを呼びかけていた地方自治体も、お試し移住などの工夫をしながら、昔ながらの移住、定住にこだわらず、人を呼ぼうという取り組みを始めています。
もちろん、住む環境だけでなく、仕事をどうするなどの課題はあります。そのいっぽうで、「永住するかどうかは別にして、少し住んで、暮らしや仕事を試してみようか」と考える人も、若い世代を中心に増えて来ているようです。
あらゆる世代ではなく、一定の年代の間、暮らし、仕事をすることに適している、そんな地域の設計も求められているはずです。
■社会貢献と事業
事業としては成り立ち難いけれども、世の中の役には立って、社会貢献性が高い。
そんな事業があると、一般にはそう考えられがちです。そんななか、近年、ソーシャルビジネス/コミュニティビジネス(SB/CB)と呼ばれるビジネスのかたちが、経済産業政策のうえでも注目されるようになりました。地域社会の課題解決に向けて、住民、NPO、企業など、様々な主体が協力しながらビジネスの手法を活用して取り組むことを指し、営利企業の活動とは別の形態として捉えられています。
地域での起業、事業の伸長を考えるとき、実は、このSB/CBと、営利企業という区分が、実は、ボーダレスになって来ているという捉えかたが大切です。30歳台くらいまでの若い世代の経営者から「社会貢献と事業を分けて考えたことはありません」という声を聞くことは珍しくありません。SB/CBの経営者かどうかに関わらずです。
■クラウドファンディング
crowd(群衆)(funding)資金調達。金融商品取引法などの規制から、購入型と呼ばれる方式が国内では多くみられますが、クラウドファンディングでの資金調達は急速に伸びています。2014年に制度上の環境整備が行われ、2015年度は前年比68.1%増の363億3,400万円、2016年度では、478億円近くの調達額になったとされています。
乱暴に言えば、アイデアへの賛同者をネットを通じて求めることで、資金集めとマーケティングが同時に進められる資金調達手法が、クラウドファンディング。地域に根ざす事業を始めようというとき、そのアイデアがひとりよがりでは無く賛同者や顧客が得られるか、そして、事業の規模感が適切か、それらの判断ができる仕組みです。しばらくは、メリット、デメリットが洗い出される期間が続くとも言えますが、良いかたちでの定着が期待されています。
補助金を申請し、事業の適切さについて審査を受けて、といったステップを踏むといった方法とは別の、有効な、事業開始のための手段です。
(参考)
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■執筆者プロフィール
松井 宏次(まつい ひろつぐ)
ITコーディネータ 中小企業診断士 1級カラーコーディネーター
焚き火倶楽部京都 ファウンダー
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