先日ものづくり白書 2017 が発表され、経産省は IoT の導入を盛んに進めています。このものづくり白書では、IoT の活用場面をモノづくりのフェーズとサプライチェーンのフェーズに分けて説明しています。前半がドイツから世界に広まっている Industry4.0 の世界で、単なる効率化から HaleyDavidson のように単品を大量生産品と同じタクトタイムで生産させるまでのレベルに分かれます。
後半のサプライチェーンへの活用ですが、残念ながらこの発想では「効率化」を超えた活用を考えることはできません。
皆さんが分かりやすく発想できるようにするために、IoT については、次の 4 つの活用レベルがあることを覚えてください。技術面はクラウドのサービスが整ってきているので心配しなくて良いです。
さて、その活用レベルですが以下の4つです。
1. Monitoring:何が起きているのかを知る
エンジンの温度を知る、機械の振動数を知る、電力消費量を知るなど。
2. Control :集めた情報をもとに制御する
夜中に時速 60km 以上でブルドーザが移動しているので盗まれていると判断してエンジ
ンロックをかける(KOMTRAX の実例です)
故障が起きる予兆を見つけて早めに生産機械のメンテをする(予防保守)
3. Optimization:最適な制御をする
そのビルのエレベータの利用パターンを分析して、待ち時間を半分にする。
(シンドラーのエレベータが実施していること)
4. Autonomy:自動制御
自動車の自動運転が目指しているところです。
今、日本で事例として紹介されているのは、多くが 1. のレベルで、情報を得た後の判断は、人間が行っています。
2. は今でもマイコン制御でいろいろな機会である程度実施できていますが、融通がきかない。皆さんも良くバカなエレベータに出会うかと思います。そこで、集めたデータをクラウドに送ってそこでいろいろな分析を行い、この制御をどんどん賢くしていくのが 3. にあたります。そしてこの賢くする作業にAIを投入し、人手を介さなくても良くなると 4. のレベルに到達します。
このレベルは、顧客や利用者のリターンの大きさ(=利用者の価値提供の大きさ)の違いでもあります。
IoT の事例やニュースを見る時は、この 4 つのレベルを念頭においてみてください。そうすれば、適用企業がその裏でどのような努力をしてきたかがわかります。
いきなり、3. を目指すことはできません。まずは 1. で今まで知りえなかったことを知ることができるようにすることから始めなくてはいけません。
が、その前に最も大事なのは、IoT によってどのような新しい価値を顧客に届けようとするのか、その大方針(あるいは覚悟)を経営者が定めることです。
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■執筆者プロフィール
氏 名 宗平 順己(むねひら としみ)
所 属 ITコーディネータ京都 副理事長
Kyotoビジネスデザインラボ 代表
資 格 ITコーディネータ、公認システム監査人
専門分野
・サービスデザイン(UX)
・クラウド
・BSC(Balanced Scorecard)
・IT投資マネジメント
・ビジネスモデリング
・エンタープライズ・アーキテクチャ などなど
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