新商品・新サービスはスジ・イキ・ピカで / 柏原 秀明

■はじめに

 今日のビジネス活動は,モノのインターネット(IoT:Internet of Things),人工知能(AI: Artificial Intelligence), ビッグデータ(Big Data),仮想通貨(Virtual currency)などに代表される情報通信技術の発展によってその利便性は飛躍的に進化し,様々なビジネスに大きな変革の波をもたらそうとしています。言い換えれば“モノの流れ”,“お金の流れ”,“情報の流れ”および“知識の流れ”は多様で柔軟かつ高速処理ができる仕組み(システム)が矢継ぎ早に提供され,その利便性は飛躍的に向上しつつあります。

 しかし,このことが本来の“ビジネスの基本”を大きく変えるものでしょうか。

 ここでは,ビジネスの基本である新商品・新サービスの“スジ・イキ・ピカ”について振り返ってみます。

 

■スジ・イキ・ピカとは

・スジ(筋)

 ここでいう“スジ”とは,その新商品・新サービスが,将来に向けて“有望であり”,“潜在力が高く”,“センスが良い”などの潜在的な可能性を連綿と秘めているものを指します。

 

・イキ(粋)

 ここでいう“イキ”とは,その新商品・新サービスが斬新なことを指します。すなわち,その発想が極めて新しいことです。本来の意味は,“気質・態度・身なりなどがさっぱりとあかぬけしていて,しか

も色気があること。また,そのさま。「粋な姿」「粋な柄」「粋な店」”と説明されています。

(デジタル大辞典)

 

・ピカ(光)

 ここでいう“ピカ”とは,その新商品・新サービスが持っている1つ以上のずば抜けた特長を指します。

 

■考え抜くことと簡単明瞭な評価項目

 企画活動として新商品・新サービスを提案する場合,色々な評価項目(例)新規性,独創性,市場性,将来性,実現可能性,経済・社会への貢献性,熱意・論理性など,があらかじめ用意され,それぞれに点数がつけられ評価されるのが一般的です。

 ここでの課題は,多様な視点の評価項目を一律に列記し,総合評点で判断することの危惧です。

 言い換えれば,多様な視点の評価項目を設定した段階で,その新商品・新サービスが本来具備している潜在的可能性がかき消され,市場に登場できなくなる危惧です。

 したがって,この危惧を回避するために,新商品・新サービスを企画する最初の段階でこの簡単明瞭な評価項目“スジ・イキ・ピカ”の視点で最大限に考え抜くことが必要です。

 この“スジ・イキ・ピカ”の評価項目は,判断の境界が明確でなくアナログ的で曖昧な部分が存在します。しかし,企画活動においては,このアナログ的な部分にこそ創造的な発想・発見を誘発する素地が内包されていると考えます。

 

■おわりに

 “スジ・イキ・ピカ”は,日本流の商売のコンセプトとして古くから今日に至るまで知る人ぞ知る用語ではないでしょうか。

 21世紀のビジネス活動は,複雑・多様であり一体世間で何が起こっているのかが益々見えなくなってきています。

 インターネットやメディアの膨大な情報から新商品・新サービスの種や糸口を探し求めるのは益々困難になってきています。

 そこで,新商品・新サービスの企画では,最初に,この“スジ・イキ・ピカ”の簡単明瞭な評価項目を用いて種や糸口を探して戴くことをお勧めします。

 

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■執筆者プロフィール

 

京都情報大学院大学教授,柏原コンサルティングオフィス代表

NPO法人ITC京都 理事,一般社団法人 日本生産管理学会関西支部 副支部長・理事,博士(工学),ITコーディネータ,技術士(情報工学・総合技術監理部門),EMF国際エンジニア,APECエンジニア

E-mail : kasihara@mbox.kyoto-inet.or.jp