仕事と育児・介護の両立支援に向けて / 間宮 達二

 ヤマト運輸、三菱電機など大企業において、未払残業代の問題が大きく報道されていますが、大企業のみならず、私どもの関与先様である中小企業においても未払残業代の請求事案が発生しています。

 そのため今年度4月から、就業時間の見直し、ノー残業デイの設定など残業時間を抑制する企業が出てきています。残業の問題は、ムリ・ムダ・ムラを排除し効率的な仕事の方法に改善することが必要ですが、多様な人材を有効活用し企業を活性化させていくことも重要です。

 そこで今回は、子育てや家族の介護をしている従業員の離職を防止し、仕事と育児・介護の両立を支援するために改正された、育児・介護休業法についてご紹介させていただきます。

 

◆平成29年1月施行の育児と介護に関する法改正の概要◆

 

1. 育児休業に関する主な改正点

 

1) 子の看護休暇が半日単位で取得可能に

 子の看護休暇は、小学校就学前の子どもを育てている方が、子どもの病気等で、仕事を休む必要が生じた場合に取得できる休暇制度です。1年に5日(子どもが2人以上の場合は10日)を限度として、取得することができます。

 今回の改正により、1日の所定労働時間が4時間以上の労働者の方は、半日単位で取得できるようになりました。

 

2) 有期契約労働者の育児休業の要件を緩和

 契約社員、パートタイマー等、契約期間に定めのある方も育児休業を取得しやすいよう契約期間の要件が緩和されました。

 1年以上継続して雇用されているという要件は従来通りですが、改正前は、育児休業を申し出た時点で、「子が2歳になるまでの間に労働契約が更新されないことが明らかな方」が除かれていたのに対し、改正後は、「子が1歳6ヶ月になるまでの間に労働契約が更新されないことが明らかな方」について除くとされました。

 

2. 介護休業に関する主な改正点

 

1) 介護の対象者の要件を緩和

 これまで、介護休業の対象となる家族は、配偶者、父母、子、配偶者の父母の他、同居かつ扶養している祖父母、兄弟姉妹、孫とされていましたが、今回の改正で「同居かつ扶養」の要件が無くなりました。

 

2) 介護休業が3回まで分割取得可能

 従来、介護休業は、同一の要介護状態の場合、原則1回とされていました。今回の改正により、対象家族1人について、93日を限度として3回まで、介護休業を取得することができるようになりました。

 また、有期契約労働者の方の介護休業についても、要件が緩和されています。育児休業と同様に、1年以上継続して雇用されているという要件は従来通りですが、「休業開始予定日より93日を経過する日から、1年を経過する日までの間に契約の更新がされないことが明らかな方」が除かれていたのに対し、改正後は、「93日を経過する日から、6ヶ月を経過するまでに更新されないことが明らかな方」について除くとされました。

 なお、雇用保険制度の「介護休業給付金」は、支給率が100分の40から、以下のように引き上げられています。

 

 休業開始時賃金日額×支給日数×100分の67

 

3) 介護休暇が半日単位で取得可能に

 介護休暇は、働きながら、家族の介護をしている労働者の方が、通院の付添等、家族の世話をするために必要な休みを取得することができる制度です。

 対象家族が1人の場合は、1年に5日(2人以上の場合は10日)を限度として取得することができます。

 今回の改正で、1日の所定労働時間が4時間以上の労働者の方は、半日単位で取得することができるようになりました。

 

4) 介護期間中の所定外労働の免除を新設

 要介護状態の家族を介護している労働者の方の負担を軽減するため、所定労働時間を超える労働(残業)の免除を請求することができるようになりました。

 この制度は、介護休業のように93日という上限はなく、介護の必要がなくなるまでの間、請求することができます。なお、残業の免除の請求をする場合は、1回につき、1ヶ月以上1年以内の範囲で免除を希望する期間の初日の1ヶ月前までに事業主に申出をする必要があります。契約社員やパート社員等の方でも、受給要件に該当する場合は、雇用保険制度から「育児休業給付金」を受給することができます。

 なお、「子の看護休暇」、「介護休暇」中の給料については、無給でも構いません。

 

 今回は、育児と介護に関する法改正の紹介でしたが、世間を騒がせている未払残業の問題を他山の石とせず、一度自社の労務規程を再度見直してみる機会とされてはいかがでしょうか。

 

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■執筆者プロフィール

 

氏 名 間宮 達二(まみや たつじ)

所 属 ひかりアドバイザーグループ(ひかり戦略会計株式会社)

資 格 ITコーディネータ

お問い合わせ mamiya@hikari-advisor.com