「オムニチャネル」が小売業復活の鍵になるというお話をしました。日本ではあまりパッとしません。米国ではオムニチャネルは一般化してしまっているのになぜでしょうか。それはオムニチャネルの本質に気が付いていないからです。
そもそもオムニチャネルとは、「どのようなメディアや経路であっても同等の購買体験ができるようにすること」と定義されています。この表面的な点、すなわち店舗で商品が受け取れるようにするというようなことだけを実現しようとして、失敗しているのが日本のオムニチャネルです。
オムニチャネルの先駆けであるMacy'sは真の顧客セントリックを突き詰めた結果、オムニチャネルという手段に行き着いたといっています。日本の場合は手段が先行し、ハートが追い付いていないのです。日本のシステム導入によくみられる「手段の目的化」が、オムニチャネルでもおきているということです。
オムニチャネルの流れは、モノ売りからコト売りへの脱却を意味しています。素晴らしい購買体験という「コト」を売ることで、結果的に「モノ」が売れていくということです。
おなじことが、観光にもあてはまっています。特に中国の方向けの観光は、爆買いのブームは終わり、今はいろいろな体験コースにその人気が移っています。体験をすると、当然のことのように関連商品も売れ行きが伸びていきます。
実は、「IoT」も「モノ」への「サービス」の付加ということで、道具を売るのではなく、道具を使って得られる成果を売ろうとしています。
カーシェアリングの流れも同様のことです。スマホもそうですね。
このように、周りを見渡してみると、実はモノ売りからコト売りへのシフトがどんどん進んでいることがわかります。
ただ、モノ売りからの脱却は、なかなかできるものではありません。冒頭のオムニチャネルを例にとると、Macy'sも苦労した点ですが、オムニチャネルの一番の難しさは、風土改革にあります。ネット事業と店舗事業とが対立している状態ではオムニチャネルは100%失敗します。お客様が最高の購買体験をして頂くにはどうすれば良いかを真剣に考えると、チャネルによる事業区分は提供側の都合でしかないことに気づくはずです。オムニチャネルは、従業員全員が気づきを得るとこからスタートしないといけないのですが、そこをリードできるSIerもコンサルタントもいないのが実情です。
ITコーディネータ京都は、しかしながら、早くからこの流れに着目し、コト売りをデザインする手法である、サービスデザインやデザイン思考の研修に取り組んできました。
3月にこの研修コースを開設しますので、是非ご参加ください。
https://www.itc-kyoto.jp/seminar/#20170304
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■執筆者プロフィール
氏 名 宗平 順己(むねひら としみ)
所 属 ITコーディネータ京都 副理事長
Kyotoビジネスデザインラボ 主宰
株式会社ロックオン 特別顧問
資 格 ITコーディネータ、公認システム監査人
https://www.kyoto-bdl.com/
専門分野
・サービスデザイン(UX)
・クラウド
・BSC(Balanced Scorecard)
・IT投資マネジメント
・ビジネスモデリング
・エンタープライズ・アーキテクチャ などなど
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