1.これまでの内容を振り返って
これまで、Vol.1~Vol.4の4回でデータを収集・分析するためのヒントとなる内容を述べてきた。
Vol.1では、スポーツのシーンでもITを活用してリアルタイムに分析を行い、効果的な戦略策定に活用している事例や、有効な結果を得るために必要となるデータ収集の範囲や想定外データの取り扱いについて考えた。
Vol.2では、「プリウスに乗っている人は運転が乱暴な人が多い」という噂について、直観的な感覚にとらわれるのではなく、事実をいかにして客観的にとらえるかを考えた。また、事実を客観的にとらえるということについて、アンケート調査を例にして、着目するべきポイントについても考えてみた。
Vol.3では、実際に標本誤差を計算することにより、アンケート調査を行った場合の標本数とそのデータの信頼性について、さらに標本を抽出する際の偏りによる影響についても考えてみた。
Vol.4では、集団の特徴を表す方法として平均値が使われることが非常に多いが、平均値だけでは特徴を表せない場合もあることを、簡単な例を見ながら考えてみた。これらの内容については、そこに書かれている程度の基本的な内容であれば、それほど難しい事ではないことを感じていただけたのではないかと思う。しかし、実際のビジネスシーンで見かける発表や報告などを見ていると、このような内容
についてしっかり考えられているのだろうかと疑問に感じさせられる場面に多く出会う。さらに、マスコミなどが報道する内容についても、同様の状況ではないかと感じることもある。
2.これらの知識を身に付けてほしい人
さまざまなデータを分析する立場にある人は、ここまでに述べてきた内容については、基本的な内容として理解するとともに、さらに深い知識をつけてもらいたい。
その分析結果の報告を受ける上司や経営者の立場にある人は、その報告内容を受けて経営判断等を行うのが仕事であるため、これらの知識については部下にしっかり身につけるように指導さえすれば良いのだろうか。
分析結果の報告を受ける立場の人も、結果として表されている数値などを正しく理解するために、これぐらいの知識は最低限もっておいていただきたい。示された数字が誤っているなどは論外であるが、それが正しく導かれているとしても、本当に知りたい情報を的確に表しているかということを考える必要がある。
部下が業務の改善提案を持ってきた場合に、その根拠としてさまざまな分析を行ったうえで、それが最善の方法であると主張しているとする。しかし、ある意見を通すために行った分析結果は、作為的ではなかったとしても、その意見にとって有利になるようにバイアスがかかった内容になっていることがある。
意見の優位性を示す方法としてA案・B案などの比較対象を作って、A案が良いことを数値で示すことがよくあるが、A案に有利な評価になっていたり、A案より優位になる可能性があるC案が比較対象から除外されているようなことはないだろうか。
また、予定通りに事が進まなかった場合の原因分析については、自分たちの行動によるマイナス要因より、自分たちが想定できなかった外的要因のほうを過大評価していたり、自分たちの誤った判断の部分については、分析対象から除外されているということはないだろうか。 特に責任問題の対象となりうる利害関係者が分析を行うと、このような行為が行われてしまう可能性が非常に高い。
このような対応については、人が仕事をしている限り、発生する可能性が非常に高く、上司や経営者の立場にある人は、よく気にかけている内容ではあると思う。そして、これらの状況を指摘し改善を求める際には、分析に関する知識がある程度あれば、的確な筋の通った指示ができるのではないだろうか。そうでなければ、報告内容について隅から隅まで細かなことを指摘して問題点を探るといった、多大な労力を要求されるかもしれない。
3.めざせ! データ分析の達人
部下の報告に対する上司の対応については、説明しやすい例であったのでここでとりあげたが、これらは分析に関する知識を持っていただきたい理由のごく一部である。
やはり一番大切なことは、会社などの組織としての判断を正しく行うために、現状を正確に認識し、そこから導き出される未来の想定が精度の高いものとなるようにすることであろう。そのためには、自分でデータを正しく客観的に理解し、そのデータが語りかけてくる何かを敏感に感じ、その先のデータを予測する力をつけることが非常に重要である。もちろん、自分たちに関するデータだけではなく、ビジネスパートナーや競合他社をはじめ、市場や世界に関するデータについても、自分たちに語り掛けてくる何かがあるのではないかと、常にアンテナを張り巡らせておく必要があるのではないだろうか。
さらに、外部から提示される統計資料などについては、その組織等の主張や利益に対して有利になるように、見せ方が巧妙に工夫されているケースなども多くあるため、それに気付き、事実を正しく認識することができる視点や能力を備えていただければと思う。
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■執筆者プロフィール
池内 正晴 (Masaharu Ikeuchi)
学校法人聖パウロ学園
光泉中学・高等学校
ITコーディネータ
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Makeda Foret (日曜日, 22 1月 2017 15:48)
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Dewey Magby (火曜日, 24 1月 2017 19:38)
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