青い海と空、白い雲。夏のイメージは、今でもそうなのでしょうか。もう少し穏やかな暑さの時代であればこそ、つい思い浮かぶ光景だったように思えます。
猛暑が続くなか、残暑お見舞いの時候に。8月もなかばをすぎると、確かに、朝夕には、どこか夏の終わりが感じられます。
さて、つくるんくんです。
ご存知のかたもいらっしゃると思いますが、経営計画をつくるアプリです。
2015年1月のiPad版に始まり、続いてWindows版。2016年3月にはアンドロイド版が登場。ダウンロード数が10000を越えたのが、2016年の4月とのこと。
サイトの説明によれば、経営計画とは、「企業の事業内容や経営状況を振り返り、将来の事業目標の達成のため、経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報)をどう活用するかを取りまとめたものです。企業にとっては、ビジョンと経営理念を実現するために必要となる、重要な“道具”のひとつです。」とあります。
もしかすると、電車のなかであなたの前でスマートフォンを使っている人は、今、その経営計画をつくっている人なのかも・・・。
ところで、つくるんくんが、ITコーディネータや経営支援に携わる人のなかで、注目される背景に、中小企業に対して「経営力向上計画」を認定しましょうという制度が始まり、それに関連して、つくるんくんも紹介されるようになったという動きがあります。
このアプリ、複雑な内容が組込まれているわけではありません。経営に関する質問に対して順番に答えていくと、最後に、「当社は、食べる絵の具の開発を得意としていて・・・得意先は医薬品製造業と・・・売上の順位は・・・利益の順位は・・・将来は料理の一分野として・・・」といった経営計画をアウトプットしてくれるというものです。
経営計画とひとことで言っても様々で、もちろん業種や規模によってもその有り様は違います。それでも基本は変わりません。中小企業、こと小規模事業者で、経営計画の必要を感じながらも、計画書を書く時間がなかなかとれないと感じられているかたは、つくるんくんをお試しください。業種や業態によっては質問の対象が自社と直接合わず使いづらいかも知れませんが、応用してお使いください。シンプルに基本的なことを質問される、それに回答する。ただそれだけです。
それでも、例えば、商品毎に利益がでている順に数字を入れて並べることを求められたりすると、明確に答えられないという場合があったりもしそうです。
頭の中にはあるけれど、強みを言葉にしろと言われてもなぁ、といったこともあるかも知れません。そのとき、その回答をきちっと埋めていくことが、自社の現状や目標、目標に向けての進め方を確かめることに繋がります。
経営計画の策定で経営者が行き詰まるのは、例えば、現状を定量的に把握できていないかったり、将来のビジョンが描けてなかったりといったことのためだったりします。また、文書や図表にするということが苦手だという事情があったりもします。「把握すること」「構想すること」「表現すること」といったそれぞれの面が、そこにはあります。これらは、いずれも経営者として身につけなければならない課題です。そんななか、まず、こうしたアプリを使ってみることもひとつの方法です。
ところで、一般には、つくるんくんを説明する前に、経営力向上計画や、そのもととなる法律、中小企業等経営強化法について説明されることが、今は多いでしょう。この法律は、これまでの中小企業新事業活動促進法という法律に代わって新しく登場した法律です。
www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/
この法律のスキームは二つ
(1)事業分野別指針の策定
事業所轄大臣が、事業分野ごとに生産性向上の方法などを示した指針を策定
(2)経営力向上計画の認定
中小企業・小規模事業者や中堅企業は、自社の生産性を向上させるための人材育成や
財務管理、設備投資などの取組を記載した「経営力向上計画」を各大臣に申請。認定さ
れた事業者は、様々な支援措置を受けられる。
です。
「経営力向上計画」の認定は、従来からある「経営革新計画」の認定とは異なって、新たな事業の取り組みを行うという要件がありません。例えば、経営計画が本業の深耕であっても対象になります。広く、多くの中小企業が作成し、認定をめざしやすくなったと考えて良いようです。そして、何より、こうした計画は中小企業自らの手でつくることが大切です。つくるんくんのようなアプリが紹介されるのは、その後押しのひとつです。
なお、この経営力向上計画に関連しては、ローカルベンチマークというキーワードもあります。財務指標と非財務指標で構成されたベンチマークです。
www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/sangyokinyu/locaben/
ウェブサイトでもいろいろ紹介されているので、御覧ください。
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■執筆者プロフィール
松井 宏次(まつい ひろつぐ)
ITコーディネータ 中小企業診断士 1級カラーコーディネーター 焚き火倶楽部京都主宰
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