安倍首相が平成29年4月に予定していた消費税率10%への引き上げをを2年半、延期すると表明しました。世界経済が減速・不安定化する中で再増税すれば国内の景気が冷え込むことになるとの判断のようです。消費税率の引き上げを延期してどのような経済対策が行われるか不明ですが、中小企業が節税しながら、もしものときに備えるための中小企業基盤整備機構の二つの制度をご紹介します。
1中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)
中小企業倒産防止共済制度は、取引先事業者の倒産の影響を受けて、中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防止するための共済制度で、制度の概要は下記のとおりです。
・掛金月額は、5,000円から20万円までの範囲(5,000円刻み)で自由に選べ、掛金総額が 800万円になるまで積み立てられます。掛金は税法上、法人の場合は損金、個人の場合は必要経費に算入できます。計画以上に業績がよかった場合の決算対策として掛金の前納をする事も出来ます。
・取引先事業者が倒産したことにより売掛金債権等の回収が困難となったときに、「回収困難となった売掛金債権の額」と「掛金総額10倍に相当する額」のいずれか少ない額の共済金の貸付けが受けられます。
・取引先事業者に倒産の事態が発生していなくても、解約手当金の範囲内で臨時に必要な事業資金の貸付けが受けられます。
・共済契約者は任意に解約することができます。12ヶ月以上掛金を納付していれば自己都合の任意解約でも掛金総額の 80%以上(掛金納付月数が40ヶ月以上の場合は100%)の解約手当金が支払われます。
中小企業倒産防止共済制度は、本来の連鎖倒産や経営難に陥ることを防止するという目的以外に、高齢のためや既往症があるために生命保険に加入出来ない役員の勇退時の退職金の支払に備えるための積立に利用できるほか、業績低迷により資金繰りが悪化したときに任意解約により解約手当金を受け取ったり、貸し付けを受けることにより必要資金を確保することが出来ます。(解約手当金は税法上、法人の場合は益金の額、個人の場合は事業所得の収入金額に算入することになります)
2小規模企業共済
小規模企業共済制度は、小規模企業の個人事業主(共同経営者を含む)または会社等の役員の方が事業をやめられたり、退職されたりした後の生活の備えとなる共済制度(経営者の退職金制度)で制度の概要は下記のとおりです。
・加入できるのは、常時使用する従業員が20人以下の個人事業主やその経営に携わる共同経営者、会社等の役員です。 (宿泊業、娯楽業を除く商業・サービス業の場合は常時使用する従業員が5人以下)
・掛金月額は、1,000円から 7万円までの範囲(500円刻み)で自由に選べます。掛金は税法上、全額が「小規模企業共済等掛金控除」として課税対象となる所得から控除されます。(個人の所得税の軽減)
・個人事業を廃業したり、会社等の役員を退任した場合などに、事由に応じて共済金(解約手当金)が支払われます。
・共済金および解約手当金は、受け取る際の年齢や一括または分割などの受取方法などで税法上の取扱いが異なりますが一般的なケースでの取扱は下記のようになります。
a共済金を一括で受け取る場合・・・退職所得扱い(所得税)
退職所得の金額=(収入金額-退職所得控除額)×1/2
退職所得控除は、勤続年数20年まで 1年間あたりで40万円、勤続年数21年からは1年あたり70万円が控除されます。
b共済金を分割で受け取る場合・・・公的年金等の雑所得扱い(所得税)
公的年金等は、年金の収入金額から公的年金等控除額を差し引いて所得金額を計算します。
c共済契約者が亡くなったために遺族が・・・みなし相続財産(相続税)
共済金を受け取る場合(死亡退職金)
退職金の非課税限度額=500万円×法定相続人の数
・共済契約者は、払い込んだ掛金合計額の範囲内で、事業資金などの貸付けが受けられます。
小規模企業共済の掛金は税法上、全額が所得控除となり個人事業主や会社等の役員の所得税が軽減されます。また、共済金の受取時にも受取方により取扱が異なりますが税制上、大変有利になっています。業績低迷により、金融機関からの借入が厳しいときには貸付を受けることも出来ます。
業績がよいときに節税と称して不要不急の費用を使ってしまうと、企業に利益が蓄積されません。自己資本を厚くし、企業の安定度を高めるためには毎期利益を計上し地道に内部留保していくことが必要となります。当然、法人税等の納税が必要となるのですが、上記の制度を利用することで節税しながら資金の留保が出来ることとなります。
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■執筆者プロフィール
竹内政明(たけうち まさあき)
竹内政明税理士事務所(認定経営革新等支援機関)
代表 税理士・ITコーディネータ
(TKC全国会会員・電子申告、書面添付推進事務所)
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Madeline Palmeri (金曜日, 03 2月 2017 22:46)
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