IoTは我社にも関係あるのか ? / 中川 普巳重

 最近よく見聞きする「IoT」ですが、いまさら「それって何?」とは聞きにくいかもしれないなあと思い、今日はIoTとは何かのおさらい、事例のご紹介、今後どうすればいいのかについて考えてみたいと思います。
 はじめに、IoTとは「Internet of Things」の略で、よく「モノのインターネット」と訳されています。日本語的には、何それ?といった感じですね。パソコンやスマホなどの情報・通信機器だけでなく、いろいろな「モノ」に通信機能を持たせて、インターネットに接続したり相互に通信することにより、自動で何かを認識したり、自動でコントロールできたり、遠隔で計測などを行うことです。
 主婦的な身近な例でいえば、先月、我が家にもスマートメーターがつきまして、これまで毎月来ていた電力会社の検針員さんに代わってこの電力メーターが電力会社と通信して電力使用量を申告する、これもIoTなんですね。
 ここで言う「モノ」は、コンピューターが内蔵されているモノもあれば、無線タグやセンサーなどインターネットとやりとりできるモノも含まれます。今後ますます、身の回りの「モノ」を見て、外から見てコンピューターは見えない、これもつながっているの?と感じることが増えそうです。
 先日、Wi-Fiに接続された鍵、「RemoteLock」(開発元LOCKSTATE社  http://www.lockstate.com)という商品のプレゼンを聞く機会がありました。その中に、最近話題の民泊「Airbnb」での活用事例がわかりやすかったのでご紹介します。私は、創業支援や地域活性化支援を通じて、民泊事業の立上げを考えている人にお会いする機会があります。話の中で課題としてでてくることに、利用者と管理者の間の物理的な鍵の受け渡しをどうするか、合鍵をつくられたらどうするのか、空調などの修理業者への立ち合いはどうするのか、清掃にはいつ入ればいいのか、退室後の空調つけっぱなし、窓開けっぱなしの問題などなどがあります。プレゼンの事例は、これらの課題を、「RemoteLock」を導入し、クラウド上でカメラ、室温計、人感センサーと一緒に管理することで解決するという内容でした。ユーザーごとに詳細なスケジュールが設定でき、物件利用者、清掃業者、修理業者などをどこからでも管理することが可能になります。鍵という「モノ」がインターネットにつながることで、いろいろな価値を付加できるのですね。住居、オフィスでも活用できて、とても大きな市場がありそうです。
 また、株式会社アパマンショップホールディングスのグループ会社である株式会社システムソフトと、インターネットデータセンター事業を運営するさくらインターネット株式会社は業務提携と共同出資を行い、Home IoTに特化したサービス/プロダクトをオープンイノベーションにより企画・開発に取り組む合弁会社「株式会社S2i」を2016年5月に設立、第一弾のサービス/プロダクトとしてスマートロックを提供するという記事を見かけました。賃貸物件を退去すると鍵の交換という作業が発生しますが、この際に従来型の鍵からスマートロックに変更することによって、入居者はスマートロックの機能を利用可能に、物件管理者は先ほどの民泊の事例にもあるような鍵にまつわる課題を解決可能に、サービス提供者は蓄積された情報により新たな価値、市場を見出すことが可能になるのでしょう。

 この鍵(スマートロック)にまつわる2つの話は、ユーザー視点から見たニーズへの対応、企業視点から見たビジネスフローの改善、として捉えることができるのではないでしょうか。「鍵ってすごいですね」という話ではなく、「で、我社はどうすればいいのですか?」ということを最後に考えてみたいと思います。
 IoTは魔法ではなく、ツールです。社会人になりたての頃、中小企業に会計システムなどの業務システムを導入する時に感じたことは、業務プロセスの課題がIT化することで解決する、コンピューターって魔法の箱なんだと思う人がいるんだということです。でもコンピューターはツールです。目的を持って使いこなすものなんです。IoTに対しても同じだと思います。世の中には問題がたくさんあります。これを市場としてとらえ、我社の顧客が抱えている問題は何だろうか、我社のノウハウで対応できる問題は何だろうかと、当たり前に経営戦略を考えることが大事なんだと思います。IT環境の変化はスピードが早く、昔できなかったことが、昔難しかったことが、今では低コストで、もしくは無料で、簡単にできる、などということはたくさんあります。固定概念に囚われることなく、ねばならないも忘れて、こんな風に顧客とコミュニケーションできたら楽しいよね、方法論はわからなくても感覚的に考えてみよう、自分だけで考えていてもアイデアは広がらないので異業種のいろんな世代の人と話をしてみるか、そんな向き合い方が大事だなあと思います。IoTの時代が来ると世の中がガラッと変わりそうな気がしてワクワクします。その世界は、皆さんが目的を持ってIoTをツールとして使いこなすことで作り上げられるものです。
是非、もっと身近なものとして考えてみませんか。
 
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■執筆者プロフィール

中川 普巳重(なかがわ ふみえ)
(公財)京都高度技術研究所 地域産業活性化本部 コーディネータ
福岡大学 産学官連携センター 産学官連携コーディネーター 客員教授
中小企業診断士、ITコーディネータ、(財)生涯学習開発団体認定コーチ