平成27年12月18日の閣議で「ものづくり補助金」「小規模事業者持続化補助金」の実施を含む補正予算案が決定されました。その中に、
「サービス・ものづくり高度生産性向上支援 (補助率 2/3)
IoT等の技術を用いて生産性向上を図る設備投資等を支援」
というものがあります。
一方、ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー 2015年4月号は「IoTの衝撃 」という特集号が組まれており、マイケル E. ポーター教授の「「接続機能を持つスマート製品」が変える IoT時代の競争戦略」という論文が掲載されています。その中ではIoTの事例として、テスラ社の電気自動車やスマホと繋がるIoTテニスラケットが挙げられています。
同じIoTという言葉を使いながら、受ける印象が異なり、皆さん混乱されているのではないでしょうか?
実は、現在IoTには二つの流れがあります。先に挙げた補助金の方は「Industry4.0」と呼ばれ、ドイツのシーメンス社が中心となって進めているスマートファクトリーとでも呼ぶべきもので、工場の中にあるすべての生産機械の状況をリアルタイムで把握し、生産計画を含め、最適な操業をしようというものです。
一方、ポーター教授の論文で紹介されていたものは、原文は
Smart Connected Products
と書かれているように、家電、自動車、ラケットなどなど個々の製品をインターネットにつなげて賢い使い方ができるようにしましょうというもので、GEが「Industrial Internet」として協力に推し進めています。
いずれもインテリジェンスを持った製品をインターネットにつなげるというところをみると同じなのですが、Industry 4.0は自社が保有するいろいろな生産機械をつなぐという所有者の立場、後者のSmart Connected Productsは自社が提供するインテリジェント製品をネットワークにつないで、新しい価値をお客様に提供しようというものです。
ヤマザキマダックさんや森精機さんなどの生産機械は、工場主さんがその操業データなどを利用しようとするとIndustry 4.0に、ヤマザキマダックさんや森精機さんが予防保守などに利用しようとするとSmart Connected Productsという扱いになります。
理論はわかるけど、使うのは難しいのではという考えを持たれているのではないかと思いますが、「Industry4.0」については、SAPを筆頭にいろいろなベンダーさんがたくさんの製品を提供し始めています。Smart Connected
Productsについては、大規模な利用には例えばGEがPredixというプラットフォームを提供し、小規模利用にはAmazonがDRSというサービスを提供し、自社製品を接続するだけで、自らIoTサービスを提供できるようになってきています。
すなわち、Howを考える必要はなく、IoTという舞台を使って、いかにマネタイズするのかを考えれば良いという時代がすぐそばに来ています。
ポーター教授もその論文の中で、この流れをキャッチできない企業や製品は、大きなシステムの一パーツにしかなりえないとまで言い切っています。
皆さんも、自分に関係ないと考えるのではなく、オーナーになるのかサービス提供者になるのかそのスタンスを決め、第一歩を踏み出してください。
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■執筆者プロフィール
氏 名 宗平 順己(むねひら としみ)
所 属 ITコーディネータ京都 副理事長
(株式会社ロックオン 特別顧問)
資 格 ITコーディネータ、公認システム監査人
専門分野
・サービスデザイン(UX)
・クラウド
・BSC(Balanced Scorecard)
・IT投資マネジメント
・ビジネスモデリング
・エンタープライズ・アーキテクチャ などなど
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