女性の活用推進 / 西田 則夫

政府より国・地方公共団体や従業員が300人を超える民間事業主に対し、女性
管理職の割合などの数値目標を設定し、女性の活躍に向けた取組を盛り込んだ行
動計画を公表するよう義務づけるなど、女性の活躍推進に向けた取組を強化する
することが公表されました。また、経済産業省は、東京証券取引所と共同で、2
012年度より女性活躍推進に優れた上場企業「なでしこ銘柄」を選定し、発表
しています。なでしこ銘柄は、東証一部上場企業の中から、業種ごとに、
1)女性のキャリア支援と、
2)仕事と家庭の両立支援
の二つの側面から、スコアリングを行い、各業種上位企業の中から財務面での
パフォーマンスもよい企業を選定しています。
21世紀は女性の時代といっても過言ではなく、国家、企業とも女性の活躍なく
しては成長を持続させることができない時代となりつつあります。しかしながら
まだまだ日本においては、男性社会であり、2012年現在の日本の女性管理職
比率は11.1%であり、米国43.7%、フランス39.4%にくらべ著しく
低い水準にあります。
これは、昔ながらの「男性は仕事、女性は家庭」という概念が根強くあることが
ひとつの要因であると思われます。企業の日本的雇用慣行を支える前提である家
族ぐるみの雇用という背景もあります。
世の中の流れとしてワークライフバランス(仕事と生活の調和)の必要性が主張
されていますが、なかなか実現しないのは、上記の慣行によるものといえます。
私が勤めているITベンダーは、世間一般では、長時間残業が当たり前で、有給
休暇もまともにとれない業種といわれていましたが、この数年前からトップのリ
ーダーシップのもと、「働き方改革」として、月間平均残業時間20時間未満、
有給休暇取得日数20日を目標として働く環境の見直しを実施してきました。こ
のことは、男性社員が主体となった長時間労働の形態からの脱却であり、男性管
理職の意識改革につながるきっかけとなっています。ただ、男性側の本音として
は、「自らリーダーシップを取れる女性は少ない」、「女性は泣いて、扱いが難
しい」などがあげられます。女性側の言い分としては、仕事に個人差はあっても
男女差はないと主張されるようですが、誤解を恐れずに言うなら、男性には逆立
ちしてもまねできない女性には妊娠、出産という崇高な能力をもっています。そ
の期間はやはり男女差は意識しておかねばならないと思います。出産するまでは
過度のストレスはないほうがよいですし、出産後は、24時間といっても過言では
ない、育児に埋没します。流行のイクメンがいかに頑張っても母親のかわりには
限界がありますし、それにまだまだ男性社会中心のため、イクメンになる割合も
かなり低いのが現状です。
実際、私のまわりで幼児を育てている女性社員は、子どもになにかあれば、まず
一番に自分が動かないといけない立場であり、例えば、保育園からの緊急連絡が
あれば、即時に対応するのが女性である母親です。
私が所属する会社では、育児との両立に大きな不安があるという理由などで女性
社員の約7割が30代前半までに離職していました。
そういった特性を理解した上で、女性に活躍してもらうために両立支援制度やフ
レキシブルな勤務形態を可能とする制度の導入を取り組む必要があります。
一つの形態として、従来から導入されている在宅勤務について、いまや各家庭に
導入されているインタ─ネットを活用して、作業内容によっては勤務先とそん色
のないレベルまで実現可能となっています。家庭から、勤務先の自分のPCをネ
ット経由であたかもそのPCを使用しているかのように操作できます。また、内
臓カメラを使用したTV会議も可能であり、自宅がサテライトオフィスになりま
す。
こういった、ITを活用した仕事の形態を取り入れると同時に、合計特殊出生率
は2014年が1.42で私が生まれた1950年台とくらべ1ポイントも低い
状況で、1990年生まれの女性が生涯子どもなしが約40%に達するという情
報のあるなか、できるかぎり子どもも生めて、仕事もできる世の中にしていかな
いと女性活用は掛け声だけに終わってしまうでしょう。
それには、現場の男性管理職の意識改革が不可欠で、管理職向けの研修などで、
経営トップからの女性活用方針を浸透させ、十分な理解を得ることです。さらに
適切なマネジメントによって、女性は男性以上の能力を発揮することが可能であ
ることを周知徹底することです。このことは、管理職は女性のモチベーションを
高めることで、生産性を向上させ業績に貢献することを認識する必要があります。
IT化が進んだことで、補助的業務はコンピーターに任せることが可能となり、
女性にも基幹業務を任せる必要が大いにでてきています。管理職の登用の推進も
含め、女性の特性を理解した上での、活用推進が企業価値を高めるキーワードと
なると思います。

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■執筆者プロフィール

西田 則夫(Nishida Norio)
情報処理プロジェクトマネジャー、ITコーディネータ

マネジメントの経験を顧客満足の向上に役立てたいと思います。