年末・年始に考える税金に関すること / 竹内 政明

 平成27年も残すところわずかとなりました。12月5日付けの日本経済新聞
一面に「パート就労拡大へ補助金」政府「130万円の壁」対策、配偶者控除は
改革先送りという見出しの記事がありました。これはパートで働く主婦がいる世
帯とパート社員を雇用をしている企業にとって大変、興味深いことだと思います。
  このような問題は普段よりよく考えて対応すべきことなのでしょうが、12月
に時間調整で労働時間を減らすこともよくあるようで、年の瀬の繁忙期に人手が
足りないこととなれば、経営者にとっても困ったことになります。これからのた
めに考えておきたい税金のことをいくつか挙げてみたいと思います。

1.主婦のパート収入の税と社会保険料

1)103万円の壁
 主婦のパートの年収(給与収入のみで他に収入がない場合) が103万円以下
の場合、夫自身の所得について配偶者控除38万円が受けられます。また妻本人
の収入には所得税が課税されません。これは、パートの給与収入から給与所得控
除の65万円と基礎控除の38万円との合計額を差し引き、残った金額に所得税
がかかるためです。(103万円を超えても生命保険料控除等の所得控除がある
場合は所得税がかからないこともあります)
 また、パート収入が103万円以下でもその他の収入がある場合、合計で10
3万円を超えると、配偶者控除が受けられないこととなります。例えば、特定口
座で源泉徴収を選択している場合で上場株式等に係る譲渡損失を繰越控除する特
例の適用を受けるために、確定申告をする時等は注意が必要です。
 主婦のパートの年収が103万円を超えていると、夫は配偶者控除が受けられ
なくなりますが、主婦のパートの年収が141万円未満の場合配偶者特別控除を
受けることができます。例えば主婦のパートの年収が110万円以上115万円
未満の場合31万円、115万円以上120万円未満の場合26万円の控除が受
けられます。所得税ではこのように段階的な緩和措置がとられていますが、夫の
会社で配偶者に対する手当が支給されている場合には、その支給基準も考慮して
おく必要があります。 

2)130万円の壁
 パートの年収が130万円以上になった場合、夫の加入する社会保険の扶養家
族から外れ、妻本人が社会保険料を支払わなければならなくなります。
 法律改正により、従業員501人以上の企業では、平成28年10月1日から、
年収基準が130万円以上から106万円以上に引き下げられ、パートなど短時
間労働者に厚生年金・健康保険の適用が拡大され、該当する企業や短時間労働者
は社会保険料の負担が生じることになります。このため日本経済新聞の記事のよ
うな対策が検討されています。

2.相続税

1)遺産の基礎控除額の引き下げ
 遺産の基礎控除額が、平成27年1月から引き下げられ、改正前の6割となり
ました。
 (平成27年1月改正)
 3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
 (改正前)
 5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)
 相続人が配偶者と子供2人の場合、遺産の基礎控除額が改正前の8,000万
円から4,800万円に下がり、相続税がかかる人が大幅に増加することとなり、
会計事務所への相談も増加しています。

2)贈与の利用
 贈与税の非課税制度を利用したり、暦年贈与により相続財産を減少させること
ができますが、贈与を行ううえでの判断材料として、現状での所有財産を把握し
それに基づく相続税額を試算する事が必要となります。

3)生命保険金、死亡退職金の非課税
 生命保険金、死亡退職金は500万円×法定相続人の数までは非課税となりま
す。生命保険については会社により条件は違いますが、高齢でも医師の診査無し
で加入できる一時払い終身保険があります。個人事業主についても小規模企業共
済に加入できる方であれば退職金の非課税枠を利用する事ができます。

3.ふるさと納税

1)概要 
 ふるさと納税は、ふるさとや応援したい地方自治体に寄附をすると、寄附金額
から2,000円を差し引いた金額が、一定限度額まで、原則として所得税・個
人住民税から全額が控除される制度です。

2)改正点等
 ふるさと納税において、所得税・個人住民税から控除できる金額の上限は個人
住民税の所得割額の1 割でしたが、これが2割に引き上げられました。
 また、ふるさと納税による控除を受けるためには、所得税の確定申告が必要で
したが改正により、平成27年4月1日以後のふるさと納税から、寄附先の地方
自治体に寄附の控除申請を要請することで、原則として確定申告が不要になりま
した。
 ご承知の通り、寄附先の特産品等がお礼として送られてきます。12月であれ
ば本年の収入金額も予測できる時期ですので控除額の目途もたてやすいのではな
いでしょうか。

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■執筆者プロフィール

竹内政明(たけうち まさあき)
竹内政明税理士事務所(認定経営革新等支援機関)
代表 税理士・ITコーディネータ
(TKC全国会会員・電子申告、書面添付推進事務所)