平成27年税制改正 / 竹内 政明

 平成27年度税制改正の内、企業経営に関する項目について記載いたします。
本年度改正は大きな改正は少ないものの法人税率の引き下げ、雇用者給与等支給額が増加した場合の税額控除制度の要件緩和など企業の税負担の軽減が図られています。

1法人税率の引き下げ

1) 税率を23.9%に引下げ
 法人税の基本税率が23.9% (改正前25.5%) に引き下げられます。これにより、地方税を含めた法人実効税率 (標準税率) は改正前の34.62%から32.11% (▲2.51%) に下がります。

2) 中小企業に対する軽減の特例措置の2年延長
 中小企業 (資本金1億円以下の法人) の場合、所得金額年800万円以下の部分に対し15% (本則19%) に軽減されている特例措置が2年延長されます。同様に公益法人等及び協同組合等の軽減税率の特例 (所得金額年800万円以下の部分:15%) も2年延長されます。

 中小法人の場合、以前より年間の所得金額が800万円以下であれば税率は前年と変わらないことになります。 (特例措置が延長されなければ本則の税率19%となるところでしたので4%の軽減とも考えられますが) 
 中小企業の所得金額は、社長等の役員報酬の額により大きく変動することとなります。役員報酬は役員の給与所得として役員個人に所得税等が課税されます。
 平成25年より給与所得控除の上限が245万円となり平成28年には230万円、平成29年より220万円に上限が引き下げられます。また、所得税の税率は分離課税に対するものなどを除くと、5%から40%の6段階 (課税される所得金額1,800万円超は40%) から、平成27年分以降は5%から45%の7段階 (課税される所得金額4,000万円超は45%) となります。課税される所得金額が4,000万円を超える方は小規模事業者ではなかなか少ないと思いますが、給与収入が1,500万円を超える方は結構いらっしゃるのではないでしょうか。
 例えば平成27年の給与収入が1,500万円であれば給与所得控除後の給与等の額は1,255万円 (1,500万円-245万円) となります。所得控除 (社会保険料控除や扶養控除) の合計が300万円とすると課税される所得金額は955万円となります。900万円を超える所得金額には33%の税率による所得税と平成49年までの各年には復興特別所得税 (2.1%) が課されるとともに住民税10%が課されます。役員報酬の額を決定するに当たっては、中小企業とそのオーナー社長個人の税負担をトータルで考え、法人税、所得税の税率に変更があった場合には再度検討することも必要となります。
 役員報酬 (定期同額給与) は毎年所定の時期に改訂を行うことが必要で、事業年度途中で改訂した場合には、原則的には一部が損金算入できないこととなっています。経営計画を策定し十分検討の上報酬額を決定することが必要です。

2 雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除制度の整備
 
 従業員の給与等の支給額を一定以上増加させた場合に、増加額の10%を税額控除できる制度 (法人税額の20% (中小企業者等以外は10%) を限度) の雇用者給与等支給増加割合の要件について、次のとおり引き下げられます。

1) 中小企業者等 (資本金1億円以下) 又は中小連結親法人及びその連結子法人平成28年4月1日以後に開始する適用年度について、基準年度 (平成24年度) と比較して3%以上 (改正前5%以上) 増加とする。

2) 1)以外の法人
 平成28年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始する適用年度について、4%以上 (改正前5%以上) 増加とする。
 
 この制度は雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除制度 (雇用促進税制) との選択適用となります。
 雇用促進税制のようにハローワークへの事前手続きは不要となっています。
 この制度を適用する場合、新規採用者や退職者等は除いた継続雇用者により適用を判断しなければならないため、従業員数によっては確認作業に多くの時間を要することとなりますので申告期限までに余裕を持って資料作成することをおすすめします。

3 受取配当等の益金不算入制度の縮減
 法人から配当金を受けた場合、その全部又は一部を税法上益金に算入せず、法人の税負担を緩和する制度について、益金不算入の対象となる配当金の元本である株式の保有割合が次のとおり改められます。
 
 保有割合  不算入割合    保有割合     不算入割合
 
 25%以上     100%   →  3分の1超      100%

 25%未満    50%     5%超3分の1以下   50% 

                  5%以下        20% 

 保有割合によっては受取配当金に対する課税が強化されます。

 上記改正の詳細、その他の改正については国税庁のHPにてご確認ください。

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■執筆者プロフィール

竹内政明(たけうち まさあき)
竹内政明税理士事務所(認定経営革新等支援機関)
代表 税理士・ITコーディネータ
(TKC全国会会員・電子申告、書面添付推進事務所)