筆者は、現在大学院で経営学を学んでいる。カリキュラムのなかで、毎週、企
業の社長を招き講演していただいている。今回は前期に続き後期の授業のなかか
ら数社を選び紹介する。
(1)農業組合法人伊賀の里モクモク手づくりファーム
設立:1988年5月、従業員数:正職員142人・その他約900人
出資金:3,800万円、売上高:50億円
代表者:木村 修氏、会員制度:約4万世帯
事業内容:米、野菜、果樹、しいたけ等の生産。酪農、牛乳、ジェラートなど
の加工、ハム・ソーセージ、地ビール、豆腐、パン、洋菓子、和菓子の製造、
農業公園の運営(手づくり体験教室、物販、飲食、宿泊、温泉等含む)、食育
事業、通信販売、直営物販店、直営飲食店
当社は、自ら生産し加工し販売する。1次産業から3次産業まですべてを行
う「6次産業」を実践する新しい農業に挑戦している。具体的には、農業や酪
農から、ハムや地ビール、パン、などの加工を手掛け、そしてその製品を直営
店舗や、直営レストラン、会員制の通信販売などで販売を行う。そのすべて
を自分たちで行う新しい産業のカタチを展開している。その他、ファクトリー
ファーム(農業公園)の運営なども行っている。
その原点は『農業』である。当社は、「食」と「農」を通じて「知る」「考
える」輪をもっと広げるために挑戦を続けている。
21世紀の農業は農産物をつくるだけでは成り立ってはいかない。バリュー
チェーン全体を農業としてとらえることが必要とする。今後は、原料がみえ、
作り手がみえ、農がみえる。そして、顧客に理念・哲学を共感してもらう、考
え方を売る時代となる。価格の競争から価値の競争へ。当社は、体験を通じて
食育を行い価値を伝えていくとする。
http://www.moku-moku.com/index.html
(2)株式会社ユーグレナ
設立:2005年8月9日、資本金:47億9068万8540円
本社:東京都文京区本郷七丁目3番1号東京大学本郷キャンパス内
売上高:2013年9月期20億91百万円
従業員数:2013年5月1日現在43名
経営理念:人と地球を健康にする
経営ビジョン:バイオテクノロジーで、昨日の不可能を今日可能にする
事業内容:ミドリムシを用いたヘルスケア事業、原料販売、OEM提供
当社は、2005年12月に世界で初めて微細藻類ユーグレナの屋外大量培
養に成功した東京大学農学部発ベンチャー企業である。社名であるユーグレナ
ーはミドリムシのことである。
ミドリムシは体長わずか約0.05mmという小さな微生物(藻の一種)。
動物と植物の両方の性質を備えているミドリムシは、ビタミン、ミネラル、ア
ミノ酸、不飽和脂肪酸など、実に59種類もの栄養素を備えている。このよう
な高い栄養価を誇るミドリムシは、先進国の人々にとっては日々の食生活で足
りない栄養を補う栄養補助食品やサプリメントとして頼りになる存在である。
また、発展途上国などで微量栄養素の不足に苦しんでいる人々に向けた食料援
助の素材として、ミドリムシは大きな手助けとなりうる可能性を持っている。
また、ミドリムシは、光合成によって二酸化炭素を固定して成長する時、油
脂分を作り出しており、これはバイオ燃料の元として利用可能である。特にミ
ドリムシは、微細藻類の中でも抽出・精製されたオイルが軽質であるため、ジ
ェット燃料に適している。
現在はヘルスケア事業で収益を上げ、その収益をエネルギー・環境事業へ投
資をしている。
http://www.euglena.jp/
(3)株式会社レアジョブ
設立:2007年10月、資本金1億8160万円
住所:東京都渋谷区桜丘町12-10 渋谷インフォスアネックス4階
代表取締役社長:加藤 智久
事業内容:オンライン英会話サービス事業
当社は、Webとフィリピンの講師を組み合わせるといるビジネスモデル
を構築したことで成長している企業である。具体的には、スカイプを使って
1レッスン25分129円から、マンツーマンの英会話レッスンを低価格で
提供している。公用語が英語である優秀なフィリピン人講師約3,000名
と契約し、日本の顧客のニーズを汲み取り学習システムを提供している。
http://www.rarejob.com/
(4)そうじ、5Sを考えるートイレ掃除で会社が変わるのか
企業ではないが、「トイレ掃除の経営学」の著者である日本大学経済学部
大森信教授の講演を紹介する。
a)大阪商工会議所でのアンケート結果の報告から
効率化・コスト削減や安全性向上、売上向上、耐久性向上、チームワー
ク向上、モチベーションの効果があった。
耐久性向上は、自分達で掃除したからきれいに使い、また、売上は、
愛社精神やチームワークもあって伸びたと指摘できる。掃除を徹底してい
る会社は、立ち振る舞いが違う。ムリ、ムダ、ムラがなくなる直接効果だ
けでなく、掃除をする人が企業にもたらす間接効果がある。
b)『トイレ掃除の経営学』で伝えたかったこと
5Sに注力する企業であるほど、企業内に知識創造のための前提となる
多様な知を、備えることができる。従業員の変化として、掃除の経験年数
によって、他力と利他の精神を備えた従業員へ変化する。
組織の変化として、問題処理力の向上、問題発見力の向上、受容力の向
上、他力の向上などがある。その結果、設備が長持し、完成品の不良品率
が低くなる、離職率が低くなる効果がある。
トイレ掃除は、楽しくはないが、一生懸命にやる精神を生成する。
新入社員が掃除をすることで、企業の求める規律や手順を身に付けよう
とする他律性の精神と、自力と利己の精神、自分に自信をもつようになり、
自分のために自らを高めようとする。
企業には規律性があり、しかも自発性も高い人材を育成できる。さらに
他律性と自律性の両方を備えた人材を育成できる。個人には、居心地の良
い職場環境を持てることともに、自信や充実感がもてることを挙げる。
掃除は職位間や職能間の交流を促進する。
今まで、経営学が5Sに注目してこなかった。トイレ掃除のような習慣
を保持しておくことで、様々な知識が備わっていく可能性が高い。
掃除は多くの企業に導入できる活動であり、組織の集団凝集性を高め
(企業全体の一体感)、組織にとって拠り所となる行動になる。
c)今後の研究は、トイレ掃除が、会社にとって、働く人にとって、どうい
う意味を持っているか。学術的に位置づけるのにどんな理論があるのか、
研究を続けている。
以上の他に、株式会社手塚プロダクション、ブランケネーゼ株式会社、株式会
社グロービス・キャピタル・パートナーズ、株式会社TCD、シナジーマーケ
ティング株式会社、株式会社シグナルトーク、株式会社大広、株式会社マイズ
などの企業にご講演いただいた。
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■執筆者プロフィール
クリッジナリティー 代表 米田 良夫
中小企業診断士、ITコーディネータ
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