クラウドの考え方を改めましょう / 宗平 順己

 2014年2月25日に日経ITProに以下のような記事が掲載されました。
「丸紅がアマゾンへ全面移行 プライベートクラウドは更新せず
 (中略)
 丸紅が2014年4月から、米アマゾン・ウェブ・サービスが提供するIaaS(イ
ンフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)である「Amazon Web Services(A
WS)」への全面移行を開始する(図)。本社だけでなく全世界のグループ会社も
含めて、業務システムの全ITインフラをAWSに移行する計画で、最終的にはグルー
プ全体で500台のサーバーをAWSに移す考えだ。丸紅のような大企業がAWSへの全面
移行を決めるのは異例のことである。」
 2013年度は、この他にも以下のような大手企業が基幹システムのインフラとし
てAWSを採用したという記事が賑わいました
・ミサワホーム:
 人事システム、会計システム、営業支援システムなどをAWS上で稼働
・東急ハンズ:
 ECサイト、POSサーバーを皮切りに全社システム全てをAWS上で稼働
・ケンコーコム:
 SAP ERP本番環境をAWS上で稼働(2012年より)

 上記のミサワホームの例では、コスト面で見ると、オンプレミスと比べると5
年間のトータルコストで 20~40 % 程度、運用コストは 40 % 程度のコストダウ
ンが見込まれているということです。
 一部の機能でクラウドを利用するというケースは多く見られたのですが、サー
バーの自社保有をやめて、全面的にAWSに移行したということで、これまでとは
様相が異なっています。
 読者の多くの皆さんはAWSは個人や小規模利用者向けのパブリッククラウドサ
ービスと考えている方が多いと思いますが、実はその考え方は間違ってきていま
す。AWSが提供しているのは、VPC = Virtual Private Cloudサービスというもの
で、AWS上に自社専用の仮想データセンターを保有できるサービスです。ただし
ハードウエアは専用ではないため、前述の様な大幅なコスト削減ができるわけで
す。加えて、グローバルなBCP、バックアップ環境を構築することもできるので、
自社で保有する必要性を感じなくなってきたということで、今多くの企業が、
AWS-VPCをインフラとして採用する動きが強くなってきています。
 このような状況にあわせて、国内のデータセンター事業者も「AWS互換」を謳
うところが増えてきています。当社のデータセンターサービスを使えば、必要に
応じて、AWS-VPCも移行処理をせずに使うことができるというもので、やはり自
社の資産を持ちたいという企業のニーズにも応えようというものです。
 以上の様に、クラウドの状況は大きくかわっています。もし、古い考え(2年
前の知識でも古いのです)のままであるならば、今一度、知識をリフレッシュし
て、自社のIT環境を見直されることをお勧めします。

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■執筆者プロフィール

氏 名 宗平 順己(むねひら としみ)
所 属 (株)オージス総研 取締役執行役員 技術部長
資 格 ITコーディネータ、公認システム監査人

専門分野
・クラウド
・BSC(Balanced Scorecard)
・IT投資マネジメント
・ビジネスモデリング
・エンタープライズ・アーキテクチャ