多様化するSNS-人々がつながりに求めるモノ- / 藤原 正樹

 SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)は、私たちの社会に定着しつつ
あります。2004年のMixi(ミクシー)のサービス開始以来、多くのSNSが登場し
てきました。
ショートメッセージ(つぶやき)のTwitter、11億人の会員を擁するFacebook、
写真共有のPinterest、Instagram、クローズドなSNSであるLINEなど、いろいろ
なタイプのSNSが誕生してきました。
 これ以外に、地域交流のためのSNS、企業内コミュニケーション用の企業内SNS、
趣味仲間のSNSなど、SNSの種類、用途は拡大しています。他方、一部のSNSは使
われなくなったり、淘汰も進んでいるようです。
 
 時代の変化と共に、流行り廃りはこれからもあると思いますが、SNSというコ
ミュニケーションツールは、無くなることなく私たちの社会に定着していると思
います。

 今回は、SNSのこれからについてお話しします。人々はSNSに何を求めているの
か、これからSNSはどのように変化していくか、今後私たちの社会にどのような
影響を与えていくかを考えていきたいと思います。

 本題に入る前に、1点、用語の定義を確認しておきます。
SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)、ソーシャルメディア、ソーシャ
ルテクノロジーなどいろいろな呼び方がありますが、このメルマガでは、「人と
人とのつながりを促進・サポートする、コミュニティ型のWebサイト」(出典:
e-Words)という意味で使用します。このような新しい用語は、人によってとら
え方が違うことが多いです。ちゃんとその意味を確認してから議論しないと、意
見交換があらぬ方向にむかう危険性があります。

■ オープンからクローズドへ

 SNSは冒頭で述べたように、多様化が進んでいます。それを表現する一つのキ
ーワードが”オープンからクローズドへ”です。
 オープンなSNS代表は、Facebookです。ネットでは匿名という傾向が強い日本
社会でも昨年には利用者数が2千万人を突破しました。実名制のSNSとして定着
しつつあります。

 他方で、2011年からLINEという新サービスが登場しました。日本発のこのサー
ビスは、昨年には全世界の利用者が3億人を突破し、日本国内でも5千万人が利用
しています。このサービスの特徴は、携帯電話番号というきわめて親しい人と人
とのつながりがベースになっていることです。

 FacebookとLINEは、対極にあるサービスといえます。
Facebookは、大学の同窓会名簿から生まれたように、オフィシャルな人と人との
つながりという特性があります。学生時代に始まり、仕事や趣味によるつながり
など、比較的緩く広いつながりを維持するのに適しているSNSであるといえます。

 LINEは東日本大震災の直後に誕生しました。
これからは家族や恋人などごく親しい人間関係を重視する傾向が強まるとの予測
に基づき、LINEのサービスは開始されました。予測は的中し、若者を中心にLINE
のサービス利用者は急速に拡大しました。

 一部の識者は、10代を中心とする若者のFacebook離れという現象を捉えて、
Facebookの衰退が始まったと主張されていますが、それは間違いだと思います。
10代から20代前半までの若者(特に学生)は交際範囲が狭く、少数の友人と緊密
な関係を維持しようとする傾向があります。そのような若者にとってFacebookは
”居心地の悪い”空間だといえます。これが社会人になると、仕事や趣味など人
間関係が重層的になり、Facebookのような緩やかなつながりを指向するようにな
ります。

 オープンからクローズドへの流れというのは、オープンなSNSが衰退し、クロ
ーズドなSNSに取って代わるという意味でありません。SNSの利用目的によって、
SNSを使い分けるように変化したことに他なりません。

■ これからの流れは、ビジュアル化とプライベート化

 ITジャーナリストの佐々木俊尚さんによれば、これからのソーシャルネットワ
ークは、モバイル、ビジュアル、プライベートがキーワードになるそうです。

 モバイルというのはいうまでも無いと思いますが、ビジュアル化というのはSNS
のトレンドになりつつあります。文字中心のSNSに比べて、写真や動画は圧倒的
な情報量と訴求力を有しています。InstagramやPinterestなどの写真・動画共有
サービスは、個人間での共有に止まらず、企業のマーケティングツールとしても
注目されています。

 次のプライベート化というのはちょっとやっかいな点で、プライバシーの保護
とも関係してきます。ネット上ではすべてオープンで個人の秘密を守るなどとい
うのは不可能であるという議論があります。確かに、ビッグデータの時代では個
人は”歩く情報発信源”となっており、その個人特性をとらえるのは容易になっ
ています。
 他方で、同じ友達ネットワーク上に実世界のすべての人間関係が反映されてし
まうのは居心地の悪さを感じるものです。例えば、facebookの同じ友達リストの
中に自分の家族と不倫相手がいたりすると、かなり居心地の悪い空間になってし
まいます。

 もともとSNSというのは、インターネットというフルオープンな世界の中に、
クローズドな空間を作り出し、そこでプライベートなコミュニケーションを可能
にしたものです。初期の頃は、用途も限られていたため、新しいバーチャルな人
と人との関係を作る空間として支持されてきました。そのSNSが成長し、参加者
の数と共にその利用目的が多様化してくると、新たな課題も見えてきます。

■ SNSはこれからどう変化していくか!?

 今回のテーマへの解は、タイトルの通り”多様化”しながら成長していくこと
になると思います。実世界における人間関係が、家族、仕事関係、趣味の関係、
学生時代のつながりなど多様であるように、バーチャルなコミュニティであるSNS
も利用目的に応じて拡大し、そのコミュニティに応じた”人格”を使い分けるこ
とになるでしょう。
 いずれにせよ、実世界の人のつながりに比べ、その広がりと継続性に特徴のあ
るバーチャルコミュニティは、多様化しつつ拡大することになるでしょう。

<参考文献>
・LINEやSnapChatはFacebookを叩きつぶすのか? 
 佐々木俊尚の未来地図レポート Vol.277
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■執筆者プロフィール

藤原正樹(フジワラ マサキ)

NPO法人ITコーディネータ京都 理事
公立大学法人 宮城大学 事業構想学部 教授
博士(経営情報学)
中小企業診断士 公認情報システム監査人(CISA)