1.Windows XPのサポート終了
オフィスや家庭で使用されているパソコンについて、OS(基本ソフト)に
Windows XPが使われているものが、まだ多くあるのではないだろうか。
Windows XPは2001年に販売が開始され、後継のWindows Vistaが2006年に
販売が開始された後も、使い勝手の良さなどの理由により、ビジネス利用を中心
に数年間出荷が続いていた。Microsoft社の製品の場合、通常は販売開始後10年
程度でサポート期間が終了となるのであるが、販売開始10年後においても数多く
利用されているという状況を勘案して、特別にサポート期間が延長された。しか
し、この延長されたサポートが2014年4月に終了するのである。
ただ、OSのサポート期間が終了することにより、パソコンが突然使えなくなる
ことはなく、見た目では何事もなかったかのように、使い続けることができるだ
ろう。
2.Windows XPを使い続けるとどうなるのか
Windows XPのサポートが終了することにより、Microsoft社より新しい更新プ
ログラムが提供されなくなるため、コンピュータウィルスなどの不正なプログラ
ムによって機密情報の漏えいや、他のコンピュータへの攻撃や不法行為を行う目
的でパソコンを乗っ取られるといった危険性が増大する。このことにより、自分
のパソコンが被害にあった場合、自分は被害者であると思われがちであるが、他
社との信頼にかかわる情報が漏えいしたり、攻撃によって他のコンピュータに被
害を与えてしまうことにより、他の人へ多大な被害を与えることもある。もちろ
ん、ウィルスの作成やコンピュータの乗っ取りなどを行った者が、加害者として
罪などに問われることは間違いないのであるが、十分なセキュリティ対策を行っ
ていないために機密情報などが漏えいした場合は、重要な情報を扱うことに対し
ての対策が不十分であったことに対して責任を問われる可能性もある。
これ以外にも、新しいソフトウェアがWindows XPに対応されなくなるため、
そのソフトウェアを使用することができないといった状況も考えられる。また、
Windowsなどの基本ソフトだけでなく、ExcelやWordなどのアプリケーション
ソフトについても、10年以上前に発売されていたMicrosoft Office XPなどはサポ
ートがすでに終了しており、不具合などが新たに見つかった場合の対応がされな
いだけでなく、最新のOfficeソフトとのデータ互換性が保証されなくなるなどの
問題が発生する可能性ある。これを回避するために最新のOfficeソフトを導入し
ようとしても、それらはWindows XPで動作しないのである。
3.Windows XPを使い続けるための対策はあるのか
コンピュータウィルスなどの不正プログラム対策については、いくつかのウィ
ルス対策ソフトを販売している会社から、あと数年間はサポートを継続するとい
う方針を打ち出している。これを活用することにより、当面はWindows XPを使
用し続けることについての安全性が担保されると思われることがあるかもしれな
い。しかし、パソコンを保護するためには、ウィルス対策ソフトだけでは不十分
であり、新しいOSに移行完了するまでの一時的な措置と考えるべきである。
ウィルス対策ソフトは、世間に出まわっているコンピュータウィルスに対して
対処療法的に侵入を防止し、万一侵入した場合に被害を最小にとどめる働きが中
心なのである。パソコンとコンピュータウィルスの関係を人間とインフルエンザ
ウィルスの関係に例えると次のようになる。
パソコンのウィルス対策ソフトはインフルエンザ感染を防止するために、マス
クをしたりワクチンを事前に注射しておくことに加えて、万一体内にインフルエ
ンザウィルスが侵入した場合に、それを無力化するタミフルなどの抗ウィルス薬
のようなものである。マスクやワクチンなどでインフルエンザ感染に対して一定
の効果は認められるが、新型ウィルスの蔓延などに対しては、完全に封じ込める
ことが難しいのである。
Windowsの更新プログラムは、免疫機能に例えることができる。人間の免疫機
能がさまざまな新しいインフルエンザウィルスや環境変化に対応して、防御機能
を高めていくのと同じように、新しい更新プログラムを適用することにより、自
身の不具合解消や防衛機能の強化がはかられる。
人間が体の免疫力を高めてかつマスクやワクチンで防御することによって、イ
ンフルエンザへの感染を防ぐように、パソコンも更新プログラムとウィルス対策
ソフトを併用することによってこそ、効果的な防御力がつけられるのである。
Windows XPに新しいソフトウェアが対応しなくなるという点については、「う
ちの会社の業務アプリケーションは、Webベースでブラウザがあれば動作するの
で、アプリケーションがWindows XPに対応されなくなるということはない」と
言われるケースがあるかもしれない。たしかにWebベースのアプリケーションは
OS等のプラットホームに直接影響されることは少ない。しかし、Webアプリケー
ションが正しく動作することを保証するために、動作環境となるInternet
Explorerなどのブラウザソフトは、種類やバージョンが限定されていることが大
半である。そのため、アプリケーションが新型のInternet Explorer 9以降しかサ
ポートしないということになれば、Internet Explorer 8までしか使えない
Windows XPでは利用できないということなのである。
4.適切な対応に向けて
IT技術が進化を続けて、時代のニーズにあわせた新しい良いものが次々と世の
中に出てきている現状において、パソコンをはじめとするIT機器は、機械そのも
のの物理的な劣化より、その仕組みの陳腐化のほうが早いのが現状である。
仕組み的な陳腐化は、物理的な見た目からはほとんどわからないため、機器の
リプレイスや修繕について、ためらいを感じることがある。しかし、その見えな
い部分で、さまざまなリスクやトラブルの要因を抱えているということも現実で
あるので、適切な対応をしていくことが必要である。
------------------------------------------------------------------------
■執筆者プロフィール
池内 正晴 (Masaharu Ikeuchi)
学校法人聖パウロ学園 光泉中学・高等学校
ITコーディネータ
コメントをお書きください