平成23年12月2日に公布された東日本大震災からの復興のための施策を実施す
るために必要な財源の確保に関する特別措置法(平成23年法律第117号)におい
て復興特別法人税制度が創設され、平成24年4月1日から施行されることになり
ました。
3月決算法人は、平成25年3月期の決算申告から申告、納税が必要なりますので
この復興特別法人税制度の内容をご紹介いたします。
1.復興特別法人税制度の概要
この制度は、法人の各事業年度の所得の金額に対する法人税の額に10%の税
率を乗じて計算した復興特別法人税を、法人税と同じ時期に申告・納付するこ
ととされているものであり、利子など一定の所得に課された復興特別所得税の
額などがある場合には、所定の金額を控除した後の金額を納付することとされ
ています。また、復興特別法人税の額の計算上控除しきれない復興特別所得税
の額がある場合には、その還付を受けるための申告書を提出することができる
こととされています。
2.復興特別法人税制度の具体的内容
(1) 納税義務者、納税地
法人は、基準法人税額につき、復興特別法人税を納める義務があり、納税地
は、法人税の納税地と同じになります。
(注)基準法人税額とは通常の法人税額となりますが法人税申告書別表一(一)
を使用する法人の場合、
基準法人税額 = 別表一(一)「2」欄 - 別表一(一)「3」欄 + 別表一(一)「5」欄
となります。
(2) 課税事業年度及び税額の計算
復興特別法人税は、平成24年4月1日以後に最初に開始する事業年度から、原
則として3年間にわたって課税されます。3月末決算の企業であれば、平成25年
3月期の決算申告からとなり、平成27年3月期まで課税されることになります。
税額は課税標準法人税額(一定の場合を除き、各課税事業年度の基準法人税
額)に対して一律10%の税率をかけて計算します。赤字申告や欠損金の繰越控
除などによって法人税額が発生しなかった場合には、復興特別法人税額も発生
しません。
また、支払った復興特別法人税額を経費にすることはできません。
(3) 申告及び納付等
復興特別法人税の申告・納税は、法人税の申告・納税と同じ時期に行います。
(各課税事業年度終了の日の翌日から2月以内)ただし、法人税の申告書とは
別に、復興特別法人税の申告書の提出が必要です。中間申告は必要ありません。
なお、法人税の申告期限を延長している場合は、復興特別法人税も自動的に
延長されます。(所定の計算に基づく利子税を納付する必要があります。)
赤字申告の場合には、法人税額が0円となり、復興特別法人税額が発生しな
いため、復興特別法人税の申告書を提出する必要はありません。しかし、後日、
税務調査等によって黒字申告となり法人税額が発生した場合には、復興特別法
人税額も発生してしまうため、復興特別法人税について無申告加算税(15%ま
たは20%)が課されてしまいます。そのため、復興特別法人税額や、復興特別
所得税額の還付金が生じない場合でも、念のため申告書を期限内に提出してお
くのがよいでしょう。これによって、無申告加算税ではなく、過少申告加算税
(10%または15%)になるため、加算税を軽減することができます。
(4) 復興特別所得税額の控除
平成25年1月1日以後に受け取る預貯金の利子や配当金などには、源泉所得税
の他に復興特別所得税が課せられています。会社が受け取る預貯金の利子等に
かかった復興特別所得税額は、発生した復興特別法人税額から控除することが
できます。復興特別法人税額が発生しない場合でも、申告することによって、
預貯金の利子等にかかった復興特別所得税額の還付を受けることができます。
参考 源泉所得税と復興特別所得税の計算
金融機関より計算書が発行されない普通預金の利息にかかる源泉所得税等の
計算は下記によります。
・源泉所得税と復興特別所得税の計算
入金された利息÷0.79685×0.15315=所得税および復興特別所得税の合計額
(1円未満切捨)…(A)
(A)÷102.1×2.1=復興特別所得税の額(50銭以下切捨、50銭超を切上)
(A)-復興特別所得税の額=所得税額
・都道府県民税の利子割の計算
入金された利息÷0.79685×0.05=利子割(1円未満切捨)
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■執筆者プロフィール
竹内政明(たけうち まさあき)
竹内政明税理士事務所
代表 税理士・ITコーディネータ
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