2回続けて、「日本でいちばん大切にしたい会社」(坂本光司)を紹介しました。
今回で最終版とします。
日本の景気は良くなったのでしょうか。日経平均株価は12,468円、円は9
4.87円(いずれも原稿作成時)です。つい2・3ヶ月前と比較しますと、急
劇な株高、円安だといえる。
倒産件数を2012年版中小企業白書からみてみると、近年は減少傾向にあり、
2011年は、12,734件であった。開廃業率の逆転が1986-91年か
ら続いており、近年、廃業率が高止まりしている。その上、中小企業金融円滑化
法がこの3月31日で終了するが、この施策が終わった後、中小企業の倒産・廃
業が懸念される。
このような環境にあっても、利益をあげ事業を継続している事業所は多数ある。
帝国データバンクの調査によると、企業の平均年齢は40.5歳であった。しか
し、日本には100年以上続いている老舗が、3,000軒を数える。たとえば、
「金剛組」は創業578年、「西山温泉慶雲館」は創業705年、「源田紙業」
は創業771年、「田中伊雅仏具店」は創業889年、「通園」は創業1160
年、「伊藤鉄工」は創業1189年、「西川産業」は創業1566年である。ま
た、エノキアン協会(入会の条件:創立200年以上の歴史、創立者が明確で、
その同族が現在でも経営権をもっている)に加盟している企業が全世界で40社
のうち5社もある。(「月桂冠」、「法師(旅館業)」、「赤福」、「虎屋」、
「岡谷鋼機」)。
日本の中小企業は、世界に誇れる経営力を持っているといえる。以下に今回は3
社を紹介します。
日本でいちばん大切にしたい会社
(1)株式会社樹研工業
愛知県豊橋市。昭和40年(1965)創業。世界に11社、14工場を展開。
年商27億円。極小の精密プラスティック部品の製造業。
特定の企業系列に属さず、国内外の一流企業と直取引している。約30社。
超精密な金型、射出成型機も自製。
従業員90人。成型機は国内外で850台。
直径0.19ミリ、重量100万分の1グラムの歯車の開発。
眼内レンズが現在注力している。
オンリー・ワン「わが社が存在しなかったら社会が困る」というような技術開
発を行っている。
社員を管理するルール、規則がほとんどない。出勤簿、出張報告書、会議のた
めの資料づくりや手続もない。
「つまらない、後ろ向きな仕事はできるだけ省き、次の仕事に取り掛かる。こ
れが生産性を上げるきほんです。社員は仕事をしに出社してくるのです。そん
な社員にとって、出社したという証明である出勤簿やタイムレコーダーにどれ
だけの価値があるのか。」
当社の採用方法は、先着順です。子育てが終わった女性社員を積極的に雇用し、
出戻りもOKである。
入院した社員の給料、両親の病気や子供の病気などで長期欠勤した場合でも、
減給されることはない。
入社と同時に1000万円の保険に加入する。掛け金は全額会社負担、受取人
は全額、社員の家族。
「社員が育つために大事なことは、経営者がチャンスを与えることです。口だ
けではなく実際に投資をしてやることです。」
重要事項は全社員が参加する全体会議で決定する。
給料体系は、「年齢序列」。なぜなら、いい仕事ができるのは、40歳をすぎ
てから、技術が完成される60歳以降が一番生産性が高いから。
辞めたいときが定年。この不況かでもリストラはしない。
(2)未来工業株式会社
「日本でいちばん休みの多い会社」・・140日~143日
昭和40年(1965)創業。住設部材の製造、具体的には電気設備資材、給
排水設備やガス設備資材の製造・販売。
平成20年(2008)売上高は320億円、経常利益額は約40億円、経常
利益率約13%。20年間常に売上高経常利益率が5%以上。
従業員780人、全員正社員。
経営理念は、「常に考える 何故・ナゼ・なぜ」である。常に考えて、次から
次へ新商品を創ろうという、「脱下請け宣言」が社是である。
43年間で2万点を超える新商品を開発。特許や実用新案などの知的財産権、
工業所有権は4000件を超える。
販売は、商社を通さず、工事業者と最も近い問屋と直取引している。
「提案制度」、年間1万~1万5千件。1件あたり500円支払う。採用され
れば最高で3万円がでる。
休暇日数が143日(2008年)。就業時間年1500時間以下。
「残業禁止」、「残業は罰金」。社員の要望で始業時間を遅くしたり、就業時
間を早めても生産性は変わらなかった。
タイムレコーダーとユニフォームがない。タイムレコーダーがないのは、社員
を信用しているからである。ユニフォームは逆に手当を支給している。
「さんづけ運動」、平社員も課長も部長も役員も「さん」づけで呼び合う。こ
れは、会社として役はあるものの、個人としては平等だということである。
当社は、コピー機が1台しかないが、それは、ふだん部署が違うため会えない
社員が、コピーのため並ぶことで、前後の人とコミュニケーションがとれるか
らである。
生産性を高めるのは管理ではなく、社員のモチベーションを高める環境にある。
「ホウレンソウ禁止、自分でかんがえろ」
一流の企業は本社が小さい。当社も本社要員の割合が2.3%である。
全員、正社員でパートがいないのは、同じ仕事をしているのは差をつけたくな
いからである。
定年は70歳。71歳の誕生日の前の前の日まで。60歳から70歳まで給料
は横ばいで下がらない。給料は年齢序列。
育児休暇は3年あり、何歳でも、何回でも、とれる。
年に1回、数千万円以上をかけて「未来コミュニティーシアター」という音楽
祭、演劇祭を開催し、地域住民や取引先を招待する。
5年に1回、4泊5日で海外旅行に行く。(一億円から一億2千万円)
社長は、「企業文化を創ることと、社員のやる気を引き出すことが私の最大、
最高に使命です」という。
(3)ネッツトヨタ南国株式会社
昭和55年(1980)設立。高知県内に3店舗。
売上高は右肩上がり。
来店客は本店で平日100人以上、週末300~500人、年間10万人超。
ショールームには1台も車がない。外の広場や展示場に並べている。
ホテルのラウンジのようなショールーム。
エントランスに入ると「○○様、こんにちは」と名前で呼びかける。
飛び込み営業、訪問営業はいっさいやっていない。
顧客満足度はオールトヨタ販売店のなかで平成11年以降トップを維持してい
る。
会長は、「大切なことは、社員が幸せに働ける会社をつくることです。そうす
ればお客様にとっても、自然に満足度の高い会社になるのです。」という。
また、「売上を伸ばすためのサービスは、本当のサービスではありません。会
社とは、集まっているすべての社員が人間性を尊重され、やりがい、働きがい
を感じる場所であるべきです。」と言う。
当社の経営理念は、「全社員を人生の勝利者にする」であり、同じ会社のなか
で勝者と敗者を決して作らない、程度の差こそあれ、みんなが幸福を実感でき
る会社をつくることであるとする。
サービスの大半は、社員の提案が発端である。その他、各種イベント活動を手
づくりで企画運営している。
採用活動に予算と面談時間を多くかけている。
「社員の社員による社員のための十ヵ条」
a)常に既成を破ろう、b)組織図を作らない、c)安楽椅子はない、d)重
役を投票制で決めよう、e)全員の経営参画、f)多数決はしない、g)売上
を伸ばせとはいわない、h)駐車場には線を引かない、i)共に育つ「教育制
度」、j)やる気のない人は幸せにできない
新入社員教育の特徴。
成長4原則・・a)考える、b)発言する、c)行動する、d)反省する
4泊5日の「バリアフリーお遍路の旅」・・視覚等の障害をもたれている方
とペアーを組み、四国八十八箇所霊場を案内して回る旅
やりがい、働きがいのある会社というのは、自分の成長が実感できる仕事、会
社・社員がお客様から感謝される仕事、会社・社員間の信頼関係が強い会社、
尊敬する上司や先輩がいる会社です。
(参考)
<http://www.itc-kyoto.jp/2012/04/09/日本でいちばん大切にしたい会社-米田-良夫/>
<http://www.itc-kyoto.jp/2012/10/22/日本でいちばん大切にしたい会社2-米田-良夫/>
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■執筆者プロフィール
クリッジナリティー 代表 米田 良夫
中小企業診断士、ITコーディネータ、ビジネスコーチ
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