所得税の確定申告期限の3月15日も間近に迫って参りました。
申告書をこれから提出される方は、今、申告書作成にご多忙を極めておられるこ
とでしょう。そこで、今回は所得税の確定申告に関して、定着してきた電子申告
の普及状況と公的年金等を受給されている方の確定申告不要制度についての話題
とさせていただきました。
【電子申告の普及】
国税庁レポートによりますと平成23年度の電子申告(以下「e-Tax」という。)
の利用率は53%とのことです。したがって、すでにご利用の方も多いことでしょ
う。
所得税の確定申告書をe-Taxで提出することが可能になって10年ほどたちま
した。私は平成16年の所得税の確定申告の時に初めてe-Taxで申告書を提出い
たしました。最初のころは、申告に関する添付資料は電子申告したあとに別で税
務署に郵送したり、e-Taxでの送信時間に制約があり土日は使えなかったりのよ
うに記憶しています。また、事務所から送信することができる環境や電子証明書
の取得、カードリーダーの設置など、いろいろ戸惑いながらやっていました。正
直いって、当時はペーパーで提出した方が楽だったと思います。
しかし、その後は、毎年のように改善されてきました。
そして、今では、次のようになり、e-Taxの方が便利になっています。混雑し
た税務署や金融機関の窓口に赴くことなく、申告や税金の納付がe-Taxやインタ
ーネットバンキングなどで対処できます。
1)国税庁のホームページ上に「確定申告書等作成コーナー」が設けられており、
そこで作成した申告書等のデータをe-Taxで送信できます。
2)e-Taxで申告書を提出した場合、医療費の領収書や源泉徴収票などの添付書
類の提出を省略することができます。ただし、法定申告期限から5年間、税務
署から書類の提出又は提示を求められることがありますので、保管はきっちり
しておく必要があります。
3)e-Taxの送信は、24時間利用できます。ただし、24時間利用は3月15日(金)
までで、メンテナンス時間を除きます。また、この期間は、e-Tax送信の操作
方法などの問い合わせに関して日曜日もヘルプデスクの受付をしています。
4)所得税の確定申告を本人の電子署名及び電子証明書を付して、申告期限の
3月15日までにe-Taxで行うと、所得税額から最高3,000円の控除を受けること
ができます。この制度は今回が最終回です。
【公的年金等を受給されている方の確定申告不要制度】
年金については、給与のような年末調整の制度がないため、公的年金等を受給
されている方については、確定申告する必要がありましたが、年金受給者の皆さ
んの申告手続の負担を減らすため、平成23年分の所得税から「確定申告不要制度」
が創設されました。これにより、公的年金等による収入が400万円以下で一定の
要件を満たす場合には、確定申告を行う必要がなくなりました。
一定の要件を満たす方とは、下記の1)、2)のいずれにも該当する方です。
1)公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下の方
2)公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下の方
上記2)の公的年金等に係る雑所得以外の所得とは、たとえば、次の1,2な
どの所得です。
1.生命保険や共済などの契約に基づいて支給される個人年金
2.給与所得、生命保険の満期返戻金
また、この申告不要制度の対象の方でも医療費控除などで所得税の還付を受け
ることができます。所得税の還付を受けるためには確定申告が必要です。もちろ
ん、この場合もe-Taxで対処できます。
なお、所得税の確定申告が不要な場合であっても、市区町村に住民税の申告が
必要な場合があります。ご不明の場合は、お住まいの市区町村にお問い合わせく
ださい。
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■執筆者プロフィール
中川 秀夫(なかがわ ひでお)
税理士、ITコーディネーター、CFP(1級FP技能士)、
経営革新等支援機関認定事務所代表
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