平成24年2月1日に、中小企業の会計ルールである「中小企業の会計に関する基本要領(中小会計要領)」が公表されました。「中小会計要領」は大企業と違い、国際会計基準等と連動して変更の必要がない国内の中小企業のための会計ルールとなっています。この中小会計要領の内容をご紹介いたします。
1. 中小会計要領策定の目的
(1) 中小会計要領は、中小企業の多様な実態に配慮し、その成長に資するため、中小企業が会社法上の計算書類
等を作成する際に、参照するための会計処理や注記等を示すものです。
(2) 中小会計要領は、計算書類等の開示先や経理体制等の観点から、「一定の水準を保ったもの」とされている
「中小企業の会計に関する指針」(以下「中小指針」という。)と比べて簡便な会計処理をすることが適当と
考えられる中小企業を対象に、その実態に即した会計処理のあり方を取りまとめるべきとの意見を踏まえ、
以下の考えに立って作成されたものです。
・中小企業の経営者が活用しようと思えるよう、理解しやすく、自社の経営状況の把握に役立つ会計
・中小企業の利害関係者(金融機関、取引先、株主等)への情報提供に資する会計
・中小企業の実務における会計慣行を十分考慮し、会計と税制の調和を図った上で、会社計算規則に準拠した
会計
・計算書類等の作成負担は最小限に留め、中小企業に過重な負担を課さない会計
(3) 人口減少、少子高齢化等による国内需要の減少、アジア等の新興国との競争激化、日本の大企業の海外移転
などといった厳しい内外環境を勝ち抜く自立的な中小企業の確立を目指し中小企業が持つ潜在力・底力を最大
限に引き出し、戦略的経営力を強化する必要があります。強化すべき戦略的経営力と は下記となります。
・財務経営力(経営状況を把握し、経営計画を立案する能力)
・資金の確保・調達力
・成長のための知恵・知識・ノウハウ
・国際競争力に耐えうる技術力・人材
2. 中小会計要領の概要
(1) 中小会計要領の利用が想定される会社
・上場会社
・金融商品取引法の規制の適用対象会社
・会社法上の会計監査人設置会社
上記以外の会社
(2) 中小会計要領は安定的に継続利用可能なものとする観点から、国際会計基準 の影響を受けないものと
されています。
(3) 会社計算規則に準拠する範囲内で、法人税法で認められていると同様の処理方法を明記する等中小企業の
実務に配慮したもとなっています。
3. 中小会計要領等の普及・活用促進
(1) 中小企業庁では、中小企業庁関係の法律による計画認定(経営革新計画、異分野連携新事業分野開拓計画等)において、「中小会計要領等」に従った計算書類の提出を推奨するとともに、補助金採択時には中小会計要領等に従った計算書類の提出について肯定的に評価をすることとしています。
・中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律に基づく「中小企業の新たな事業活動の促進に関する基本方針」
(平成24 年8 月30 日施行)等の中で、中小企業は中小会計要領等に拠った信頼性のある計算書類等の作成及び
活用に努め、財務経営力の強化を図ることが重要である旨の記載を追加し、法律に基づく認定にあたり、中小
会計要領準拠の決算書提出を慫慂することとしています。
・新事業活動促進支援事業等の補助金等の募集にあたって、平成24 年度から公募要領において、「中小会計要
領」等に拠った計算書類の作成及び活用を慫慂しています。提出があった場合の肯定的評価の方法については、
平成25年度の公募要領策定にあわせて措置される予定です。
(2) 政府系金融機関
・日本政策金融公庫(中小企業事業部)は「中小企業会計活用強化資金」融資制度を創設し、中小会計要領に
従った計算書類を作成し、資金計画等で会計の活用を目指す中小企業に対して、優遇金利(基準利率▲0.4%)
で貸付を行うこととしました。
・日本政策金融公庫(国民生活事業部)は中小会計要領を適用している小規模企業に対して利率を▲0.2%優遇し
ます。
また、マル経融資(経営改善貸付)において、中小法人に対して中小会計要領に従った計算書類の提出を推奨し
ていきます。
4. 終わりに
中小企業金融円滑化法の期限が平成25年3月31日までの1年間に限り再延長されていますが、その期限も迫ってきました。
これからの中小企業は、中小会計要領を適用しつつ信頼性の高い決算書を作成し、そこから経営者が自社の経営状況を把握し、経営計画を作成するとともに金融機関等の利害関係者への財務状況や資金繰りの状況について自ら説明できるよう財務経営力を向上させることが必要になります。
国も中小企業金融円滑化法の期限到来を見据えて、中小企業経営力強化支援法を制定し、本年11月5日に経営革新等支援機関の認定を行いました。こういった制度を利用し中小企業が戦略的経営力を強化し、安定的に成長できる基盤を構築していかなけ ればなりません。
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■執筆者プロフィール
竹内政明(たけうち まさあき)
竹内政明税理士事務所
代表 税理士・ITコーディネータ
中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律に基づく
「経営革新等支援機関」認定事務所
TKC全国会会員:電子申告、書面添付推進事務所
TKC継続MASシステムによる経営改善計画策定から業績管理のお手伝いを
させていただきます。
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