☆不透明な将来への不安感の払拭は?
日本経済は、ゆるやかに回復していると言われていますが、企業、家計共に景
気回復の実感は乏しいと言わざるを得ません。景気の本格的回復がままならぬ中、
多くの国民ニとっては、経済生活の将来への不安はぬぐいきれていません。もっ
とも、経済について先が見通せないのは日本に限ったことでもありません。超大
国のアメリカでは、懸案の格差社会の是正の進捗は見られません。EU圏も、ギ
リシャ、スペインの財政危機についての解決は容易でなく、ユーロ危機の早期の
終息は望むべくもありません。
かつてのベルリンの壁の崩壊・東西冷戦の時代以降は、短期間の間はアメリカ
一極支配の様相もありましたが、その後は中国をはじめとする新興国の台頭で世
界経済は、多極化の方向に向かっており、各地域、国の利害調整、協調の重要性
が一段と高まってきています。そんな中、高齢化社会の先端を走る日本の将来の
有り様について、世界は日本を高齢化社会の将来のモデルとして注目して見てお
ります。
☆円高是正とデフレからのすみやかな脱却を
一方、日本の政治情勢は混沌としていますが、そのことが経済の安定化にマイ
ナスに作用しています。先に消費税と社会保障の一体改革の法案が成立しました
が、増税先行で社会保障の将来像は描けていません。将来ビジョンを明らかにす
ることは、容易なことでないにしても、将来目標を提示することはもとより、そ
の目標に至るプロセス(工程表)を示して国民に説明し、理解を求める必要があ
ります。
かつて、ある著名な経済学者は、社会構造を上部構造、下部構造に分類し、ま
ずもって重要なことは下部構造を支え、形成する「経済」にあると指摘しました
が、まさに人類の歩みは、経済の豊かさの追求にありました。
幸福の尺度は経済力にのみあるとは思いませんが、そこそこの豊かさがあってこ
そ、感性豊かな人間性、人としての他者を思いやるやさしさ、心のゆとりも育ま
れるものと存じます。
日本の場合に顕著に当てはまりますが、経済力を高める基本は、人材、技術力
(ノウハウ)にあります。このことは企業経営においてもしかりであり、事業の
発展の基盤強化に豊かな人材と優れた技術力は欠かせません。
ところで、現在の経済成長の足かせとなっているのはデフレの持続であり、こ
のデフレ経済からの脱却に英知の結集と果敢な行動が今こそ問われています。
日銀は、物価目標指標を1%としましたが、この目標数値をさらに高めに求め、
また成長力を抑えている円高是正に本腰を入れることでそれがなれば、市場は活
性化し、日経平均株価も1万円超えにつながるでしょう。
☆知的資産経営の推進を
そのような中、日本経済の太宗、底辺を支える中小企業の役割、期待は高まっ
てきています。中小企業は規模は小さくともキラリと光る強みをもてるはずです。
会社の強み「知的資産」をしっかりと把握し、活用するこで業績の向上や安定、
会社の価値向上に結び付けることが、最近衆目を集めている「知的資産経営」で
す。知的資産経営を3つに分類すると
(1)人的資産(経営者や社員に依存している資産)
(2)組織(構造)資産(企業風土、技術など)
(3)関係資産(ブランド、顧客満足度、取引先との信用、信頼関係)
に大別されます。
またこの3つはバラバラに認識するのではなく、相互にかかわりをもって連鎖的
に発展することを可能とします。
知的資産経営に取り組む手順としては、多くの社員参加による知的資産の洗い
出しによる社員のモーチベーションの向上、課題の整理になり、この知的資産を
書類としてドキュメント化してユーサーへの営業活動、社員、取引先への周知、
金融機関、支援機関への資金調達活動、認知向上につなげ、さらに将来に向け、
利益の出る仕組みづくり、品質向上、経営革新、販路開拓などを通じて企業の
「ブランド化」に貢献できます。
この資産経営を推進することでの特徴的なことは、
(1)内部のコミュニケーションが活発になること(組織資産←→人的資産)
(2)ノウハウが社内で共有される(人的資産→組織資産)
(3)人材が多能化」される(人材資産→組織資産)
(4)協力的な企業や組織と連携できる(関係資産)
などのたくましい会社へ導く効能が期待できます。
☆新たな視点で地域金融機関との関係緊密化を
巷間言われているリレーションシップバンキング(略称;リレバン)は、地域
金融機関が取引先との緊密な関係を維持発展させるべく顧客の情報を蓄積し、そ
の情報をもとに円滑な資金の供給や融資などのサービス提供するビジネスモデル
です。
すなわち金融サービス以外の取引先への新事業支援、経営相談などの強化、早期
の事業再生の取り組みなどを通じて地域経済の活性化をはかる自らの知的資産の
活用を図る生き残り戦略と位置づけています。
平たく言えば地域金融機関の知的資産経営の一環として従来の定量的な金融サー
ビスに加えて広義のコンサルティングサービス機能の発揮を通して知的資産経営
を推進するビジネスモデルです。先にみたとおりの人材資産、組織資産、関係資
産の連鎖を通して取引先を{取引}レベルにとどめず「お付き合い」としての関
係強化並びに地域の活性化に尽力する戦略であり、その観点から中小企業も地域
金融機関とのよりよき関係作りにつとめ、自企業の経営資産経営の推進・強化に
つなげていきたいものです。
☆会社の強み、個性の発揮への期待の高まり
新規顧客の開拓は中小企業」とって優先順位の高い経営課題です。社会・経済
環境が刻々と変化するいまこそ、慣習やしがらみに囚われれることなく、新しい
顧客との出会いを求めたいものです。
インターネット時代は挑戦する強い意志があれば可能性はたくさんあります。
経営に関するあるアンケート調査によりますと、ウエイトの高いのが新規顧客の
開拓、営業・販促、人材育成となっています。このことは、営業面への関心の高
さを伝えています。ビジネスの構造の変化が速く、下請系列に入っていた企業が
独自商品を開発・販売したり、従来の流通の枠組みを越えて販促に取り組む必要
性も出てきました。
インターネットの普及により企業の情報発信力も格段に高まっています。
その典例がネットショップです。取り組めばすぐにというわけにはいきませんが
検索エンジン対応やページ構成の工夫、アクセス者の分析などを根気よく繰り返
す中で新しい顧客が増え、その顧客との出会いが経営手法や社内の活性化、人材
教育の拡充ひいては会社組織。システムの仕組みを変化させ会社の総合力を増大
させることにもなります。買ってくれる顧客を探す姿勢が新たなビジネスチャン
スを創造もしていくのです。
さかのぼれば、ITは効率化の道具といわれ、処理速度とその正確性、合理化
の手段としての役割を果たしてきました。続いてのインターネットの普及は企業
対企業、企業対個人のやり取りを可能にし、企業規模を問わず情報を発信できる
手段は、販促や営業に変化をもたらしました。
ITのトレンドは、クラウド、スマートフォン、さらにはFacebookなどのソー
シャルメディアが加わりましたが、今日では、道具を買った者勝ちでなく「うま
く使った者が勝つ」とまで言われるようになりました。このような時代には、企
業は強み・個性がより問われることとなっています。そのためにも自社に最適の
ITツールを用いてさらなる独自性発揮を図りたいものです。
もとよりインターネットにはそれなりのルールや技術をある程度まで自ら学ぶ
姿勢も必要ですが、専門家や関係行政・団体に相談したり、支援を受け、さらに
は関係情報豊富な地域金融機関との連携強化に積極的に取り組んでいく、その意
欲と行動が自社の新たな展開、発展につながるものと存じます。
------------------------------------------------------------------------
■執筆者プロフィール
玉垣 勲
IT経営・代表、労務管理事務所・所長
(中小企業診断士、通訳案内士(英語)、ファイナンシャルプランナー)
コメントをお書きください