減価償却制度の改正 / 竹内 政明

 平成23年度税制改正において、平成24年4月1日以後に取得した減価償却資産の
定率法償却率が引き下げになりました。以下、改正の内容をご紹介いたします。 

1.改正の内容
  
  改正前の平成19年4月1日以後に取得した減価償却資産の定率法償却率は、定
 額法の償却率を2.5倍した償却率(250%定率法)でした。改正により、平成24
 年4月1日以後に取得した減価償却資産の定率法償却率は、定額法の償却率を2
 倍した償却率(200%定率法)に引き下げられました。
  定率法による償却限度額は設備投資の初期に比較的多額の減価償却費を計上
 できるため、平成19年改正前の旧定率法に比し250%定率法は節税効果が高くな
 ったといわれていました。今回の改正で200%定率法となり、250%定率法より
 耐用年数の前半で償却限度額は小さくなり、後半では大きくなることとなりま
 す。
  耐用年数の期間内に減価償却が完了することには変わりは無いため、減価償
 却資産の取得後の期間は償却限度額は小さくなり、初期の節税効果が小さくな
 りますが、耐用年数の経過にしたがって償却限度額が大きくなり取り戻される
 こととなります。

  今回の改正により旧定率法の償却率を含めて3種類の償却率が存在すること
 になります。
  次に掲げる減価償却資産の区分に応じ、それぞれ次によることとなります。
 
   平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産 
   ・・・・・旧定率法
  平成19年4月1日から平成24年3月31日までの間に取得をされた減価償却資産
   ・・・・・250%定率法の償却率
   平成24年4月1日以後に取得をされる減価償却資産
   ・・・・・200%定率法の償却率
  
2.特例措置

(1)改正事業年度の平成24年4月1日以後の期間内に取得した減価償却資産の
  250%定率法の適用
   
  事業年度が平成24年4月1日をまたぐ法人や個人事業者についてはその事業年
 度末まで(個人事業者は平成24年度中)に取得した減価償却資産については、
 250%定率法での減価償却が認められます。
  例えば、定率法を選定している10月決算の法人であれば平成24年4月1日から
 事業年度終了の日(平成24年10月31日)までに取得したものであっても、250%
  定率法での償却が可能となります。個人事業者の場合は平成24年4月1日から平
  成24年12月31日までの取得したものについて250%定率法での償却が可能とな
 ります。
  
  この特例の適用にあたっての届け出は不要となっています。
  
(2)平成19年4月1日から平成24年3月31日までの間に取得をされた減価償却資
  産の200%定率法の適用
   
  平成24年4月1日以後に終了する事業年度において、改正前の250%定率法で
 償却費の計算を行っている減価償却資産について、償却率の統一を図り、事務
 負担を軽減するため200%定率法により償却限度額を計算することができます。
  具体的には、平成24年4月1日をまたぐ事業年度またはその翌事業年度(法人
 の選択した事業年度)において、平成19年4月1日から平成24年3月31日までの
 間に取得をされた減価償却資産を平成24年4月1日以後に取得されたものとみな
 して200%定率法により償却限度額を計算することができるというものです。
 この場合、250%定率法を適用しているすべての資産を対象として適用する必
 要があります。
  この特例の適用を受ける減価償却資産につては、200%定率法に変更した場
 合においても耐用年数の調整が行われ、当初の耐用年数で償却を終了すること
 ができます。
  また、変更事業年度において、調整前償却額が償却保証額に満たない減価償
 却資産については、均等償却により償却を行うこととなるため、この特例措置
 の適用を受けることはできません。

  この特例の適用を受けるためには、平成24年4月1日以後最初に終了する事業
 年度の申告期限までに一定の事項を記載した届出書を納税地の税務署長に提出
 する必要があります。
  

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■執筆者プロフィール

竹内政明(たけうち まさあき)
竹内政明税理士事務所
代表 税理士・ITコーディネータ
(TKC全国会会員:電子申告、書面添付推進事務所)
TKC継続MASシステムによる経営改善計画策定から業績管理のお手伝いを
させていただきます。