LCCの就航、勝敗はいかに / 小林 由香

 去る6月20日、再建中の日本航空が異例のスピードで再上場申請を行いました。スカイマークエアラインが、5月に掲げたサービスコンセプトの一部について、6月に消費生活センターから抗議され、賛否両論、物議を醸しています。
 7月1日には、伊丹空港と関西国際空港が経営統合し、稼げる空港を目指します。今年3月に格安航空会社(LCC・ローコストキャリア)として、ピーチが就航し、7月3日には、ジェットスターが就航しました。続いて8月にはエアアジアが就航する予定です。以上のように、昨今、話題に事欠かない航空業界です。

 格安航空会社(LCC・ローコストキャリア)とは、既存航空会社(FSA・フルサービスエアライン)の約半分以下の運賃で搭乗できる航空会社のことです。飛行時間が最長4時間までの近距離・中距離路線を結ぶ路線がメインでヨーロッパや東南アジアでは既に普及しています。
 LCCは「空飛ぶ高速バス」とも言われるように、例えば、大阪・福岡間の料金(片道)が約4000円~で、大手航空の普通運賃約2万2000円、新幹線の1万4000円と比べると超低価格です。

 LCCとFSAを、ちょっと比較してみましょう。


・航空機材
LCC:単一機材(エアバスA320型機など)とすることで、整備費などのコストを削減している。4時間程度の中距離まで対応できる。
FSA:小型機から大型機まで複数の機材を導入し、近距離から、長距離まで幅広く対応できる。
・空港ターミナル
LCC:ターミナルは、一般的には簡素な作りである。
FSA:ターミナルのは、ラウンジがあり、レストランやショップが充実している。
・座席のクラスと間隔
LCC:全てエコノミークラスまたは自由席、座席の間隔が狭い(例外もある)。
FSA:ファーストやビジネスクラスもあり、エコノミークラスでもLCCほど狭くない。
・客室乗務員のユニホーム
LCC:カジュアルなイメージ、一部は私服もある。
FSA:有名デザイナーのデザイン、機内サービスはエプロンで行う。
・機内食
LCC:有料の場合がほとんどである。
FSA:無料、上級クラスでは、ワインや高級食材のサービスもある。

 

 さて、皆さんは、どちらを選ばれるでしょうか?
ビジネスではFSAを、プライベートな旅行ではLCCを利用する、またはその逆の方もおられるでしょう。どんなシーンでもサービスの良いFSAを選ぶ人、価格重視でLCCを優先する人などなど、様々な利用のパターンがあると思います。
 ピーチの就航をうけて「是非利用してみたい。」「いや、やっぱり私は既存エアラインだな」など色々な声が聴かれます。価格は、既存航空会社の普通運賃の3分の1以下と言われています。「空飛ぶ高速バスを目指したい」(ピーチ・アビエーションの社長)として就航したLCC、この運賃は、既存航空会社のみならず、新幹線、高速バス、夜間フェリーよりも低価格です。旅客各社ともに脅威なのではないでしょうか。
 各社とも生き残りをかけての競争が始まりつつあります。利用者にとっては、選択肢が増え、利便性が向上するものと思われます。

 ピーチ・アビエーションの出資会社でもある全日空の伊藤信一郎社長は、「ANAブランドでカバーしきれない部分を、マルチブランドで需要を掘り起こし、市場の拡大・深耕を図る」と言っています。
 これからの日本の航空業界の競争は、今まで以上に厳しいと思いますが、これに生き残ってこそ、国際競争力が向上することでしょう。外国からの利用客の増大が、これからの生き残りのカギと言えるでしょう。

 さて、8月には、既存LCCを含めて、7社が出揃う日本のLCC。成功の秘訣は、リピータの確保ではないかと思います。利用者に、「次回も利用したい」と言ってもらうためには、ローコストの条件の中でいかに乗務員のイメージ向上を図るかではないでしょうか? 
 限られたコストの中で、リピータを増やすには・・・。過日のスカイマークのサービスコンセプトは、物議を醸しましたが、一理はあります。過度な要求をする利用者がいることも確かだからです。しかし、残念ながら、イメージを低下させてしまったのは事実です。LCCや航空業界に限らず、この騒動から学ぶことは多いと思います。

 利用者の多くは、低価格であっても安全と時間厳守は当り前のこと、その上で陸の旅とは異なる空の旅というある意味特殊な空間※での、居心地の良さを望んでいると思います。(※陸上交通に比較し、機体が地面についていなかったり、天候の影響を受けやすかったりする空間)
 居心地の良さの要求レベルは人それぞれ違いますが、そのマーケティングの適格性がこれからのLCCや航空業界の行く方を左右することでしょう。運賃の高い上級クラスへの要求レベルと、エコノミーや自由席クラスへの要求レベルは異なりますが、それぞれのクラスで、利用者の充足感を満たしたときにはじめて、リピータが得られるのだと思います。

 これからの、航空業界の動向に注目していきたいと思います。


■執筆者プロフィール

小林由香(Kobayashi Yuka)

 小林税理士事務所 所長

 税理士、ITコーディネータ、ファイナンシャルプランナー

 「お客様の発展のため、最大限の努力をいたします。」が信条。