本リレー連載も今回で最終回となります。そこで前回までの内容を踏まえ、企
業がスマートフォンを導入する前に決めるべきことを記載します。
1.利用内容と効果
スマートフォンの値段は、その機能が高いことに伴って高価です。したがって、
単純に携帯電話機と交換する訳にはいきません。誰が(役員、管理職、営業部門
など)、どこで(社外、会社構内、社屋内)、どんなアプリケーションを使うの
か(メール、ワークフロー、ファイルサーバなど)、業務の手順(=業務プロセ
ス)をどのように変更するかを決めておく必要があります。さらに、その効果を
見積もって(使用頻度はどの程度か、1回あたりどのような効果があるか)おき
ます。
利用内容が決まったら、まず試験的に数台導入し、ある程度の期間使ってみて
その効果を実際に確認してみるのが良いでしょう。本格的に導入する際には、利
用内容を社内規定(ルール)やマニュアルとして文書化します。
2.仕様
スマートフォンには大きく分けて、iPhoneとAndroid携帯があります。ここでは
技術面の詳細に触れませんが、両者はかなり異なります。最も大きな相違点は、
iPhoneをApple社のみが製造していることに対して、Android携帯にはSONYや富士
通など多くの製造ベンダがいることです。したがって、Android携帯は、製造ベン
ダ毎に画面サイズやボタンの役割などハードウェアの仕様が多少異なります。ま
た、iPhoneにはApple社の検査に合格したアプリケーションしかインストールでき
ないため、不正ソフトがスマートフォンに入りこむリスクが小さい点も重要です。
利用しようと考えているアプリケーションがiPhoneとAndroid携帯のどちらか一
方にのみ対応していることがありますので確認しましょう。現在、国内では携帯
キャリアとスマートフォンの機種が紐づけられています。今のところNTTドコモは
iPhoneを取り扱っていませんので注意が必要です。
3.リスク対策
スマートフォンのリスクには紛失・盗難時の情報漏えいや不正利用と、不正ソ
フトのインストールによる情報漏えいや(遠隔)不正操作があります。事前にそ
の対策をしっかりと決めておく必要があります。紛失・盗難への対策として、操
作しない際の自動画面ロックは初歩的です。他には、データの遠隔消去、クラウ
ドコンピューティングの利用、データのダウンロードを許可しないセキュアブラ
ウザの利用といった対策があります。不正ソフトへの対策には、アプリケーショ
ンのインストールの許可制、ウイルス対策ソフトの導入などがあります。対策が
実施されていることを管理するMDM(モバイルデバイス管理)ツールも有効です。
4.システム監査
スマートフォンが流行っているからと飛びついて導入し、放置してはダメです。
スマートフォンが計画通りの内容と頻度で使用されているか、期待していた効果
が得られているかを1年後にはシステム監査で確認することを決めておきます。
計画が達成できなかったときは改善策を施し、(ほぼ)達成できたときは利用拡
大策を検討します。スマートフォンを取り巻く技術はさらに今後発展する可能性
を有していますので、必ず実施しましょう。
ここまで読んで気が付いたと思いますが、上記1~4はスマートフォンに限ら
ず、全ての情報システムやITについて言えることです。情報システムの効果を得
るには、導入前に決めておくことを強くお勧めします。
(参考)
・リレー連載【スマートフォン】その1
スマートフォンを業務で利用する際のリスクについて考えてみる
http://www.itc-kyoto.jp/itc/index0487.html
・リレー連載【スマートフォン】その2
スマートフォンアプリを開発する前に考えること
http://www.itc-kyoto.jp/itc/index0491.html
・リレー連載【スマートフォン】その3
これだけは知っておきたいスマートフォン活用方法
http://www.itc-kyoto.jp/itc/index0493.html
■執筆者プロフィール
岩本 元(いわもと はじめ)
ITコーディネーター、技術士(情報工学部門、総合技術監理部門)
&情報処理技術者(ITストラテジスト、システムアーキテクト、
プロジェクトマネージャ、システム監査他)
企業におけるBPR・IT教育・情報セキュリティ対策・ネットワーク構築のご支援
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