今だからこそハイタッチ成熟度が大切/恩村 政雄

人類がこの世に現れた時から営々と経営活動は続けられ、その何万年、何千年
という永い年月の間に経験則で「経営の法則」が語り継がれ、今日の経営者の企
業評価あるいはリスクマネジメントの指標ともなっている。
 では経営とは一体なんだろうか? 広辞林(三省堂)をめくってみると、経営と
は「なわばりして土地を測り家を建てる意」であり、
 1)基礎を定め、くふうをこらして物事を営むこと(国家を経営する)
 2)事業を計画し、営むこと。またその事業(会社を経営する)
 3)作業上の組織(経営協議会)
と大きく3通りの意味を記載、もちろんここでは会社経営のことである。

「経営の法則」はその時代、その時の経営環境で浮かんでは消え、消えては浮か
びながら、今日では真髄をあらわす法則として収斂され応用されている。
企業の評価や診断をする時、誰もが頭に浮かぶ法則例として、
・ABC分析での、2-8の原則(グループ構成)
・マネジメントでの、グッドマンの法則(リピート率)
・占有率での、74%、42%、26%、11%、7%のハードル
・競合での、ランチェスターの法則(必勝割合、戦力係数)
・労働分配率での、業種ごとの適正値
などなど、生産性、財務性、資産性に亘り不文律の公式や数字があり、現在でも
正鵠を得、経営力の尺度や経営診断ツールとして多いに活用されている。

 もちろん、会社経営はこれらの数字が良かったら全てがオーライではなく、そ
の数字を産みだし、活用できるハイテク、ハイタッチの成熟度が要求されている。
 ハイテクはいうまでもなく情報技術力(IT)で、それも単なる業務の効率化(人
手がパソコンに置き換わる)から、経営環境の変化に対応できるような判断材料
の提供(個々のデータを情報群に集約・分析・経営判断資料化)にシフトしてい
る。
 これは簡単に見えるが至難の業である。業務を行なう人のレベルや使う目的で
同じデータ(素材)でも加工の仕方が異なり、結果は丸くも四角にもなる。

 企業は人と、日本経営の基本は古来よりハイタッチをベースにした経営を志向
していたが、1990年代ごろから日本の景気に閉塞感が濃くなり、グローバル経営
の合言葉とともに、ハイテク万能の声がもてはやされてきた。
 しかし、人なくして企業経営は語れないといわれている。
 このハイテクという近代の経営道具を十二分に使いこなし、ローテクでもある
経営の法則をフレキシブルに応用できるのは人であるということの原点に戻り、
人のみが持つ問題意識、原価意識、やる気力、プラス思考等を多いに引き出すハ
イタッチの成熟度向上が喫緊事となっている。

 ITコーディネータは経営と情報の橋渡し役と公知されているだけに、ハイテク
の成熟度向上を推進しながら、どのようにしてハイタッチの成熟度向上をおこな
えばよいかを常に意識し、行動することが求められている。



■執筆者プロフィール

恩村政雄 E-メール: obcc.onmura@nifty.com
OBCC主宰(onmura・ビジネス・クリエーティブ・コンサルタンツ)
NPO法人ニュービジネス支援センター 理事長
TEL/FAX: 075-981-3830 URL: http://www.npo-fc.jp