中小企業金融円滑化法について/間宮 達二

 リーマン・ショックから厳しい経済環境が続いていますが、景気変動の影響を
受けやすい中小企業に於いては、資金繰りに影響を受けてしまう企業も少なくあ
りません。
そこで、政府は中小企業金融円滑化法を中小企業支援施策の一つとしましたが、
その期限は24年3月までと期日が迫っています。リーマン・ショックを契機とし
た世界経済の悪化に加え、東日本大震災の影響を受けた企業が、同法を利用して
借入金の返済計画の見直しを実行していますが、まだまだ、企業の財務体質が十
分に回復していないなかで、その適用期限が延長されるのか注目されています。
そこで、金融円滑化法についてまとめると共に今後について考えて見ました。

◇金融円滑化法とは
 金融円滑化法とは、金融機関に、中小企業者又は住宅ローンの借り手から申込
みがあった場合にできる限り、貸付条件の変更等の適切な措置をとるよう求めた
努力義務を定めている法律です。

◇金融機関の対応
 金融機関は、中小企業の借り手の申し込みがあった場合に対し、他の金融機関、
政府関係金融機関、信用保証協会、企業再生支援機構、事業再生ADR、中小企業
再生支援協議会等との連携を図りつつ、できる限り、貸付条件の変更等の適切な
措置等をとるよう努めることになっています。ですが、必ずしも貸付条件変更に
応じる必要はなく、その判断は各金融機関で行われ、申し込みのあった中小企業
者の事業についての改善又は再生の可能性などを考慮し決定されます。

◇金融機関の努力義務を担保する制度
 「貸付条件の変更等」とは、元本の返済猶予以外にも、返済期間の延長など中
小企業の債務弁済負担の軽減を行うすべての措置が含まれますが、金融機関に努
力義務を担保する制度として以下の措置がとられています。
(1)金融機関自らの取組み
 金融機関に、貸付条件の変更等の措置を適正かつ円滑に行うことができるよう、
必要な体制の整備を義務付け、貸付条件の変更等の実施状況及び本法律に基づき
整備した体制等を開示するよう義務付けています。
(2)行政上の対応
 金融機関に、貸付条件の変更等の実施状況を当局に報告するよう義務付け、金
融庁は、これを取りまとめ公表します。
(3)信用保証制度などの支援措置
 政府は、中小企業者に対する信用保証制度の充実等、必要な措置を講じるもの
します。

◇今後について
 帝国データバンクの「中小企業金融円滑化法」利用後倒産の動向調査によりま
すと、中小企業金融円滑化法を利用して返済猶予を受けながら、後に倒産した企
業数は2011年1~8月の累計で101件判明し、2010年1年間の23件から大幅に
増加しているとのことです。
 このことからも、24年3月に期限が迫る金融円滑化法については期限延長の可
能性が高いとも言われています。いずれにせよ、返済猶予措置をとることも時に
は必要ですが、そうならないよう、厳しい時代のなかであっても、今できること
を着実に一歩一歩進めていくことが重要だと感じています。


■執筆者プロフィール

氏 名 間宮 達二(まみや たつじ)
所 属 ひかりアドバイザーグループ(ひかり経営戦略株式会社)
資 格 ITコーディネータ
お問い合わせ mamiya@hikari-advisor.com
HPアドレス  http://www.hikari-advisor.com
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